この記事では年齢が65歳未満でも介護保険を受けることが可能になる特定疾病について解説しています。
介護保険制度では、65歳以上の第一号被保険者の方は要介護認定を受けることで介護保険サービスを利用することが可能になりますが、40歳~64歳までの第二号被保険者の方が介護保険サービスを利用するためには16種の特定疾病であると認められる必要があります。
この記事では年齢が65歳未満でも介護保険を受けることが可能になる特定疾病について解説していきますので、65歳未満の方で介護保険サービスを受けたいと考えている方などは是非参考にしてみてください。
介護保険とは一体どんな制度
そもそも介護保険とはどのような制度なのでしょうか?
介護保険制度とは、介護を必要としている方が適切な介護サービスを受けることができるように社会全体で支えていくことを目的としている制度です。
現在日本は、少子高齢化や核家族化などによって家族だけで介護を必要としている方を支えるということが難しくなってきています。
こうした状況を背景として、介護を必要としている方の自立支援や介護を行っている家族などの負担を軽減し、双方が安心して暮らしていける社会を目指して平成12年4月に施行されました。
介護保険制度は40歳になると国民全員が自動的に加入することになるもので、加入した時点から介護保険料の支払い義務が生じます。
また、年齢によって区分分けされており、40歳~64歳までの方は「第二号被保険者」、65歳以上の方は「第一号被保険者」となります。
39歳以下の方は介護保険には加入することができず被保険者とはならないため、たとえ介護が必要な状態になったとしても介護保険のサービスを利用することはできません。
65歳以上が介護サービスを受けられる制度
介護保険制度では、被保険者である国民は65歳以上となると第一号被保険者となり、介護保険サービスを利用することが可能になります。
ただ、介護保険サービスを利用には要介護認定の申請を行って、「要介護1~5」または「要支援1・2」のいずれかの要介護度に認定される必要があります。
要介護認定において「非該当」と認定された場合は介護保険サービスを利用することができませんので注意してください。
介護保険で利用できるサービス
要介護認定を受けることで利用することができるサービスは大きく分けて「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに分けることが可能になっています。
[居宅サービス]
居宅サービスとは、訪問看護員や介護福祉士が利用者の自宅を訪問して生活介助を行う訪問介護や利用者自身が施設に通ってサービスを受ける通所介護といった、要介護者や要支援者が現在住んでいる自宅に住み続けながら提供を受けることができる介護サービスのことで、以下のようなサービスがそれにあたります。
- 訪問看護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 特定施設入居者生活介護
- 福祉用具貸与
- 特定福祉用具販売
- 住宅改修
[施設サービス]
施設サービスとは、介護保険法によって定められている介護保険施設に入所して受ける介護サービスのことです。施設サービスに該当する介護保険施設は以下の3つとなっています。
- 介護老人保健施設
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護療養型医療施設
[地域密着型サービス]
地域密着型サービスとは、高齢者が住み慣れている地域で生活を続けていけるようにと提供されている介護サービスで平成17年に新設されました。
地域密着型サービスでは訪問・通所・短期入所といったサービスや認知症の方向けのサービス、介護保険施設によるサービスなどが提供されており、以下のサービスがそれにあたります。
- 小規模多機能型居宅介護
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
- 認知症対応型通所介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護
特定疾病だと65歳未満でも介護保険を受けられる
介護保険は社会全体で高齢者の介護を支えていこうという制度です。
このため65歳である第一号被保険者の方は原因を問わずに要介護の認定をされると介護保険サービスを利用することが可能になっていますが、40歳~64歳までの第二号被保険者の方はこの限りではありません。
ただ、65歳意未満の方でも介護保険のサービスを利用することが可能になる方法は存在しています。
65歳未満でも介護保険を受けられる条件
先程も申しあげたように65歳以上の第一号被保険者の方はどのような原因であろうと介護が必要になれば介護保険のサービスを利用することが可能になっています。
ただ、40歳~64歳までの第二号被保険者の方が介護保険サービスを利用するためには条件があり、16種の特定疾病によって介護が必要になり、その要介護状態が6ヶ月以上にわたって続くことが予想される場合にのみ要介護認定を受けることができ、介護保険サービスを利用することが可能になります。
このため、16種の特定疾病以外の病気や交通事故等によって介護が必要な状態になってしまった場合でも、介護保険のサービスを利用することはできませんので、介護保険サービス以外の医療保険サービスなどの利用を考える必要があります。
介護保険の利用対象の特定疾病
先程の項目で第二号被保険者の方が介護保険サービスを利用するためには16種の特定疾病によって介護が必要な状態になったことが認められなければならないと申しあげましたが、その16種の特定疾病とは以下の病気のことを指します。
1.がん(がん末期)
「組織診断か細胞診によって悪性新生物であると証明されたもの」又は「組織診断か細胞診によって悪性新生物であると証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間を空けて同一検査を受けて進行性の性質を示すもの」という判断基準のいずれかに該当している場合に特定疾病と認められます。
2.関節リウマチ
手足の関節に変形や痛みが起こる症状ですが、どこに炎症があるか、症状が続いている期間などによって認定されるかが決まります。
3.筋萎縮性側索硬化症
運動ニューロン病の一種で、ALSとも呼ばれます。筋力の低下や筋萎縮などを引き起こします。
4.後縦靭帯骨化症
脊椎をつないでいる後縦靱帯が骨化する病気です。自覚症状や所見が認められた場合に後縦靭帯骨化症と診断され、特定疾病であると認められます。
5.骨折を伴う骨粗鬆症
加齢に伴って骨がもろくなる疾患です。低骨量になる骨粗鬆症以外の疾患や続発性骨粗鬆症ではなく、骨評価の結果が一定の条件を満たしていると特定疾病であると認められます。
6.初老期における認知症
記憶障害の他、失語・失行・失認・実行機能障害といった認知障害による認知欠損が発現していると認められる場合に特定疾病に認定されます。
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
筋肉が震えたり、こわばったり、反射障害が起こったりする病気で、日常の動作が緩慢になっていきます。
8.脊髄小脳変性症
人間の動作を司っている小脳が異変を来す疾患です。あらゆる運動が本人の思い通りに行かなくなります。
9.脊柱管狭窄症
脊椎の中にある空間が狭くなることによって中の神経が圧迫され、歩行中の足のしびれなどが現れる疾患です。
10.早老症
染色体の先天的な異常によって実年齢を大きく上回るスピードで肉体が老介していくという疾患です。
11.多系統萎縮症
小脳・大脳・自律神経などに障害が起こる神経性の疾患です。発現している症状によってシャイ・ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症に分類されます。
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
糖尿病のみでは特定疾病であるとは認められませんが、糖尿病を原因とする神経障害・腎症・網膜症という合併症が現れた場合に特定疾病であると認められます。
13.脳血管疾患
脳の血管に異常が起こった場合に発生する疾患の総称で、全身の血管の動脈硬化によって四肢や腹部の動脈に閉塞が見られる状態になり、様々な症状を引き起こします。
14.閉塞性動脈硬化症
動脈が硬くなることによって血管が詰まったりする疾患です。
15.慢性閉塞性肺疾患
慢性気管支炎・肺気腫・気管支ぜんそく・びまん性汎気管支炎が慢性閉塞性肺疾患に該当します。
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
両膝関節や股関節が何らかの原因で奇形して機能障害や痛みなどを引き起こします。
まとめ
ここまで年齢が65歳未満でも介護保険を受けることが可能になる特定疾病などについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、40歳~64歳までの第二号被保険者の方が介護保険のサービスを利用するためには、介護が必要となった原因が16種の特定疾病によると認められなければなりません。
ただ、どのような原因で介護が必要な状態になった場合でも介護保険のサービスを利用することができる65歳以上の第一号被保険者の方と違って、難しさを感じる方も多いかもしれません。
そのような方は市町村の担当窓口などに自身や家族が介護保険サービスを受けることができるのかを相談しに行きましょう。
介護保険サービスは利用することによって自身の自立の助けになる他、家族の介護による負担を軽減することができますので、65歳未満の方も利用できる場合は積極的に利用していきたいですね。