介護保険制度とは、利用者は一部の自己負担で介護サービスが受けられる制度のことであり、この制度については知っている方も多くいらっしゃると思います。一般的には利用者負担割合は1割ですが、現在では1割負担のみだけでなく、それ以上の負担割合の人もいます。この記事では、介護保険の利用者負担割合について詳しく解説していきます。また、この負担割合が年金収入とどのような関係があるのかも併せてご説明します。
そもそも利用者負担割合とは何か?
介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみで、介護が必要な方にその費用を給付してくれる保険です。
40歳になると介護保険に加入が義務付けられ、保険料を支払うことになります。
介護保険では第1号被保険者(65歳以上)は、介護が必要であると認定を受けると、その程度によって、日常生活の支援や介護のサポートを受ける際に介護給付を受けることができます。
第2号被保険者(40歳~64歳)は、末期がんや関節リウマチ、脳血管疾患などを含む全部で16種類の特定疾病のいずれかに該当し、要介護認定を受けた人のみ、介護給付を受けることができます。
要介護認定を受けると、どの程度の介護を必要としているかで要支援1~2・要介護1~5の7段階に分類されます。
この要介護認定を受けている方のみが介護保険を利用して介護サービスを受けることができます。
介護サービスには居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスなど各種サービスがあり、介護保険を利用することで総額の一部負担のみで介護サービスを受けることができます。
利用者負担割合とは、介護保険サービスを利用する際に、利用者が負担する費用の割合を示すものです。
介護保険負担割合証に記載されている負担割合に応じてサービス費用のうち1割〜3割までのいずれかが利用者担割合となります。
利用者負担割合を決める所得基準について
介護保険制度が施行された当初は利用者負担割合は一律で1割でしたが、わが日本の社会保障費の財源の圧迫によって、一定以上の所得がある方の負担割合を2〜3割とすることになりました。
現在は年金収入等(年金収入+その他の合計取得金額)の所得基準に応じて負担割合が1〜3割の3つに分類されます。
その① 1割負担となる人
利用者負担割合が1割となるのは、合計所得金額が160万円未満の人、年金収入等(年金収入+その他の合計取得金額)が280万円未満の人です。
この年金収入等は単身世帯の場合で、夫婦世帯の場合は、年金収入等が346万円未満の場合1割負担です。
65歳未満の方、市民税非課税の方、生活保護受給者の介護保険負担割合は1割となります。
その② 2割負担となる人
利用者負担割合が2割となるのは、合計所得金額が160万円以上の人、年金収入等(年金収入+その他の合計取得金額)が280万円以上の人です。
この年金収入等は単身世帯の場合で、夫婦世帯の場合は、年金収入等が346万円以上の場合2割負担です。
その③ 3割負担となる人
介護保険制度が施工されてから2015年までは利用者負担割合は一律1割でしたが、その後一定所得以上の人は利用者負担割合が2割となりました。
しかしそれでも超高齢化社会の日本において介護保険制度にかかる財源は不十分でな状態であり、国は2018年8月から一部の人に限り、介護保険負担割合を3割に引き上げることにしました。
利用者負担割合が3割となるのは、合計所得金額が220万円以上の人、年金収入等(年金収入+その他の合計取得金額)が340万円以上の人です。
この年金収入等は単身世帯の場合で、夫婦世帯の場合は、年金収入等が463万円以上の場合3割負担です。
その④ フローチャートで最終確認
<世帯に65歳以上の方が一人の場合(単身者含む)>
「はい」または「いいえ」でお答えください。
<世帯に65歳以上の方が二人以上の場合>
「はい」または「いいえ」でお答えください。
※このフローチャートは介護保険の自己負担割合を簡易的に予想するためのものであり、実際の負担割合を保証するものではありません。実際に適用される負担割合は保険者から届く「介護保険負担割合証」をご参照ください。(前年度の所得をもとに判定した結果が毎年7月ごろに届きます。)
少しでも負担を減らすには『高額介護サービス費』の利用をする
上記のように介護費用の自己負担額が増加すると、高額な介護支出が発生してしまいます。
そのような場合に少しでも負担を減らすために『高額介護サービス費』と呼ばれる制度があります。
高額介護サービス費とは、介護保険を利用して支払った自己負担額の合計が一定金額を超えた分に関しては、申請によって超過分が払い戻される制度です。
これは国の制度に基づき、各市町村が実施するもので、個人の所得や世帯の所得に対して上限が異なります。
以下の所得区分によって、自己負担の上限金額が定められています。
例えば、自己負担上限額15000円の単身高齢者が、1か月に19480円を負担した場合、
19480円-15000円=4480円 が高額介護サービス費として戻ります。
※この高額介護サービス費の対象には、老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などを含むことはできません。また、在宅で介護サービスを受けている場合の福祉用具の購入費や住宅改修費などについても高額介護サービス費の支給対象とはならないため、注意が必要です。
まとめ
介護保険の利用者負担割合について詳しく解説してきました。以下にまとめます。
- 介護保険の利用者負担割合とは、介護保険サービスを利用する際に、利用者が負担する費用の割合を示すもので、所得に応じて1割〜3割の3分類があります。
- 2018年8月より新しく、現役並みの所得がある人に関しては負担割合が3割に引き上げられました。
- 高額介護サービス費という介護保険を利用して支払った自己負担額の合計が一定金額を超えた分に関して超過分が払い戻される制度があります。所得によって自己負担の上限額が設定されています。
日本は超高齢化社会に突入し、今後ますます介護保険にかかる財源は足りなくなってきます。
利用者負担割合の所得区分も今後もっと厳しくなるかもしれません。
高額介護サービス費の制度など、介護費用の負担を減らす制度もありますので、負担割合が大きく介護費用が増える場合には、このような制度を活用すると良いでしょう。
このような負担を減らす制度は申請が必要になりますので、ご自分で自治体の窓口で手続きを行うようにしましょう。