家族に介護が必要な状態になると、住宅改修を考える人も多いと思います。特にトイレは早くに介護が必要になる場所でもあるため、住宅改修を考える必要があります。
この住宅改修にも介護保険が利用できるのはご存知でしょうか?
この記事では介護保険を利用して行えるトイレの改修について解説していきます。
介護保険の住宅改修とは
介護保険制度とは介護が必要になった高齢者にその費用を給付してくれる保険です。
要介護認定を受け、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階のいずれかに該当すると、介護保険を利用して介護給付を受けることができます。
介護サービスには居宅サービス、施設サービスなど各種サービスがあります。
介護保険の中には住宅改修費支給サービスというものがあり、介護保険適用で支給限度額は10割=20万円となっています。
住宅改修に要した費用のうち1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)を本人が負担し、残りの9割(一定以上所得者の場合は8割または7割)が、介護保険から支給されます。
生涯を通して20万円までなので、何度かに分けて使うことも可能です。転居時や介護度が3段階以上上がった場合には、再度20万円の住宅改修費を利用することができます。
和式から洋式に便器を交換は出来るの?
トイレも住宅改修の対象箇所となり、和式便器から洋式便器への交換ができます。昔ながらの日本家屋では和式便器を使っているところが多くあり、介護が必要になるとこれを洋式便器に交換する方が多いです。
その① 交換することのメリット
介護が必要な状態の高齢者にとって、和式便器でのしゃがみ込んだ姿勢というのは足腰の筋力やバランス力も必要であり、とても負担になります。
また、立ち上がりが難しい高齢者にとって、しゃがんだ姿勢からの立ち上がりは転倒の危険性もあります。
洋式便器へ交換することによって、排泄時の姿勢や立ち上がり動作の負担が軽減されます。
また、洗浄機能(ウォシュレット)付きの便器にすることで、排泄後の清拭、洗浄も行えるため、トイレ介助を行う家族の負担も軽減できます。
その② 交換する際のチェックポイント
トイレを住宅改修する際には、便器の交換だけでなく、他にもチェックするべきポイントとして以下のようなことがあります。
- 便器までの動線に段差はないか、車いすでの移動に支障がないか
- トイレの扉は開閉しやすい扉か
- 利用者の移動が大変である場合、居室からトイレまでの距離は短いか
- 車いすからスムーズに移乗できる高さの便座か
- 車いすからの移乗や便器への立ち座りがしやすいよう、手すりは設置されているか
トイレという場所は本人のプライバシーに大きく関わります。
できる限り排泄という行為を自分で行える環境を作ることは、人権を左右する問題となります。
上記のチェックポイントについて、 できる限り人の手を借りず、本人の負担も少なくするにはどうしたらいいのかを考えることが大切です。
その③ 付帯工事に該当するもの
介護保険が住宅改修の対象としているものは、次の通りです
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りの防止、及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更
- 引き戸等への扉の取り替え
- 洋式便器等への便器の取り替え
- その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
ここで⑤洋式便器等への便器の取り替えに関して詳しく見ていきましょう。
洋式便器等への便器の取り替えとは、和式便器を洋式便器に取り替える場合などです。
〔支給対象〕
和式便器から洋式便器への変更(暖房便座や洗浄機能などが付加されているものを含む)
〔支給対象となる付帯工事〕
- 便器の取り替えに伴う給排水設備工事(水洗化または簡易水洗化に係るものを除く)
- 便器の取り替えに伴う床材の変更。
〔支給対象外〕
- すでに洋式便器である場合、暖房便座、洗浄機能などの器具の設置
- 非水洗から水洗化などへ変更する場合の給排水工事、電気工事など
- 便器を和式から洋式に改修するにあたり、仮設トイレ設置の費用
- 既存トイレを改修するのではなく、別室を改造して洋式トイレを新たに設置する場合
トイレの住宅改修と言っても、洋式便器へ交換するだけでなく、トイレへの手すりの設置や扉の交換なども介護保険を利用して改修が可能です。また、洋式便器への変更に関して、支給対象となる工事と支給対象外となる工事もあるため、注意しましょう。
料金の目安
和式便器から洋式便器へのリフォームと言っても、いくつかの方法があります。トイレの構造や費用などいろいろな点から最適な方法を選びましょう。
1)和式便器から洋式便器へリフォームする場合
一般的に和式便器から洋式便器へリフォームする場合は、和式便器を取り壊して洋式便器を設置する工事を行います。
大掛かりな工事となりますので費用はかさみますが、今後和式便器を使う予定がない場合などは、将来的なことを考えると必要な工事と言えます。
費用は選ぶ洋式便器の種類にもよりますが、30万円〜50万円ほどです。20万円までは介護保険を利用することができますが、それ以上は全額自己負担となります。
2)段差のある和式便器に簡易取り付け型洋式便器を取り付ける場合
床から一段高い場所に和式便器があるなど、段差のある和式便器の場合、安く簡単に洋式便器を取り付けることができます。
しかし、設置できる和式便器の寸法や形状が決まっているため、ご自宅のトイレが条件に当てはまるのか確認が必要です。
費用は10万円ほどで、自己負担は1~3割です。
に抑えられますので、洋式便器に交換したいけれど、費用が気になる場合にお勧めです。
3)腰掛便座(補高便座やポータブルトイレ)を置いて使用する場合
腰掛便座には和式便器の上に置いて洋式に変換する補高便座や、居室などに置いて使用する移動可能なポータブルトイレなどがあります。
これらは住宅改修の対象とはなりませんが、福祉用具の購入対象となっているものです。費用は数千円~2万円ほどで、介護保険を利用して1~3割で購入できます。
工事は必要なく、一番安く簡単に洋式便器に変換する方法です。大掛かりな工事は必要なく、一時的に洋式便器にしたい場合、トイレまでの移動が大変で居室で用を済ませたい場合には簡易的でお勧めです。
まとめ
介護保険を利用した住宅改修について、和式便器から洋式便器への交換について解説してきました。以下にまとめます。
- 介護保険を利用すると1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)の本人負担で住宅改修が行えます。生涯を通して20万円まで利用可能です。
- 和式便器から洋式便器への交換も介護保険を利用することができ、本人の身体的負担や家族の介助の負担を軽減することができます。
- 和式便器から洋式便器へ交換する方法はいくつかの方法があり、その条件や費用などにより適したものを選ぶと良いです。
- 洋式便器へ変更する際、付帯工事として支給対象のものと支給対象外のものがあります。
- 和式便器から洋式便器へリフォーム工事を行う場合は30〜50万円の費用がかかりますが、もっと簡易的で安価な方法や、福祉用具を利用した方法もあります。
介護が必要な状態になると、本人と介助をする家族の負担軽減のため、トイレの住宅改修を考える必要があります。
住宅改修を行うことで、安全な動作の獲得や転倒防止になります。
介護保険を利用するkとで住宅改修の費用の負担も軽減することができます。
介護保険を利用する場合は、必ず担当のケアマネージャーを通すようにしましょう。
工事は支給対象でも、ケアマネージャーを通さずに工事を進めてしまうと、介護保険適用にならない場合もあります。