家族に介護が必要な状態になると、住宅改修を考える人も多いと思います。
介護保険にはいろいろな介護サービスがありますが、この住宅改修にも介護保険が利用できるのはご存知でしょうか?
この記事では介護保険を利用した住宅改修について、ベランダの段差解消などについて解説していきます。
介護保険の住宅改修とは?
介護保険制度とは介護が必要になった高齢者にその費用を給付してくれる保険です。
要介護認定を受け、要支援1〜2、要介護1〜5の7段階のいずれかに該当すると、介護保険を利用して介護給付を受けることができます。
介護サービスには居宅サービス、施設サービスなど各種サービスがあります。
介護保険の中には住宅改修費支給サービスというものがあり、介護保険適用で支給限度額は10割=20万円となっています。
住宅改修に要した費用のうち1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)を本人が負担し、残りの9割(一定以上所得者の場合は8割または7割)が、介護保険から支給されます。
生涯を通して20万円までなので、何度かに分けて使うことも可能です。転居時や介護度が3段階以上上がった場合には、再度20万円の住宅改修費を利用することができます。
住宅改修の対象は?
その① 要介護・要支援の認定を受けている
介護保険の住宅改修費支給サービスの対象者は介護保険の要支援 1〜2、要介護1〜5の認定を受けている方です。
介護保険の要介護認定は申請をしてから結果が出るまでに1ヶ月ほどかかります。
介護保険の住宅改修費支給サービスを受けるには、基本的には要支援・要介護認定を受けていることが必要ですが、事前申請時点において要介護認定の結果が判明していない被保険者が住宅改修を急ぐ理由がある場合には、事前申請ができる取り扱いをしていることもあります。
ただし、要介護認定結果が「非該当」となった場合は、承認通知書が交付されている場合でも、介護保険住宅改修費は支給されないため、注意が必要です。
その② 住所地の住宅であるか
介護保険の住宅改修費支給サービスの対象者は、介護保険被保険者証に記載されている住所で生活している方です。
介護保険施設の入所者や病院に入院中の方、一時的に身を寄せている住宅の改修工事は対象とはなりません。
ただし、退所・退院の予定が明確であり、それまでに住宅の改修が必要な場合などによっては改修が可能な場合があります。
住宅改修の種類について
住宅改修の種類について、表にまとめました。
住宅改修での段差解消について
上記の表でも説明した通り、段差解消については、各室間の段差及び玄関から道路までの通路等の段差を解消するための住宅改修のことを言います。
敷居を低くする工事や、スロープを設置する工事、浴室の床のかさ上げ工事等があります。
以下にさまざまな場所での段差解消の住宅改修について詳しく説明します。
その① ベランダの段差解消
1人暮らしの方が、洗濯物を干す等のためベランダへ出る必要がある場合などは、移動という基本動作を支援するものと考えられるため、居室とベランダの段差解消は住宅改修費の支給対象となります。
しかし、庭に下りる際に転落する可能性があるため、ウッドデッキを作成し、段差を解消する場合などは、ベランダの増設に該当するため、住宅改修費の支給対象とはなりません。
その② 玄関の段差の解消
玄関ホールと土間の間や上がり框が大きな段差になっている場合、転倒の危険性があります。
式台を設置し段差を解消したり、上り框の段差を2段階にすることで、玄関の昇り降りを安全に行うことができます。
ただし、式台については持ち運びが容易でないものは住宅改修の支給対象となりますが、持ち運びが容易なものは対象外となります。
その③ 廊下の敷居の撤去
一般的に廊下の敷居は2~5㎝ほどの高さがあります。
筋力が低下したり、歩く際にすり足になったりするとつまずいて転倒の危険性があります。
また、車いす移動の場合は、この敷居を乗り越えるのも大変です。
敷居を撤去し、床とほぼフラットな敷居を新設したり、小さいスロープを設置して敷居の段差を解消する方法があります。
ただし、釘、ねじ、接着剤、両面テープなどで固定してあるもののみが段差解消の対象となります。
その④ 浴室の床のかさ上げ
浴室の敷居や浴槽の高さが高く出入りが大変など、浴室には危険個所があります。
浴室の床のかさ上げを行うことで、出入りを楽に安全に行えるようになります。
浴槽をまたぐのに適した高さは、高低差が35~40㎝です。
浴室の床をかさ上げして段差を解消する場合は、それに伴う給排水工事なども給付の対象です。
すのこ設置で浴室の床をかさ上げすることもできますが、すのこの場合は福祉用具の支給対象に入ります。
その⑤ 玄関アプローチの段差解消
玄関の外が階段になっている場合、車いすがスムーズに移動できるようにコンクリートスロープを設置することができます。
スロープの勾配は1/12が理想とされており、段差に対してスロープの長さは10倍程度必要とされています。
道路の通行料や敷地の大きさと段差の関係、介護者の体力の状況等で違いがありますので、必ず専門家とよく相談してください。
また、可動式スロープの場合は、住宅改修ではなく、福祉用具貸与の対象となります。
まとめ
介護保険を利用した住宅改修の中でも段差解消について解説してきました。以下にまとめます。
- 介護保険を利用すると、1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)の本人負担で住宅改修が行えます。生涯を通して20万円まで利用可能です。
- 介護保険を利用した住宅改修の対象は、要支援・要介護認定を受けている方で、介護保険被保険者証に記載してある住所で生活をしている方です。
- 住宅改修には、手すりの取り付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え、便器の取替え、これらに付帯して必要となる住宅改修などの種類があります。
- 段差解消には、ベランダの段差解消、玄関の段差解消、廊下の敷居撤去、浴室の床のかさ上げ、玄関アプローチの段差解消などがあります。ベランダに関して、ベランダの増設に該当する場合は、住宅改修費の支給対象とはなりません。
介護が必要な状態になると、足腰の筋力が弱りつまずきやすくなったり、移動に車いすが必要になったりします。
そんな時、段差解消は本人にも介助する家族にとっても、安全に生活するために必要な住宅改修と言えます。
介護保険を利用することで、住宅改修の費用の負担も軽減することができます。
介護保険を利用した住宅改修を考えている場合は、まず担当のケアマネージャーに相談してみましょう。