この記事では介護保険の負担限度額について解説しています。
介護保険には負担限度額認定制度というものがあります。
これはある条件を満たすことで施設サービスを利用する際にかかる住居費や食費を軽減することができる制度なのですが、皆さんはこの制度について詳しく知っていますか?
この記事では介護保険の負担限度額について解説していきますので、負担限度額認定制度について興味がある方は是非記事をご覧ください。
負担限度額について
介護保険施設に入所した場合やショートステイなどを行った場合には、自己負担分1割(所得に応じて2~3割)を支払うことになりますが、その他に居住費や食費といった費用を負担しなければならなくなっています。
ただ、所得が低い方はこの居住費や食費を支払うことが経済的に苦しくなりますので、居住費と食費の上限が利用者負担段階ごとに決められており、支払う費用が軽減されます。
これが介護保険における負担限度額認定制度です。
その① 対象となるサービス
負担限度額認定制度の対象となる介護保険サービスは以下のようなものになります。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 短期入所生活介護(介護予防を含む)
- 短期入所療養介護(介護予防を含む)
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者介護
その② 対象となる人
負担限度額の制度を利用するためには認定を受ける必要がありますが、負担限度額の認定を受けることができるのは以下の要件を全て満たしている方のみとなっています。
- 本人及び同一世帯内の全ての方が住民税が非課税である
- 配偶者(別世帯も含む)がいる場合はその配偶者も住民税が非課税である
- 預貯金等の合計金額が、単身者の場合1,000万円以下、配偶者がいる場合は2,000万円以下である
※預貯金等には、普通預金、定期預金、有価証券(株式・国債・社債・地方債等)、投資信託、金や銀といった貴金属、タンス預金が該当します。
その③ 申請の方法
負担限度額の認定を受けるためには申請を行わなければなりません。
申請はお住まいの市町村の担当窓口行いますが、申請書類を用意する必要があります。
この申請書類は市町村の担当窓口や地域包括支援センターにて受け取ることができる他、市町村のホームページからダウンロードすることも可能になっています。
もともと住んでいた市町村以外の特定養護老人ホームなどに入所されている方は、その特定養護老人ホームがある市町村ではなく、もともと住んでいた市町村に負担限度額の申請を行うことになりますので注意してください。
負担限度額認定の申請は、担当窓口にて被保険者本人が申請する方法、代理人が担当窓口にて申請する方法、郵送によって申請する方法の3種類があり、全ての申請方法でマイナンバーが必要になってくる他、代理人による申請の場合は代理権が確認できるものが必須となります。
その④ 申請に必要なもの
負担限度額認定の申請には様々な必要書類が必要になってきます。
申請の際に必要になってくる書類は以下に記載するようなものです。
- 介護保険負担限度額認定申請書
- 同意書
- 預貯金等が確認できるもの(表を参照)
負担限度額認定の申請にはこのような書類が必要になってきますが、提出する申請者や預貯金等の申告に不正があると判明した場合には加算金を受けることになります。
この加算金とは不正な申告によってかかってくる費用の軽減を受けた場合に支払うもので、負担限度額の2倍を加算金として支払わなければならなくなります。
これにより、不正を行った場合は実質3倍を支払う必要がでてくるため、不正を行うことなく正しい申告を行うように注意する必要があります。
非課税年金が所得として勘案される
負担限度額の制度は認定を受けることによって利用することが可能になっていますが、所得などの条件によって軽減されてくる金額が変わってきます。
これは所得に応じて「利用者負担段階」というものが定められており、その負担段階によって軽減される金額が変わるからです。
段階は4つに分けられており、第1段階が最も軽く第4段階が最も重い負担になりますが、平成28年8月から利用者負担段階の第2段階と第3段階を区分している年金収入において非課税年金が新たに所得として勘案されることになりました。
このため、利用者負担段階は以下のようになります。
非課税年金とは、国民年金、共済年金、厚生年金に基づく遺族年金や障害年金のことをいいます。
さらに、年金保険者からの通知において寡婦、かん夫、母子、準母子、遺児などと印字されている年金も遺族年金と判定される対象となります。
また、この利用者負担段階による1日あたりの住居費・食費の負担額は以下のようになります。
※第4段階の方は施設との契約によって変わってきますが、第4段階の欄には施設における平均的な費用を勘案して国によって定められている費用額である基準費用額を記載しています。
まとめ
ここまで介護保険の負担限度額について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように介護保険には負担限度額という介護保険施設を利用する際にかかってくる住居費と食費を軽減することができる制度が設けられています。
申請を行い、認定を受けることによって「負担限度額認定証」が交付されると、介護にかかる費用を軽減することが可能になりますので、所得が低くて住居費・食費の支払いが苦しいという方などは積極的に利用したい制度となっています。
ただ、申請時に預貯金等の申告などにおいて不正があると負担限度額の2倍を加算金として支払わなければならなくなりますので、不正がないようにしっかりと申告を行いましょう。
また、自己負担限度額は所得などに応じて軽減される金額が異なってきますが、平成28年8月の改正によって非課税年金が所得として勘案されることになりましたので、平成28年7月まで利用者負担段階が第2段階だった方の中で非課税年金を一定額受給している方は、利用者負担段階が第3段階になる場合がありますので注意しましょう。