この記事では介護保険における保険料の減免とは何なのかということについて解説しています。
現在日本では、日本国内に住所を有している方は40歳になると自動的に介護保険に加入することになり、介護保険料を納付する義務が生まれます。
ただ、この介護保険料がどうしても払えない状況になってしまったらあなたならどうしますか?
実は介護保険制度には介護保険料をどうしても払えないという方に対しての減免制度が整備されています。
ここでは介護保険における介護保険料の減免について解説していきますので、興味のある方は是非ご覧ください。
介護保険の減免制度とは
介護保険は平成12年4月にスタートした、みんなで共に支え合うという「受益者負担の原則」にたった相互扶助制度であり、利用者が自分の能力に合わせて決められた介護保険料を負担することによって成り立っています。
介護保険の減免制度とは、この決められた介護保険料を災害に遭ったり、生活が困窮してしまったり、長期間の入院によって納付が困難になってしまったりといった理由によって支払うことができない方の介護保険料を減免するというものです。
ただ、介護保険制度は市町村及び特別区が運営主体となっており、お住まいの地域によって内容や要件が違ってくることがありますので注意してください。
また、減免制度を利用するには申請が必要になってきます。
介護保険の保険料減免の3原則
先程申しあげたように、介護保険制度は市区町村及び特別区が運営主体となって独自に運営していますが、厚生労働省は介護保険制度の安定性の確保を目的として保険料減免の3原則というものを出しています。
以下がそれにあたります。
①個別申請により判定
介護保険制度では、それぞれの所得に応じて介護保険料を決めるなどの所得の低い方への配慮をすでに行っており、このような方法でさらに一定の基準値以下の収入の方のみに一律に減免措置を講じることは不公平になるため、個別申請によって減免を判断することが定められています。
②減額のみ(全額免除は行わない)
介護保険制度は40歳以上の国民が一緒になって支えていくものであり、一部の者が保険料を全額免除されるとなっては、この助け合いの精神に反することになるため、介護保険料の全額免除は行わないと定められています。
③保険料減免に対する一般財源の繰り入れを行わない
介護保険料の費用は高齢者が20%、市町村及び特別区が12.5%、國が25%というようにそれぞれ決められていますが、高齢者にもこの助け合いに加わってもらうために支払ってもらっているものであり、これを減免して定められた負担割合を超えて他へ転嫁することは助け合いの精神に反することになり行ってはいけないと定められています。
介護保険料における減免の種類や減免対象者となるための条件
介護保険の減免には介護保険の支払いが免除(正確には不要)となる方と介護保険の徴収が猶予されたり徴収額を減額されたりする方の2種類がいます。
[介護保険料の支払いが免除になる方]
以下の条件に当てはまる方は介護保険料の支払いが不要になります。
①日本国内に住所を有していない海外居住者
海外では日本の介護保険制度は利用できませんので、介護保険料を支払う必要はなくなります。ただ、家族が日本に在住していると介護保険料の支払い義務が生じますので注意してください。
②介護保険の適用除外施設の入所者
以下の施設に入所している方は介護保険の被保険者ではなくなりますので、介護保険料を支払う必要がなくなります。
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項に規定する指定障害者支援施設(生活介護及び施設入所支援に限る)
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第11項に規定する障害者支援施設(生活介護に限る)
・児童福祉法第42条第2号に規定する医療型障害児入所施設
・児童福祉法第6条の2の2第3項の厚生労働大臣が指定する医療機関
・独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法に規定する福祉施設
・国立及び国立以外のハンセン病療養所
・生活保護法第38条第1項第1号に規定する救護施設
・労働者災害補償保険法第29条第1項第2号に規定する労働者災害特別介護施設
・障害者支援施設(知的障害者福祉法第16条第1項第2号に係るものに限る)
・指定障害者支援施設(生活介護及び施設入所支援の支給決定を受けて入所している知的障害者及び精神障害者に係るものに限る)
・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項の指定障害福祉サービス事業者であって、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第2条の3に規定する施設(療養介護に限る)
③在留資格が1年未満の短期滞在の外国人
観光やスポーツなどによって1年未満の在留資格を有している方は介護保険は不要でありますので、介護保険料の支払いは必要ありません。
[介護保険料が減免(支払い猶予や支払額の軽減)される方]
①第一号被保険者の場合
第一号被保険者の方は、以下に該当する場合に介護保険料の支払いの猶予や軽減といった減免措置を受けることができる場合があります。
- 震災、火災、風水害などによって住宅や家財などが著しく損害を被った方
- 世帯の生計維持者が失業、障害、長期入院などによって収入が減少した方
- 収入や資産が一定額を下回り生活が苦しくなった方
第一号被保険者が介護保険の減免制度を利用するためには収入や資産が大きく影響しており、世帯全員が市町村民税非課税である、資産が各市町村及び特別区が定めた金額を上回っていない、介護保険料を滞納していない、市町村民税課税者に扶養されていない、生活保護を受給していないなどの条件があります。
これらの条件は市町村及び特別区によって違ってきますので、詳しく知りたい方はお住まいの市町村及び特別区のホームページなどをご覧ください。
②第二号被保険者の場合
第二号被保険者の方は、定められている条件を満たすとその条件に応じた割合で介護保険料が軽減されます。ただ、この条件は市町村によって異なりますので注意してください。
以下に目安となる条件を記載しておきますので参考にしてください
- 7割軽減となる条件:世帯の所得合計が33万円以下の世帯
- 5割軽減となる条件:世帯の所得合計が33万円+(被保険者数及び特定同一世帯所属者数の合計数×27万円)以下の世帯
- 2割軽減となる条件:世帯の所得合計が33万円+(被保険者数及び特定同一世帯所属者数の合計数×49万円)以下の世帯
介護保険料を減免するための申請方法
減免申請書・収入状況申告書に記入した上で、世帯全員の印鑑や世帯の収入を証明する書類(源泉徴収票・確定申告書の控え・給与明細書・預貯金の通帳など)、健康保険証などを持参して市町村及び特別区の担当窓口にて提出して申請を行います。
申請受付後、保険者は金融機関への預金残高照会などを行い、免除するべきかどうかを判断します。この必要書類や申請方法は市区町村によって変わってくる場合もありますので注意してください。
まとめ
ここまで介護保険における介護保険料の減免について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように介護保険には条件はありますが、介護保険料の支払いが困難になってしまった場合の減免措置が整備されています。
このような制度があると知っていると、もしも生活に困ってしまい介護保険を払えないという状況に陥っても、焦らずに生活を立て直すことができます。
ただ、介護保険制度は各市町村及び特別区が運営主体となって独自に運営しているものですので、減免などの条件も市町村及び特別区ごとに変わってきますので、そこだけは注意するようにしてください。