この記事では介護保険で訪問看護の自己負担額やその計算例などについて解説しています。
自宅で療養生活や介護生活を送っている方を支えるサービスの1つである訪問看護ですが、これから訪問看護のサービスを利用したいと考えている方の中には自己負担額がどれくらいになるのかということについて気になっている方もいらっしゃると思います。
この記事では介護保険で訪問看護の自己負担額やその計算例などについて解説していきますので、興味のある方は是非ご覧ください。
介護保険で訪問看護を受けるときの条件とは?
訪問看護とは、自宅で介護保険のサービスを受けることができるという在宅介護サービスの1つで、高齢者がこれまで住み慣れてきた自宅でできる限り自立した生活を送れるようにするためのサポート行うという目的があります。
ただ、この訪問看護ですが、誰でも希望すれば利用できるといったサービスではなく、利用するためにはいくつかの条件があるのです。ここではその条件について解説していきます。
保険料の支払いをきちんとしている
まず、第1に介護保険のサービスは介護保険料をきちんと支払っていないと利用することができません。
日本では40歳になると介護保険に自動的に加入することになり、介護保険を支払わなければならなくなります。
つまり、39歳以下の方は介護保険を支払っていないので、介護保険のサービス自体を利用することができないということです。
また、40歳以上の介護保険の支払い義務がある方にも「自動的に介護保険料を納付している方」と「自発的に納付しなければならない方」がおり、自発的に脳死なければならない方は介護保険料を滞納してしまう可能性があり、滞納し続けていると介護保険給付が差し止めになったりする可能性がありますので注意してください。
第一号被保険者と第二号被保険者
介護保険の被保険者は年齢によって第一号被保険者と第二号被保険者に分けられていますが、第一号被保険者と第二号被保険者でも利用するための条件が変わってきます。
第一号被保険者の場合は要介護認定を受けて「要介護1~5」または「要支援1・2」であると認められた場合に利用することができます。
一方、第二号被保険者の場合は以下に記載する16種類の特定疾病であると認められた場合にのみ利用することが可能になります。
[16種の特定疾病]
- 1.がん(がん末期)
- 2.関節リウマチ
- 3.筋萎縮性側索硬化症
- 4.後縦靭帯骨化症
- 5.骨折を伴う骨粗鬆症
- 6.初老期における認知症
- 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 8.脊髄小脳変性症
- 9.脊柱管狭窄症
- 10.早老症
- 11.多系統萎縮症
- 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 13.脳血管疾患
- 14.閉塞性動脈硬化症
- 15.慢性閉塞性肺疾患
- 16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
要介護認定を受けていなければならない
先程の項目でも申しあげたように介護保険で訪問看護を利用する場合は要介護認定を受けていなければなりません。
要介護認定を受けるためには、まず必要書類を用意して市区町村の担当窓口もしくは地域包括支援センターで申請を行います。
申請後1から2週間の間に介護認定調査が行われ、認定調査と主治医の意見書に基づいて介護認定審査会が要介護度を判定します。
要介護度が決定したら、ケアマネージャーなどに依頼して介護サービス計画書(ケアプラン)を作成することによって介護保険のサービスを利用することが可能になります。
訪問看護の自己負担とは?
ここまでで介護保険で訪問看護のサービスを利用するための条件について解説してきました。
では、実際に訪問看護を利用したときにかかる自己負担額の目安とはどれくらいなのでしょうか?以下で解説していきます。(自己負担割合が1割の場合の金額)
看護師による訪問の場合
看護師による訪問の場合は以下のような料金になります。
[サービスの提供時間が20分未満]
訪問看護ステーションの場合は1回311円で、病院又は診療所の場合は1回で263円となります。
[サービスの提供時間が30分未満]
訪問看護ステーションの場合は1回467円で、病院又は診療所の場合は1回で396円となります。
[サービスの提供時間が30分~1時間未満]
訪問看護ステーションの場合は1回816円で、病院又は診療所の場合は1回で569円となります。
[サービスの提供時間が1時間~1時間30分未満]
訪問看護ステーションの場合は1回1,118円で、病院又は診療所の場合は1回で836円となります。
※20分未満の算定が可能なのは20分以上の訪問看護を週1回以上利用した場合のみです。
理学療法士・作業療法士などの訪問の場合
理学療法士・作業療法士又は言語聴覚士による訪問の場合は20分を1回として1回で296円(1日に2回を超えて利用する場合は1回につき266円)となります。
加算料金とは?
訪問看護には加算料金というものがあり、様々な条件で料金が加算されます。加算料金には以下のようなものがあります。
①初回加算:新しく訪問看護計画を作成した方に対して訪問看護のサービスを提供した場合に、初回の訪問介護に加算されるもの/自己負担額300円
②退院時共同指導加算:入院中もしくは入所中の方に対して主治医等との連携によって在宅生活での必要な指導を行い、それを文書にして提供した場合に加算されるもの/自己負担額600円
③緊急時訪問加算:希望や24時間電話などによって利用者や家族の相談に対応して緊急時訪問を行った場合、その月の1回目の訪問時に別途加算されるもの/自己負担額540円
④特別管理加算Ⅰ:在宅悪性腫瘍患者指導管理などを受けている場合や留置カテーテルなどを使用している場合に加算されるもの/自己負担額500円
⑤特別管理加算Ⅱ:在宅酸素療法指導管理などを受けている場合や真皮を超える褥瘡の状態である場合などに加算されるもの/自己負担額250円
⑥サービス提供体制加算:職員の研修を実施している他、勤務年数が3年以上の者が30%以上配置されている事業所の場合に加算されるもの/自己負担額6円
⑦長時間訪問加算:特別管理加算の対象者に対して1時間30分を超える訪問看護の提供を行った場合に加算されるもの/自己負担額300円
⑧複数名訪問加算:利用者の身体的理由などによって看護師1人では訪問看護の提供が困難であると認められる場合に、利用者又はその家族の同意を得た上で同時に2人以上の看護師が訪問看護を行った場合に加算されるもの/自己負担額 30分未満254円、30分以上402円
⑨ターミナルケア加算:死亡日・死亡日前日14日以内に2日以上のターミナルケアを行った場合に加算されるもの/自己負担額2,000円
⑩早朝・夜間加算:早朝(6時~8時)及び夜間(18時~22時)の間に訪問看護を行った場合に加算されるもの/単位数25%増
⑪深夜加算:深夜(22時~6時)の間に訪問看護を行った場合に加算されるもの/単位数50%増
訪問看護の自己負担額計算例
では最後にモデルケースをあげて訪問看護の自己負担額の計算例を紹介しますが、まず自己負担額の計算方法について紹介します。
自己負担額を出すにはまず介護報酬を求めるのですが、その計算式は「サービスごとの単位数×1単位ごとの単価(標準で10円)=介護報酬」となっており、ここに自分の自己負担割合を掛けることによって自己負担額を導き出すことができます。
1単位ごとの単価はお住まいの地域によって変わってきますが、ここでは標準の10円で計算します。また、サービスごとの単位数は「訪問看護の自己負担とは?」の項目で紹介したものを使用します。
[モデルケース]
利用者:80歳男性
利用しているサービス:30分~1時間未満の看護師による訪問看護(週1回/月4回)、1日60分の理学療法士による訪問看護(週1回)/月4回)
この場合、
看護師に訪問看護が「816×10×4=32,640」
理学療法士による訪問が「266×3×10×4=31,920」
となり、初回加算がかかるとすると、1ヶ月でかかる費用の合計は「32,640+31,920+3,000=67,560」となり、自己負担が1割の方の自己負担額は67,560の1割なので「6,756円」となります。
訪問看護の自己負担額を理解して計画的なご利用を!
ここまで介護保険で訪問看護の自己負担額やその計算例などについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
訪問看護は訪問介護とは違って医療行為を受けることが可能になっています。
できる限りこれまで通り自宅で生活したいという高齢者の願いを叶えることができ、病院から退院したときなども訪問看護を利用することによって幅広いケアを受けることができるので安心した生活を送ることができます。
ただ、解説したように介護保険で訪問看護のサービスを利用するためには要介護認定を受ける必要がありますので、忘れずに申請するようにしてください。
要介護認定を受けていないとサービスにかかった費用を全額自己負担することになりますので注意してください。