症状の改善や、身体機能の維持などを目的として行われるリハビリですが、何を目的としてリハビリを行うか、またどこでリハビリを行うかによって、利用できる保険が異なることはご存知でしょうか。
なぜなら、リハビリを行うときに利用される保険には、決まりがいくつか存在するからです。
今回は「介護保険」と「医療保険」でリハビリは何が違うか、またリハビリにおいて、「介護保険」と「医療保険」の連携についてを解説していきます。
介護保険でのリハビリ
まずは「介護保険」を利用したときの、リハビリについて紹介してきます。
「介護保険」は、介護に必要となる費用を給付する保険ですので、リハビリも介護に即したものが対象になります。
その① リハビリで目指すところ
「介護保険」を利用してのリハビリは、身体機能の維持を目的としたものになります。
慢性的な症状や症状が固定してしまった身体障害など、治療によって症状の改善が難しい場合に行われるリハビリです。
また筋肉の硬化を防止するためのリハビリや、日常生活全般をリハビリと捉えた機能維持も、「介護保険」で行うリハビリに含まれます。
「介護保険」で行うリハビリは、日数や対象となる疾患に制限がなく、長期的なリハビリに適したものになります。
その② リハビリが行われる場所
主に介護施設で行われるのが、「介護保険」でのリハビリです。
具体的な公的サービスは、「通所リハビリテーション(デイケア)」などが該当します。
自宅に理学療法士(PT)などが来訪し、リハビリが行われる「訪問リハビリテーション(訪問リハ)」も、基本的には「介護保険」を利用したリハビリです。
その③ リハビリの内容や携わる人
主に介護施設で行われるため、介護福祉士やホームヘルパ―、社会福祉士などがリハビリに携わります。
先ほど紹介したように「訪問リハ」では理学療法士の他に、作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)がリハビリを行います。
リハビリの内容ですが歩行や移動の訓練から、柔軟性やバランスの維持などが行われます。
「通所リハ」であれば介護施設にある、リハビリを行うための専用機器を利用することもできます。
医療保険でのリハビリ
次に「医療保険」でのリハビリについてです。
現状維持ではなく、症状の改善を目的とした「リハビリ」を行うとき、「医療保険」の利用になります。
その① リハビリで目指すところ
「介護保険」を利用したリハビリが、身体機能の維持であったのに対して、「医療保険」でのリハビリは、治療・訓練によって機能回復を目的とします。
治療・訓練によって症状の改善が見込める場合に限りますので、「介護保険でのリハビリ」の項目で紹介した、症状が固定してしまった身体障害の改善については、「医療保険」でのリハビリは受けることができません。
例えば骨折後にギプス固定を行うと、筋肉や関節が硬化しまいますが、この場合には「医療保険」でのリハビリを受けることができます。
なぜかと言うと、この硬化は一時的なことがあり、治療・訓練によって症状の改善が見込めるからです。
このように「医療保険」を利用したリハビリは、症状の改善が見込める場合に限りますので、短期間のリハビリとなり、日数や症状の制限があります。
その② リハビリが行われる場所
「医療保険」でのリハビリは、病院などの医療機関で行われます。
医師が治療によって、症状が改善すると判断した場合にのみ行われます。
その③ リハビリの内容や携わる人
「訪問リハ」でも紹介した理学療法士(PT)、作業療法士(OT)そして言語聴覚士(ST)がリハビリに携わります。
起き上がりや寝返りなどの日常生活を行う上で、基本となる動作の改善を行います。
その他にも、けがや疾病により食事や更衣、家事動作など、できなくなってしまったことに対して改善を行います。
リハビリについて 介護保険と医療保険の連携
リハビリの目的や場所など異なる点がある、「介護保険」と「医療保険」でのリハビリですが、それぞれの保険を利用したリハビリを連携させることにより、入院中から退院後まで幅広い期間でリハビリを行うことができます。
介護保険と医療保険を連携して行うリハビリとは
「介護保険」と「医療保険」と同時に利用して、リハビリを行うことはできませんが、それぞれの保険を利用したリハビリを続けて行うことはできます。
例えば骨折してしまい、入院中にリハビリを受けている方がいるとします。
転院を行うことにより、「医療保険」でのリハビリ期間をある程度は延長できますが、それでも先ほど紹介したように、「医療保険」でのリハビリは日数制限があるため、永続的には「医療保険」を利用することができません。
そこで「医療保険」を利用したリハビリが終了した後は、「介護保険」でリハビリを行うことにより、リハビリを実施できる期間を延長させることができます。
「医療保険」と「介護保険」を連携してリハビリを行うときには、それぞれの保険を利用してのリハビリ内容が異なる可能性があります。
病院等の医療機関で行っていたリハビリと同じ内容を、「介護保険」でのリハビリで行えないことがある点には、注意しなければなりません。
リハビリについて 介護保険と医療保険の連携を推進する国の方針
平成30年2月、「厚生労働省 中央社会保険医療協議」にて、リハビリについて、「介護保険」と「医療保険」の連携を推進していく方針が示されました。
「通所リハビリステーション」の施設基準を緩和させたり、疾患別リハビリテーションに携わる専業職員でも、一定の条件を満たせば、「通所リハビリテーション」に従事しても差し支えなくなったりと、「医療保険」でのリハビリ後は、「介護保険」を利用したリハビリに移行できるように、推進していくことが見受けられます。
参考元:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000193708.pdf 厚生労働省 中央社会医療協議 平成30年2月7日
まとめ
「介護保険」、「医療保険」を利用したリハビリの特徴や、両保険の連携について解説していきました。
同じリハビリでも、「介護保険」と「医療保険」では目的やリハビリを行う場所、リハビリに携わる人の違いがあることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
「介護保険」と「医療保険」のリハビリについてまとめると
- 「介護保険」でのリハビリは、身体機能の維持を目的としており、介護施設や自宅で行われる。
リハビリを行う日数や症状の制限はなく、長期的なリハビリに向いている - 医療保険」を利用したリハビリは、身体機能の改善を目的としており、病院などの医療機関で行われる。
リハビリを行う日数の制限があり、短期的なリハビリとなる - 国は「介護保険」と「医療保険」を連携したリハビリを推進しており、退院後のリハビリは「介護保険」と連携することにより、長期的なリハビリに移行できる
ということがあります。
「介護保険」と「医療保険」を連携してリハビリを希望するときには、事務的な手続き、医療機関や介護施設への連絡などを行わなければなりません。
入院先の医療機関から退院の日程について話が出たときなどは、すぐさま担当のケアマネジャーへ連絡をし、退院後からリハビリが行えるように手続きを進めるとよいでしょう。