介護保険を利用してレンタルすることができる福祉用具には車いすやベッドなどがあります。
居宅サービスのため、基本的には居宅(自宅)でレンタルすることとなっていますが、自宅以外の場所でもレンタルすることはできるのでしょうか?
この記事では、福祉用具についてレンタルの流れや対象の種目、自宅以外でもレンタルの対象となるのかどうかについて解説します。
福祉用具貸与について
介護保険制度とは、介護が必要になった高齢者を社会全体で支えるしくみで、介護が必要な方にその費用を給付してくれる保険です。
要介護認定を受けると、どの程度の介護を必要としているかで要支援1~2・要介護1~5の7段階に分類され、この要介護度別に介護サービスの利用限度額が決まります。
介護サービスにはさまざまな種類のサービスがあり、介護保険を利用することで総額の一部負担(1~3割)のみで介護サービスを受けることができます。
介護サービスの中に「福祉用具貸与」という福祉用具に関するサービスがあり、費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)を利用者が負担することで、車いすやベッドなどの13種目の福祉用具をレンタルすることができます。
レンタルの自己負担費用は対象種目によって異なります。
その① レンタルまでの流れ
福祉用具をレンタルするまでの流れは次の通りです。
- ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに相談する。
- ケアプランを作成し、福祉用具貸与事業者を選定する。
- 福祉用具専門相談員が利用者宅を訪問し、福祉用具を選定・提案する。
- 事業者が福祉用具を納品し、利用者の適合状況を確認する。
- 福祉用具を決定し、利用者と福祉用具貸与事業者が契約する。
- レンタル・サービス開始となる。
- 福祉用具専門相談員による定期的なメンテナンス、及びアフターサービスなど。(福祉用具の変更も可能)
その② 対象の種目
「福祉用具貸与」の対象の種目は以下の13種目です。
介護度によっては保険給付の対象外の品目もあります。
要介護度が要支援1〜2、要介護1と軽度の場合、特殊寝台、特殊寝台付属品、床ずれ防止用具、体位変換器、車いす、車いす付属品、移動用リフト、認知症老人徘徊感知機器に関しては原則保険給付の対象外となります。
また、自動排泄処理装置に関しては要支援1〜2、要介護1〜3の人は原則保険給付の対象外となります。
その③ 平成30年10月からの改正
福祉用具貸与価格については、事業所の言い値になっており、全く同じ製品であるにも関わらず、一部事業者が極めて高額な貸与価格を設定している事例があることが問題視されていました。
そこで、2018年度(平成30年度)の介護報酬改定で、(1)全国の平均的な貸与価格を公表し、福祉用具専門員が利用者にこれを説明することを意義付ける、(2)貸与価格に上限を設定する、という2点の見直しが行われました。
平成30年10月から福祉用具貸与の「全国平均貸与価格」および「上限価格」が公表され、この「上限価格」を超える価格で貸与を行った場合、介護報酬の「福祉用具貸与費」は算定できなくなりました。
福祉用具貸与は自宅以外でも対象になる場合もある
介護保険の居宅サービスは原則的には居宅以外(自宅以外)で使用する場合には保険給付はできません。
しかし、普段は一人暮らしだが年末年始は息子の家に居住する、体調が悪くなり娘の家でしばらく面倒をみてもらうなど、自宅以外の場所で福祉用具を利用する場合も考えられます。
要介護者の心身状況や生活実態等の関係で、日常生活の拠点を移さざるを得ない場合には、例外的に算定は可能です。
転居となる場合には、住所変更を行い、そこを居宅とする必要があります。
まとめ
福祉用具レンタルの流れや対象の種目、自宅以外でもレンタルの対象となるのかについて解説しました。以下に重要なポイントをまとめます。
- 「福祉用具貸与」という介護サービスがあり、費用の1~3割を利用者が負担することで、車いすベッドなどの13種目の福祉用具をレンタルすることができます。
- 福祉用具貸与を利用するためには、ケアマネージャーに相談し、福祉用具貸与事業者と契約する必要があります。
- 平成30年10月より「全国平均貸与価格」および「上限価格」が公表され、この「上限価格」を超える価格で貸与を行った場合は、介護報酬の「福祉用具貸与費」は算定できなくなりました。
- 福祉用具の利用は原則的には自宅ですが、やむを得ない理由がある場合には、自宅以外での利用も例外的に算定は可能です。
介護保険を使うことで、利用者の負担を安く抑えることができ、より利用者に合った福祉用具を提供することができます。
また、福祉用具を利用することで、その方のできることが増えて自立へ繋がり、介護をするご家族の負担軽減にも繋がります。
自宅以外の場所での福祉用具の利用は保険者の考えにより異なります。
自宅以外で福祉用具を利用したい場合には、担当のケアマネージャーにその理由などをきちんと相談した上で利用した方が良いでしょう。