この記事では介護に適切な椅子について解説しています。
椅子に座ったり椅子から立ち上がったりする動作は歳を重ねるごとにしんどくなっていきますが、介護用の椅子はその立ち上がったり座ったりする動作を助けてくれるものとなっています。
この記事では介護用の椅子の選び方について解説していきますので、介護用の椅子を導入しようとしている方などは是非この記事を参考にしてみてください。
安定した座位姿勢とは?
介護を行う上では人の身体のメカニズムを理解する必要がありますが、そもそも安定した座位姿勢とはどのようなものなのでしょうか?
安定した体制で座っているときは、支持基底面(体重や重力によって圧を感じることができる身体の表面とその間にできる底面)の中に圧の中心点が収まっている状態となります。
つまり、安定した座位姿勢とは支持基底面を広くするようにして(道具を使用したり手をついたりしてもいい)、その中心付近に圧中心点がくるようにした姿勢といえます。
簡単なものですが以下の図を参照してそれぞれの関係を確認して下さい。
また、お辞儀をするような体制になると圧中心点は支持基底面の前方へ移動するので立ち上がりやすくなり、身体を後ろにそらせた体制になると圧中心点が支持基底面の後方へ移動するので後ろへ倒れやすくなります。
不安定な座位から起こる弊害
先程の項目では安定した座位姿勢について解説してきましたが、高齢者や障害を持っている方などは安定した座位姿勢を取ることが困難になっている場合があり、頭が前に出たり、猫背になったり、腰が丸まった状態になったりといった姿勢を取りやすくなります。
このような姿勢は筋肉を使わないため楽ですが、このような姿勢をとり続けていると背中の筋力の低下を招いて骨や靱帯に負担がかかる他、円背を助長することにより呼吸機能・膝・股関節などに悪影響をもたらします。
このため、高齢者や障害を持っている方の中で座っている時間が長い方などに対しては安定した座位を取ることができるような介護用の椅子などを用意する必要があります。
介護に最適な椅子の選びかた
介護用の椅子を選ぶ際には介護を受ける方に合わせた椅子を選ぶ必要がありますが、介護に最適な椅子の選び方とはどのようなものなのでしょうか?ここでは介護に最適な椅子の選び方について解説していきます。
その① 体型から選ぶ
まず、利用者の体型に合っていなければ利用することが困難になりますので、体型から選ぶことが重要になってきます。
体型に合った介護用の椅子を選ぶことによって姿勢が崩れにくくなり、転倒のリスクを軽減することが可能になっています。
その② 身長から選ぶ
体型に合わせて選ぶことに似ていますが、被介護者の身長に合わせて選ぶということも重要になってきます。
介護用椅子を利用する際には、その椅子が被介護者の足裏が床にしっかりとつく程度の高さであることが重要になっていますが、身長は被保険者それぞれでことなってきますので、高さ調節機能が付いている介護用椅子などがおすすめされます。
椅子の高さが被介護者の身長に合っていないと、被介護者は姿勢を安定させることができませんので転倒のリスクが高まります。
このため、高さ調節機能の付いた椅子であれば被介護者の体格に座面を調整することが可能になっていますので、安定した姿勢で座ることが可能になる他、座った状態での身体への負担を軽減することも可能になっています。
その③ 身体機能から選ぶ
また、被介護者の身体機能から選ぶということも重要になっています。被介護者が足腰が弱く、椅子に座った状態から立ち上がるのがつらいという状態ならばそれに合わせた椅子を選択する必要があります。
このような場合におすすめなのが立ち上がり補助機能の付いている介護用椅子です。
椅子に座った状態から立ち上がるのがつらいという被介護者をサポートするのが立ち上がり補助機能ですが、この機能は被介護者が立ち上がる際に座面の部分が持ち上がって椅子から立ち上がる際の動作をサポートすることによって足腰にかかる負担を軽減してくレ留というものとなっています。
この機能があれば被介護者が自力で椅子から立ち上がることが可能になるので、介護を行っている家族がわざわざ立ち上がりの介助を行う必要がなくなりますので介護による負担を軽減することが可能になります。
椅子で安楽な姿勢を保つ方法
ここまで介護に最適な椅子の選び方について解説してきましたが、長時間椅子に座り続けることが多いとついつい姿勢が悪くなったりしてしまいますよね。
ただ、姿勢が悪い状態で椅子に座り続けることはもちろん身体にはよくありません。
なので、最後に椅子で安楽な姿勢を保つ方法について解説していきます。
その① クッションを活用する
椅子で楽な姿勢を維持するためにはクッションを活用するという方法が一般的でしょう。椅子に長時間同じ体制で座っているとおしりが痛くなる他、床ずれになってしまいます。
椅子に座る際にクッションを活用することによってこれらのことを予防することが可能になり、姿勢が崩れたり椅子からずれ落ちたりすることも防ぐことができます。
その② 機能性の高い座布団を利用する
機能性の高い座布団を利用するという方法もあります。
どのようなものかといいますと、座っている際に身体に負担を掛けることなくなく楽な状態で座ることが可能になっているクッション性の高い座布団のことをいいます。
このような座布団は座り心地がよく、長時間椅子に座っているという方に対しておすすめであり、U字型になっているので通気性も抜群です。
その③ 足元を安定させる
また、足元を安定させるということも楽な姿勢を保つ方法の1つです。
足元に物が置いてあると足の位置を安定させることが難しくなり、楽な姿勢を維持することが難しくなるだけではなく腰や骨盤などにかかる負担が大きくなってしまう可能性があります。
また、場合によっては首や背中に痛みを伴うこともあり大変危険です。
このため、椅子に座る際は椅子周辺の整理整頓を心がけ、椅子を置ける余裕のあるスペースを確保する必要があります。
まとめ
ここまで介護に適切な椅子について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
介護を受ける方・介護を行う方の両者が快適な介護生活を行うためには介護を受ける方に合わせた福祉用具が必要不可欠となっています。
人間は日常生活の中で必ず「座る」という動作を行いますが、この動作に椅子は欠かせないものとなっています。
この記事では介護に適した椅子について解説してきましたが、介護用の椅子を選ばれる際には介護を受ける方に身体状況や利用が想定されるシーン、利用が想定されるスペースなどを勘案して最適な者を選択する必要があります。
また、介護に適した椅子を選択したとしても長時間椅子に座り続けることが想定される場合には、その椅子でどのようにすれば楽な姿勢を保つことができるかも考える必要があります。
この記事では「クッションを活用する」「機能性の高い座布団を利用する」「足元を安定させる」という方法を紹介していますので是非参考にしてみてください。
椅子によって日常生活が少しでも楽になれば、介護を受けている方の生活意欲が向上するだけではなく、介護を行っている方の介護による負担も軽減することができますので、この記事を参考にして介護に適した椅子を選んでみてください。
1.の内容・図参考(WAM NET 介護技術の基本)
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/sppub/top/column/kaigogijyutu/kaigogijyutu004.html