皆さんの周りには、介護保険を利用している方はいらっしゃいますか?
介護が必要になったときに利用できる公的保険である介護保険制度ですが、利用を開始するまでには様々な手続きがあったり、また書類が必要だったりします。
そのため、実際に介護が必要になってから介護サービスを利用できるようになるまで時間がかかる場合があります。
このご時世、いつ介護が必要になっても不思議ではありません。
いざというときに困らないよう、今回は介護保険を利用するまでに必要な手続きや、流れについて解説していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
介護保険の概要について
一口に介護保険といっても、その実際はなかなか分かりづらい制度になっています。
実 際に介護施設等で働いている職員でさえ、その仕組みを正確に理解できていない人も少なくありません。
まずはその概要について解説していきます。
介護保険ってどんな保険?
介護保険とは、国・県・市町村・被保険者の4者でお金を出し合い、成り立っている保険です。
特に、被保険者の住所がある市町村がサービス利用に関する利用許可や保険料等の認定を担っており、介護サービスの事業者の管理を管轄しているのが各都道府県になっています。
利用できるサービスは、介護施設への入居、介護サービスを利用するために必須となる計画書を作ったり介護相談に乗ってくれる居宅介護支援、自宅に来てもらってお世話や病気の管理を受ける訪問介護や看護、通って介護やリハビリを受ける通所介護や通所リハビリ、自宅をバリアフリー化するための補助金を受けられる住宅改修や、介護に必要な道具を借りたり買ったりできる福祉用具貸与・販売等多岐に渡ります。
保険料はどのくらい?
保険料を設定しているのは住所がある市町村です。
その方の年収や市町村の人口等によって、その自治体ごとに金額は違います。
相場としては全国平均5,869円(参照:厚生労働省 平成30年5月21日発出 第7期計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について)です。
被保険者の保険料は40歳から支払いが始まります。
40歳以上の方は厚生年金等の保険料と一緒に給料から自動的に天引きされます。
65歳以上の方は、受給してる年金から天引きされる形で徴収されています。この仕組みは特別徴収と呼ばれています。
ちなみに、これを天引きではなく振り込む形で支払方法を変更することも可能です。
天引きされる特別徴収に対し、こちらは普通徴収と呼ばれています。
どんな人が使えるの?
利用が可能なのは、65歳以上の方(第一号被保険者)もしくは40歳~64歳の方で公的医療保険に加入しており、なおかつ定められた16種類の特定疾病により介護が必要だと診断された方(第二号被保険者)とされています。
保険のサービスを利用する上で必要な費用としては、毎月支払う介護保険料と、実際にサービスを利用したときに発生するサービス利用料があります。
基本的には利用者はサービス利用料総額の1割負担ですが、年収280万円以上の方は2割もしくは3割負担まで幅があります。
介護保険を受けるまで
介護保険の概要について、ざっくりと説明させていただきました。
では、具体的に介護保険サービスを受けるまでにはどのような流れがあるのでしょうか。
ここからは、そのプロセスについてみていきます。
要介護認定の申請をする
まず、介護が必要になったら要介護認定の申請をしましょう。
要介護認定の申請を受理してもらえるのは、「65歳以上で介護が必要になったとき」「40歳以上64歳以下の方で特定疾病により介護が必要だと診断された方」ですのでご注意ください。
申請には、65歳到達時に郵送で届く空欄の介護保険被保険者証(64歳以下の方は加入している各種公的医療保険証)、マイナンバー等が必要になります。
「主治医意見書」を作ってもらう
主治医から、「主治医意見書」を作成し市町村に提出してもらう必要があります。
今まで医者にかかったことがない、という方は、最寄りの開業医でも大丈夫です。
ただし、今後お世話になる先生ですので信頼できる方がよいでしょう。
これは手元に届く書類ではないですが、作成手数料がかかりますのでご注意ください。
「認定調査」を受ける
手続きが進むと、自治体の介護保険課から認定調査の依頼が来ますので、調査を受けてください。
上記主治医意見書と、この認定調査の結果によって「要介護度」が決まり、受けられるサービスの量やサービス利用料が決まります。
介護支援専門員(ケアマネジャー)と契約する
自宅で介護を受ける場合には、「居宅サービス計画書」を作成し、利用するサービス事業者を選定し、サービス担当者会議を開いてサービス内容を決定し…といったプロセスが必要になります。
これを介護保険サービスとして行う専門家が介護支援専門員(ケアマネジャー)です。利用料は発生しないため、ご自身が信頼できるところを選ぶとよいでしょう。
利用するサービス事業者と契約する
要介護認定がおり、ケアマネジャーとの相談が進むと、訪問介護や通所介護など実際に利用するサービス事業者を決める必要があります。
どんな事業者があるか分からないという場合は「介護サービス情報公表システム」というデータベースがありますので参考にするとよいでしょう。
担当のケアマネジャーさんに相談する方も少なくありませんが、基本的には中立的な立場から仕事していますので、まっとうなケアマネジャーであれば利用者さんの特性に合う複数候補の情報提供に留める場合がほとんどです。
あくまでサービス事業者を決めて契約するのは利用者さん自身です。
利用を開始する
公的サービスには書類がつきものです。
実際にサービスを利用するにあたり、ケアマネジャーが作る計画書以外にも訪問介護や通所介護等にもそれぞれ計画書の作成が義務付けられているので、利用者さんはそれに同意する必要があります。
申請をする場所
利用するためには様々な手続きが必要であることが分かりました。
では、これらはどこで誰が行っているのでしょうか。
どこで申請すればいいの?
申請先は、住所がある自治体の介護保険担当課になります。
「介護保険課」もしくは「福祉事務所」という名前になっていることが多いです。
分からない方は役場に問い合わせてみるとすぐ教えてくれますよ。
書類は自分で作らないといけないの?
介護保険を利用するまでには様々な手続きが必要になります。
そもそも、一般の方には一番最初の要介護認定申請書すらハードルが高いです。
そのため、専門家が代理で申請することが可能になっています。
主に学区ごとに設置されている「地域包括支援センター」の相談員や民間の「居宅介護支援事業所」の介護支援専門員が代行しているケースが多く、大半はそのまま介護サービス利用までつなげてくれることが多いので、介護が必要になったら気軽に相談してみてください。
申請のタイミング
介護サービスを利用するための流れはご理解いただけたでしょうか。
では、最後に申請のタイミングについてご紹介していきます。
単刀直入に申し上げると、それは「介護が必要だな」と感じた瞬間です。
例えば怪我や病気で入院したとしましょう。
この場合は治療していく中で病院スタッフが患者の状態をみて、退院後に介護が必要になることが予測されると助言されるケースが多いです。
また、特定疾病の診断を受けた場合は、すぐにでも介護が必要なケースが多いので、直ちに動いた方がいいでしょう。
一緒に暮らすお年寄りの方が、特に病気や怪我をしているわけでもないのに、なんとな
く段々動けなくなって手助けが必要になっていく…という場合もあります。
その際も我慢せず早めに最寄りの地域包括支援センター等に相談し、申請を進めましょう。
市町村によっても違いますが、申請をしてから要介護度が決まるまで2週間から1ヶ月ほどかかっているのが実情です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
介護保険制度は決まり事や書類がたくさんあり、とっつきにくいと感じる方も多いでしょう。
介護が必要だと感じたその日から使えるサービスでもありません。
スムーズに利用するためには時間もかかります。
なので、困りごとを感じたらそのときが申請のタイミングです。
実際に介護サービスの利用を開始するまで、保険料以外に費用が発生することは殆どありませんので、ぜひ気軽に、早めに専門家に相談してみることをお勧めします。