この記事では介護保険の自己負担額を軽減することができる裏技について解説しています。
介護保険制度では様々なサービスを利用することができ、かかった費用は全額自己負担ではなく所得に応じて決められた割合を支払うことになっています。
ただ、それでも利用するサービスの種類によっては多額の費用がかかってくるので、経済的な負担も多くなってきます。
そのような場合、介護保険の自己負担額をどうにかして下げたいと思われると思います。
この記事では介護保険の自己負担額を軽減することができる裏技について解説していきますので、自己負担額を軽減したいと考えている方は是非この記事を参考にしてみてください。
介護保険の自己負担額は所得によって変化する
介護保険制度は社会全体で介護が必要になった高齢者やその家族を支えていくということを目的として平成12年4月にスタートしました。
この社会保険制度では、利用者の所得に応じて自己負担割合が決められており、サービスにかかった費用の1割~3割を利用者が負担するということになっています。
それぞれの負担割合になる所得の要件は以下のようになっています。
[3割負担となる方]
- 合計所得金額が220万円以上
- 年金収入+その他の合計所得金額=単身世帯で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上である場合(単身世帯で年金収入のみの場合は344万円以上に相当)
[2割負担になる方]
- 合計所得金額が160万円以上
- 年金収入+その他の合計所得金額=単身世帯で280万円以上、夫婦世帯で346万円以上である場合(単身世帯で年金収入のみの場合は280万円以上に相当)
[1割負担になる方]
3割負担になる要件と2割負担になる要件に該当しない方
※「合計所得金額」とは給与所得や事業収入などの収入から給与所得控除や必要経費を控除した後の金額のことで、「その他合計所得金額」とは合計所得金額から年金の雑所得を除いた金額のことです。
高額介護サービス費の段階による自己負担額
介護保険制度には高額介護サービス費という制度があります。
これは、介護保険のサービスを利用して支払った自己負担額の合計金額が定められた一定の金額を超えた場合に、申請を行うことによってその超過分が支給されるという制度です。
高額介護サービス費では自己負担の上限金額が定められていますが、利用者の所得などによって1~5段階の区分に分けられており、その区分によって上限金額が変わってきます。
区分分けの条件やそれぞれの上限金額は以下のようになっています。
第1段階
生活保護受給者、老齢年金を受給しており世帯全員が住民税非課税
自己負担上限金額は15,000円
第2段階
世帯全員が住民税非課税、合計所得金額と公的年金収入の合計が80万円以下
自己負担上限金額は15,000円(個人)、24,600円(世帯)
第3段階
世帯全員が住民税非課税、合計所得金額と公的年金収入の合計が80万円以上
自己負担上限金額は24,600円(世帯)
第4段階
世帯の誰かが住民税を課税されている方
自己負担上限金額は44,400円(世帯)
第5段階
現役並みの所得のある方が世帯内にいる方
自己負担上限金額は44,400円(世帯)
以上のように区分分けされており、例えば1ヶ月の間に介護保険のサービスの自己負担額が25,000円であった場合、第2段階の方は申請することによって10,000円が支給されますが、第4段階の方は還付は受けられないということになります。
自己負担額を減らすためには所得が重要
これまでの項目で解説してきたように高額介護サービス費でポイントになってくるのが世帯での所得で自己負担上限金額が変わってくるということです。
介護サービスを利用している本人の所得が住民税非課税に該当する場合は第2段階となりますが、他の家族と同居しており、その家族に住民税が課税されるだけの収入がある場合は一気に第4段階となってしまいます。
サービスを利用する方の所得は同じでも同居している方の所得によって介護にかかってくる費用が変わってしまうのです。
このような場合、家族と同居しながら自己負担額を軽減する方法などはないのかと考えている方もいるかと思いますが、実は介護保険の自己負担額を減額する裏技が存在しているのです。以下の項目にて解説していきます。
世帯分離をして所得を減らす
介護保険サービスの利用者とその家族が同居しておりその家族に住民税が課税されるだけの収入がある場合、サービスを利用する頻度が増えると経済的な負担が増えてしまいます。
この問題解決する裏技ともいえる方法が、「世帯分離」です。
世帯分離とは住民票に登録されている世帯を2つ以上の世帯に分けることをいいます。
つまり、同じ住所に複数の世帯主が登録されている状態になります。
この世帯分離は市区町村の担当窓口で申請をすることによって行うことができます。
世帯分離を簡単に表すと以下のようになります。
介護保険のサービスを利用する親を持つ子の場合
[分離前]
①父(世帯主)、母、自分、自分の配偶者、自分の子
[分離後]
①父(世帯主)、母
②自分(世帯主)、自分の配偶者、自分の子
世帯分離は以上のようになりますが、世帯分離のポイントとして介護にかかる費用を軽減するためには、介護保険のサービスを利用する方と所得の多い方を分離するということです。
これを行うことで、高額介護サービス費の区分が下がることになります。
世帯分離をする方法
世帯分離にはお住まいの市区町村の担当窓口において申請を行うことが必要になってきます。
申請を行うことができるのは世帯分離を行う世帯の世帯主かその世帯員です。
また、世帯主か世帯員から委任状を預かった代理人でも可能となっています。申請には以下の書類が必要になってきます。
[住民異動届]
市区町村の窓口にありますので、必要事項を記入して提出します。
[身分証明書]
運転免許証、マイナンバーカード。パスポート、障害者手帳などが必要です。顔写真がないものの場合は念のために2種類の身分証明書を持参するようにしましょう。
[印鑑]
届出をする方の印鑑が必要です。シャチハタは控えて認印を持参するようにしましょう。
[国民健康被保険者証]
国民健康保険に加入している場合は世帯全員分の被保険者証が必要になります。分離される方の世帯は世帯主や保険証番号が変更されるので、被保険者証を返還した後に新規に発行されます。
[委任状]
世帯主や世帯員以外の方が代理で世帯分離の申請を行う場合は委任状が必要になりますので、忘れず持参するようにしましょう。
これらの必要書類を担当窓口に提出することによって世帯分離の手続きは完了します。
親と子の世帯を分離する場合は時間もあまりかからずに認められますが、夫婦で世帯分離を行う場合には手続きがややこしくなる他、お住まいの市区町村によっては認められない場合もありますので注意してください。
まとめ
ここまで介護保険の自己負担額を軽減することができる裏技について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように世帯分離を行うことによって介護保険をサービスにかかる自己負担額を軽減することができます。
ただ、介護保険における世帯分離はメリットだけではありません。
高額医療・高額介護合算療養費制度という世帯単位で医療保険と介護保険の自己負担額の年間合計が限度額を超えていた場合に超過分が返還されるというものがあるのですが、世帯が別の場合は合算ができなくなり、場合によっては損をすることも出てきます。
このようなデメリットも存在していますので、世帯分離を行う際は自分の場合はどうなのかということを十分検討した上で、申請を行うようにしましょう。