この記事では介護保険料の減免の条件や減免の種類・申請方法などについて解説しています。
介護保険制度ではそれぞれの能力などに応じて介護保険料を支払うことになっていますが、普段は普通に払っている介護保険料がどうしても払えない状況になってしまったら皆さんはどうしますか?
実は介護保険制度にはどうしても介護保険料を支払うことができないという方に対しての減免措置が設けられています。
ここでは介護保険料の減免の条件や減免の種類・申請方法などについて解説していきますので、介護保険料を支払うことができないかもしれないといった方は是非この記事を参考にしてみてください。
介護保険料の概要について
現在、日本では40歳になると自動的に第二号被保険者となって介護保険に加入することになり、その時点で介護保険料の支払い義務が生じます。
同じ公的保険制度で、職に就いたときから払い続けている健康保険や厚生年金とは違って40歳になると加入している医療保険に上乗せされるかたちで64歳になるまで介護保険料の徴収が行われます。
65歳以上になると第一号被保険者となり、年金の年額が18万円以上の方は年金から天引き、年額18万円未満の方は納付書などを利用して支払うことになります。
なぜ介護保険料を支払わなければならないのかと感じている方もいるかもしれませんが、介護保険料が介護保険制度を支えている大きな財源であるからです。
介護保険制度は被保険者が支払う介護保険料と税金によって運営されています。このため健康保険料や年金などと同じように対象となる国民全員が支払わなければならないものとなっています。
介護保険料が減免される場合がある
先程の項目で申しあげたように介護保険料は対象となる国民全員に支払い義務があります。
ただ、収入が減少したり、災害に遭ったり、生計を支えている方がなくなったりして定められた介護保険料をどうしても払えないという状況になった場合については、申請によって介護保険料の支払いが減免されます。
その① 減免の種類について
介護保険の減免には「免除」と「減免」の2種類があります。通常であれば40歳以上の方には介護保険料を支払う義務が生じますが、介護保険の被保険者に該当しない方には介護保険料の支払い義務が生じないので、介護保険料を支払う必要がなくなります。
これを介護保険料の免除といいます。
また、収入や資産に関する一定の条件を満たすことで介護保険料の支払い猶予や支払額の軽減などの措置を受けることができる場合があります。
これを介護保険料の減免といいます。
その② 減免の条件について
介護保険が免除及び減免となる条件は以下のようになっています。
介護保険料が免除となる条件
以下の条件に該当する方は介護保険料が免除(支払いが不要)になります。
①日本国内に住所を有さない海外居住者
海外では日本の介護保険制度は利用できないので、介護保険料を支払う必要はなくなります。ただ、家族が日本に居住している場合は介護保険料を支払わなければいけませんので注意してください。
②介護保険適用除外施設の入所者
以下に記載する介護保険適用除外施設に入所している方は介護保険の被保険者ではなくなりますので、介護保険料を支払う必要はなくなります。
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項に規定する指定障害者支援施設(生活介護及び施設入所支援に限る)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第5条第11項に規定する障害者支援施設(生活介護に限る)
- 児童福祉法第42条第2号に規定する医療型障害児入所施設
- 児童福祉法第6条の2の2第3項の厚生労働大臣が指定する医療機関
- 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法に規定する福祉施設
- 国立及び国立以外のハンセン病療養所
- 生活保護法第38条第1項第1号に規定する救護施設
- 労働者災害補償保険法第29条第1項第2号に規定する労働者災害特別介護施設
- 障害者支援施設(知的障害者福祉法第16条第1項第2号に係るものに限る)
- 指定障害者支援施設(生活介護及び施設入所支援の支給決定を受けて入所している知的障害者及び精神障害者に係るものに限る)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第29条第1項の指定障害福祉サービス事業者であって、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第2条の3に規定する施設(療養介護に限る)
③短期滞在の外国人といった在留資格1年未満の方
1年未満の在留資格で日本に滞在している方には介護保険は不要であるため介護保険料を支払う必要はありません。
介護保険料が減免となる条件
介護保険料が減免(支払額の軽減や支払い猶予)を受けることができる可能性があるのは以下のような方です。
[65歳以上の第一号被保険者の場合]
- 震災や火災・水害などを始めとした災害によって住宅・家財等が著しい損害を受けた場合
- 世帯の生計を維持している者が死亡・長期入院・失業などによって収入が著しく減少した場合
- 収入や資産などが一定額を下回り生活に苦しんでいる場合(市町村によって基準は異なります)
[40歳~64歳までの第二号被保険者の場合]
第二号被保険者の方は、一定の条件を満たすとその条件に応じた割合で介護保険料が軽減されます。
この条件はお住まいの市町村によって違ってきますので、お住まいの市区町村の担当窓口にて必ず確認をするようにしてください。以下のような場合に軽減されます。
- 世帯の所得合計が33万円以下となる世帯
- 世帯の所得合計が33万円+(被保険者数及び特定同一世帯所属者数の合計数×27万円)以下となる世帯
- 世帯の所得合計が33万円+(被保険者数及び特定同一世帯所属者数の合計数×49万円)以下となる世帯
その③ 減免額について
減免額については第一号被保険者と第二号被保険者で少し変わってきます。
第一号被保険者の場合
第一号被保険者の場合、介護保険料の減免額は市町村によって異なります。
ここでは和歌山市の減免を参考として記載します。
第一号被保険者の介護保険料の減免には介護保険料率というものが関係してきますが、和歌山市では介護保険料率は所得に応じて第1段階~第11段階までに分類されています。
第1段階:生活保護受給者、老齢年金受給者、前年度の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の方
第2段階:前年度の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以上120万円未満の方
第3段階:前年度の合計所得金額+課税年金収入額が120万円以上の方
第4段階:世帯に住民税課税者がおり前年度の合計所得金額+課税年金収入額が80万円以下の方
第5段階:世帯に住民税課税者がおり前年度の合計所得金額+課税年金収入額が80万円を超える方
第6段階:前年度の合計所得金額が120万円未満の方
第7段階:前年度の合計所得金額が120万円以上200万円未満の方
第8段階:前年度の合計所得金額が200万円以上300万円未満の方
第9段階:前年度の合計所得金額が300万円以上400万円未満の方
第10段階:前年度の合計所得金額が400万円以上800万円未満の方
第11段階:前年度の合計所得金額が800万円以上の方
[震災や火災・水害などを始めとした災害によって住宅・家財等が著しい損害を受けた場合]
・被害が全壊・全焼・全流出に相当する場合
災害が発生した翌月から12ヶ月間の介護保険料の全額が減免されます
・被害が半壊・半焼・床上浸水に相当する場合
災害が発生した翌月から12ヶ月間の介護保険料の半額が減免されます
[世帯の生計を維持している者が死亡・長期入院・失業などによって収入が著しく減少した場合]
介護保険料率の所得段階が1段階~3段階の方はこの減免の対象外となっています。
・第4段階の場合
第2段階を適用した場合との差額が減免されます
・第5段階の場合
第3段階を適用した場合との差額が減免されます
・第6段階~第11段階の場合
第5段階を適用した場合との差額が減免されます(ただ、第一号被保険者以外の世帯全員が住民税非課税の場合は第3段階を適用した場合との差額となります)
[収入や資産などが一定額を下回り生活に苦しんでいる場合]
所得段階が第2段階まとは第3段階の場合、以下の4つの条件にすべて該当する場合は第1段階を適用した場合との差額が減免されます。
①世帯人数が2人以上で世帯での年間見込み収入が2人世帯で120万円(1人増えるごとに+40万円)以下であること
②住民税課税者の扶養を受けていないこと
③住民税課税者と生計を一にしていないこと
④活用できる資産等を所有していないこと
第二号被保険者の場合
国民健康保険に加入している第二号被保険者の減免による減免額は以下のようになっています。
7割軽減:世帯の所得合計が33万円以下となる世帯
5割軽減:世帯の所得合計が33万円+(被保険者数及び特定同一世帯所属者数の合計数×27万円)以下となる世帯
2割軽減:世帯の所得合計が33万円+(被保険者数及び特定同一世帯所属者数の合計数×49万円)以下となる世帯
減免の申請について
介護保険料の減免を受けるには申請が必須となっています。
その① 申請の窓口について
介護保険料の減免を受けるには申請を行わなければなりませんが、申請を行う窓口については、介護保険課窓口や介護保険料担当窓口といった介護保険を担当している窓口で申請を行います。
その② 申請に必要なものについて
申請に必要になってくるものですが、以下のようなものが必要になってきます。
- 世帯全員の収入が分かるもの(年金支払い通知書、給与明細書、年金証書、源泉徴収票など)
- 世帯全員の印鑑
- 世帯全員の資産が分かるもの(預貯金通帳、有価証券の確認書類など)
- 健康保険証(医療保険)
※申請に必要になってくる書類は書く市町村ごとに異なる可能性がありますので注意してください。
まとめ
ここまで介護保険料の減免の条件や減免の種類・申請方法などについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、介護保険には介護保険料の支払いが苦しくなってしまった方への救済措置がどこの市町村においても設けられています。
ただ、介護保険は市町村が運営主体となっているため、市町村ごとに免除・減免の条件が違ってきます。
しかし、申請することによって生活が苦しくなっている方などは経済的な負担を軽減することが可能になっていますので、そのまま悩み続けるのではなく、一度市町村の担当窓口などで相談してみるようにしましょう。