この記事では介護保険と生活保護は併用することができるのかということについて解説しています。
現在日本では少子高齢化が加速しており、それに伴って介護保険の重要性が増してきています。
また、それと共に生活保護受給者も増加してきており大きな問題となっています。
ここで気になってくるのが生活保護受給者は介護保険を利用することができるのかということです。
ここでは介護保険と生活保護を併用することはできるのかということについて解説していきますので、興味のある方は是非ご覧ください。
介護保険と生活保護は年齢によって併用できる
介護保険の被保険者は年齢によって区分分けされており、65歳以上の方は第一号被保険者、40歳~64歳までの方は第二号被保険者となります。
第一号被保険者の方は受給している年金から天引きされるかたちで、第二号被保険者の方は加入している公的医療保険の保険料に上乗せされるかたちで介護保険料を支払っていますが、生活保護を受給している方はこの介護保険料を支払う必要はないとされています。
このため、生活保護を受給している方は介護保険と生活保護を併用することができるのかと疑問に思われると思いますが、併用できるかできないかは生活保護受給者本人の年齢によって決まってきます。
65歳以上の人は介護保険を利用できる
65歳になるとすべての日本国民に「介護保険被保険者証」が郵送され第一号被保険者となります。これは生活保護を受給している方も同様です。
このため、生活保護を受給している65歳以上の方は介護保険を利用したい場合、要介護認定の申請を行い、「要支援1以上」に認定されると生活保護を受給していない65歳以上の第一号被保険者と同様に介護保険サービスを利用することが可能になります。
65歳以上になると生活保護受給者といえども介護保険料を支払わなければならなくなります。
ただ、65歳以上の生活保護受給者は毎月の生活保護費に介護保険料分が加算され、福祉事務所から市町村への代理納付によって介護保険料分が生活保護費から天引きされているので、実質的な負担なく介護保険を利用することが可能になっています。
40~64歳までの人は介護保険は利用できない
先程の項目で65歳以上の生活保護受給者は介護保険を利用することができると申しあげましたが、40歳~64歳までの生活保護受給者はどうなのでしょうか?
結論から申しあげると40歳~64歳までの生活保護受給者は介護保険を利用することができません。
前述したように、通常の40歳~64歳までの第二号被保険者の方は介護保険料を加入している公的医療保険の保険料に上乗せして支払っています。
しかし、生活保護を受給している方というのはほとんど公的医療保険に加入しておらず、病院などに行く際にも医療保険証を使わずに生活保護費の中の医療扶助からまかなうということを行っています。
つまり、公的な医療保険に加入しておらず、医療保険料を支払っていない生活保護受給者は介護保険料を支払うことができず、介護保険の被保険者となることができないために介護保険を利用することができないというわけです。
ただ、生活保護を受給しているが、就労先の健康保険に加入しているという方はこの限りではなく、通常の40歳~64歳までの方と同様に介護保険の第二号被保険者となります。
生活保護受給者が利用できる介護サービス
生活保護受給者の方は生活保護を受給していない被保険者の方と違い介護保険料を支払っていません。
では生活保護受給者はどのような介護サービスを利用することができるのでしょうか?
介護サービスの利用に違いはない
介護保険では大きく分けて「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」という3つのサービスがあり、それぞれに様々な介護サービスが分類されています。
生活保護を受給していない被保険者の方は要介護認定を受けることでこれらのサービスを利用することができるようになりますが、生活保護受給者の方も同様のサービスを利用することが可能になっています。
また、先程の項目で40歳~64歳までの生活保護受給者は介護保険の被保険者とはならず介護保険を利用することができないと申しあげました。
では“生活保護を受給している40歳~64歳までの方は介護が必要になった場合でも介護サービスは使えないのか”というとそれは違います。
介護保険を利用することはできませんが、介護サービスを利用することは可能になっています。
どういうことかといいますと、介護保険の被保険者ではないけれど介護保険の被保険者であるとみなして認定審査が行われるからです。
こういった方のことを「みなし二号」といいます。ただ、みなし二号の方も通常の40歳~64歳までの第二号被保険者の方と同様に以下の特定疾病であると認められないと介護サービスを利用することはできません。
[16種の特定疾病]
- 1.がん(がん末期)
- 2.関節リウマチ
- 3.筋萎縮性側索硬化症
- 4.後縦靭帯骨化症
- 5.骨折を伴う骨粗鬆症
- 6.初老期における認知症
- 7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 8.脊髄小脳変性症
- 9.脊柱管狭窄症
- 10.早老症
- 11.多系統萎縮症
- 12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 13.脳血管疾患
- 14.閉塞性動脈硬化症
- 15.慢性閉塞性肺疾患
- 16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護サービス費は市区町村が負担
介護サービスを利用する際に必要になってくる介護サービス費は各市区町村が負担することになります。
65歳以上の第一号被保険者の方の場合は、通常介護サービスを利用すると所得に応じて1~3割の費用を自己負担する必要がありますが、65歳以上の生活保護受給者は自己負担分は1割となっています。
この介護サービス費の自己負担分が介護保険料と同様に生活保護費から支払われることになります。
ちなみに、生活保護受給者の介護保険料は生活保護費の中の「生活扶助」から、介護サービス費は「介護扶助」からそれぞれまかなわれることになります。
また、必ず全額免除されるというわけではなく、本人に支払い能力がある場合は一部を負担しなければならなくなる場合もあります。
40歳~64歳までの生活保護受給者の方はみなし二号となるわけですが、このみなし二号の方のサービス費も生活保護受給者である第一号被保険者の方と同様に生活保護費の「介護扶助」によってまかなわれることになります。
ただ、みなし二号の方は介護保険を利用することができないため、1割を介護扶助からまかなう65歳以上の生活保護受給者とは違い、かかった費用の10割を介護扶助によってまかなうことになります。
まとめ
ここまで介護保険と生活保護は併用することができるのかということについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように生活保護を受給している場合年齢によって介護保険を利用することができるかは決まってきます。
生活保護受給者が65歳以上の場合は第一号被保険者となり介護保険を利用することができますが、40歳~64歳までの場合は介護保険の被保険者となることができず介護保険を利用することができません。
ただ、40歳~64歳までの方も介護サービスを利用することができないわけではなく、みなし二号として通常の第二号被保険者の方と同様に利用することが可能になっています。
また、生活保護費というのは国民の税金でまかなわれていますので、国の保護費を節約するためにも介護サービスを利用する際は自分にとって本当に必要なサービスのみを検討して利用するようにしましょう。