この記事では在宅介護の基本である椅子からの立たせ方や座らせ方について解説しています。
人は日常生活の中で必ず「座る」という動作を行いますが、この動作に椅子は必要不可欠となっています。
このため在宅での介護を行う際には、正しい椅子からの立たせ方や座らせ方について知っておく必要があります。
ここでは在宅介護の基本である椅子からの立たせ方や座らせ方について解説していきますので、在宅介護を行うことになったという方などは是非この記事を参考にしてみてください。
座ることの大切さについて
人は日常生活の中で「座る」という動作を頻繁に行いますが、高齢者や障害を持っている方などは前屈みの姿勢を取りやすくなっており、バランスを崩しやすくなっています。
では、このような方が安定して座るためにはどうすればいいのでしょうか?
その① 座位を安定させるために
まず、座位を安定させるにはどうすればいいのかということですが、高齢者や障害を持っている方は骨盤が後ろに倒れて背中が曲がることよって前屈みの姿勢になりやすくなっています。
このような姿勢をとり続けていると円背を助長することになり、身体の様々な機能に悪影響を及ぼします。
このため、上記のような方で座っている時間が長時間になるような方に対しては適切な座位姿勢をとることができるように椅子や車椅子に対する工夫が必要になってきます。
その② シーティングについて
先程の項目で、高齢者や障害を持った方で座っている時間が長時間になる方に対しては適切な座位姿勢をとることができるように椅子や車椅子に対する工夫が必要になると申しあげましたが、このことをシーティングと呼びます。
シーティングとは、椅子や車椅子を利用して生活を行う人に対して、それらの機器の選定・調整・マネジメントなどを行うことです。
機器の利用者の適切な座位姿勢を実現することによって心身機能の改善を促したり、二次的な障害を予防したりすることを目的としており、主にクッションや市販のベルトなどを利用することによって座位姿勢を安定させます。
このシーティングを行うことによって座位姿勢が安定することの他に、座り心地がよくなったり、お尻や腰の痛みを緩和することができたり、床ずれを予防することができたりといった様々な効果を期待することができます。
その③ 椅子の選び方について
介護の現場にて使用する椅子は主に「リビングなどで使用する椅子」「お風呂場で使用する椅子」「玄関で使用する椅子」の3つに分けることができますが、それぞれ選び方が異なってきます。
[リビングなどで使用する椅子の選び方]
リビングなどで使用する椅子というのは、食事をしたり、くつろいだりする際に使用することになります。
このため、快適な姿勢を保つことができる椅子を選ぶ必要があるため、座面を自分の体格や身長に合わせることができるものや背もたれの角度を調整することができるリクライニング機能が付いたもの、また、立ち上がりの動作がつらいという方なら立ち上がりの動作をサポートしてくれる機能の付いたものなどを選択するといいでしょう。
[お風呂場で使用する椅子の選び方]
お風呂場というのは様々な要因で滑りやすくなっており、転倒の危険が非常に高い場所となっています。
このため、お風呂場で使用する椅子というのは転倒を防止するための肘掛けが付いているもの、座位姿勢を安定させるための背もたれが付いているものなどを選ぶ必要があります。
これらの椅子があることで、足の力が弱っている方などでも安心して身体を洗うことが可能になります。
[玄関で使用する椅子の選び方]
玄関で使用する椅子ですが、これは玄関で靴を履いたり脱いだりする際に腰掛けて使用するものとなります。
玄関ということで介護用の椅子を置くスペースがないという方も多いと思いますが、介護用の椅子には折りたたみが可能になっているものもありますので、そちらを選択することによって、利用者が靴を履いたり脱いだりする動作を楽に行うことが可能になります。
椅子からの立たせ方
在宅での介護を行っていると要介護者を椅子から立ち上がらせることを頻繁に行うことになりますが、介助を行っている側のタイミングで要介護者を立ち上がらせようとすると、要介護者は自分のタイミングとは違うため戸惑うことになりうまく立ち上がることができません。
また、両者のタイミングがずれることによって介助を行っている方の身体に負担がかかることになり、腕・腰・背中などを痛めてしまう可能性が出てきます。
では、どうすればいいのかということですが、お互いの呼吸を合わせて反動をつけることによって効率よく要介護者を椅子から立ち上がらせることが可能になります。
簡単に言うと起き上がりこぼしのような体重移動を行うということですが、以下のような手順で行います。
①まず、要介護者の後ろに回り、脇から手を入れて身体を起き上がりこぼしのように身体を前後に揺すります。
②身体を揺すりながらお互いの呼吸を合わせて、「せーの!」や「いち、にの、さん!」などのかけ声と共に反動を利用して椅子から起き上がらせます。
椅子への座らせ方・介助方法
先程の項目では要介護者を椅子から立ち上がらせる方法について解説してきましたが、要介護者に対して不快感を与えずに椅子に座らせるということも非常に難しく、無理に座らせようとすると要介護者だけではなく介護を行っている方の身体にも余計な負担がかかることになります。
ですが、以下のような方法を行うことによって要介護者と介助を行う方の両方とも身体に余計な負担を掛けることなく、椅子に座らせることが可能になります。
①介助を行う方は要介護者の右脇に自分の頭を入れ、その状態で右腕を相手の左脇に入れて肘の角度を90度に曲げます。
②介助を行う方はフリーになっている左手の甲を相手のおなかに当てます。なぜ、おなかに当てるのは手の甲なのかということですが、これは手のひらを当てるのとは違い手の甲を当てることによって相手が感じる不快感を軽減することが可能になるからです。
③相手のおなかに当てている左腕を軸として、要介護者の身体をたたむ感じで自分がしゃがみ込めば相手を自然と座らせることが可能になります。
要介護者を座らせる際に重要なのはあくまで自然な感じで座らせるということであり、絶対に無理矢理座らせるようなことはしてはいけません。
無理矢理座らせようとするとそれだけ両者の身体に負担がかかることになりますので注意してください。
まとめ
ここまで在宅介護の基本である椅子からの立たせ方や座らせ方について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように人は日常動作おいて必ず「座る」「立ち上がる」という動作を行いますが、高齢者や障害を持っているという方などは自分で座る又は立ち上がるということが難しくなっており、誰かの介助が必要不可欠となっています。
しかし、この介助もただ座らせればいい、立ち上がらせればいいというものではなく、適切な方法で行わないとお互いに身体を痛めてしまうことになりますので、この記事を参考にして介助を行うようにしてみてください。
また、日常生活を送る上で欠かすことができない「座る」という動作にかかわる福祉用具として介護用の椅子というものがあります。
これにはリビング用、浴室用、玄関用といった様々なものがありますので、是非利用するシーン似合わせたものを選んで見てください。
介護用の椅子を利用することによって要介護者の日常生活に関する意欲が上昇する上、介護を行っている方の介護による負担を軽減することも可能になっています。