この記事では介護現場で活用することができる椅子を利用したリハビリ体操について解説しています。
介護保険サービスの1つであるデイサービスなどでは集団体操としてリハビリ体操というものが行われることがあります。
このリハビリ体操ですが、高齢者が介護が必要な状態になるのを防ぐために行われる体操ですが、高齢者によって身体状況が異なってくるため、なかなか体操の提案を行うことが難しくなると思います。
ここでは椅子に座ったままで行うことができるリハビリ体操について解説していきますので、興味のある方は是非ご覧ください。
介護現場でのリハビリの必要性
人は歳をとると運動機能が低下して自立した生活を行うことが難しくなってきます。
このため、様々な介護現場ではリハビリの提供が行われています。
老人ホームなどでは生活リハビリというものが提供されていますが、この生活リハビリとは高齢者が寝たきり状態にならずに自立した生活を送ることができるようにすることを目的として提供されるもので、日常生活で必要となってくる様々な動作を問題なく行うことができるようにするリハビリのことをいいます。
リハビリとは基本的に要介護者に「やってもらう」というものではなく、要介護者が「自分からする」ということが非常に大切になってきます。
「どこかへ行きたい」「何かをしたい」という目的を持ってリハビリを行うことで、身体の機能が改善するだけではなく、生き甲斐のようなものが生まれてくるからです。
こうなるとリハビリを行うことによって「生きたいところへいける」「自分のしたいことができる」、だから自分はリハビリをするのだというサイクルが生まれます。
このサイクルが生まれるとリハビリによって身体だけではなく心も健全化することが期待できるため、介護現場においてリハビリは大きな意味を持っているといえます。
椅子を利用したリハビリ体操
リハビリ体操とは、高齢化による身体機能の低下を予防するだけではなく、障害や何かの疾患を持っているという方が要介護状態になることを防いだり、その進行速度を遅らせたりするために行う運動のことをいいます。
ただ、高齢者は高齢化によって身体機能が低下している可能性があり、日々運動などを行っていない方に関してリハビリ体操の提案を行うと転倒などのリスクが高まりますので、安全への配慮は十分行う必要があります。
ここでは運動習慣のない方などでも比較的簡単に、そして安全に行うことができる「椅子を利用したリハビリ体操」についていくつか紹介していきます。
その① 首のストレッチ
まずは首のストレッチです。
このリハビリ体操は高齢者の方が安全に取り組める基本的なものとなっています。
方法はいたって簡単で、椅子に座りながら頭部を大きく回すといったもので、食前に行うことがベストとされています。
時計回りに3回・反時計回りに3回程度が推奨される回数となっています。
ただ、頸椎症といった整形疾患をお持ちの方は、このストレッチは危険となりますので行ってはいけません。
その② 足首の体操
こちらのリハビリ体操は椅子に座ったまま行うことができる足首のストレッチです。歳をとると足首の動きが固くなることによって歩いている際にバランスを保つことが難しくなってきます。
このため、足首のストレッチによって柔軟性を高める必要があります。
方法としては椅子に座りながら足首を大きく回すという簡単なもので、静脈環流を増加させることができるので繊維素溶解作用や高凝固作用などを促進させることが可能になっています。
1時間に両足で10回ずつが推奨される回数とされており、続けやすいものとなっています。
その③ 太ももの運動
こちらもとても簡単なもので、椅子に座りながらその場で足踏みをするというものとなっており、歩行の際に重要になってくる股関節周辺の筋肉や腸腰筋といった部分のトレービングになります。
足踏み運動は大腸への刺激を与えることが可能になっているため、日頃歩くことが少ない高齢者だけではなく、便秘の高齢者にもおすすめできる運動となっています。
30回程度が推奨回数とされており、運動を行う際は可能な範囲で背筋を伸ばして、手足をテンポよく動かすことが重要となっています。
その④ 腰のストレッチ
続いては腰のストレッチです。方法としては椅子に座り、背筋を伸ばした状態で腰に手を当て、この状態で大きく息を吐いてお尻を後方へ突き出し、続いて大きく息を吸ってお腹(おへそ)を前方へ突き出すというものです。
このストレッチは両方の腰方形筋や脊柱起立筋といった姿勢保持筋を鍛えることができる骨盤前後傾運動であり、腰痛の予防の他、尿や便の失禁を予防するといった効果を期待することができます。
前後10回以上で、1往復5~6回が推奨回数とされており、運動を行う際には胸を張って背中を伸ばすことを意識して背中を丸めたり頭を下げた状態にならないように注意する必要があります。
また、腰に痛みなどがある方は無理をしますと悪化する可能性がありますので、無理をしすぎないようにしましょう。
また、椅子に座った状態で両手を頭の後ろで組んで、身体を横に倒すというストレッチ方法もありますが、こちらは左右10回程度が推奨回数とされ、腰や肩に痛みがある方は無理をしますと悪化する可能性がありますので、無理をしすぎないようにしましょう。
その⑤ 肩のストレッチ
次は肩のストレッチです。肩は普段動かす頻度が少ないため、動かさない筋肉が固まることによって肩を動かす度に痛みが生じることが出てきます。
このため、肩の筋肉である三角筋を狙ったストレッチを行う必要があります。
方法としては、椅子に座った状態で片腕を胸の前に持ち上げて、もう一方の手で支えて伸ばす側の腕をしっかりと伸ばすというものです。
腕を伸ばした状態を5秒程度キープし、それを左右で3セット行うと良いとされています。
その⑥ 椅子からの立ち上がり
最後に椅子からの立ち上がりのリハビリ体操を2つ紹介します。
まず1つめですが、椅子に座り膝の頭に手を置き、腕の力を利用してお尻を持ち上げ、ゆっくりと立ち上がるというものです。
こちらは立ち上がりが困難である高齢者や下肢の筋力が低下している高齢者におすすめのストレッチであり、10回を2~3セットが推奨される回数となっています。
2つめのストレッチですが、椅子に座りながら頭上で両手を合わせ、両手を上げながらお尻を持ち上げ、ゆっくりと立ち上がるというものです。
立ち上がりが困難である高齢者に対して行われることが多く、椅子から立ち上がる際の体幹伸展を促すことが可能となっています。
10回程度が推奨回数とされており、重心をつま先にかけることを意識しながら行うことが重要です。
ただ、膝や腰に痛みなどがある方は無理をするとそれらの症状が悪化することがありますので注意してください。
まとめ
ここまで介護現場で活用することができる椅子を利用したリハビリ体操について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたようにリハビリ体操には、日頃運動を行っていない方でも比較的安全に行うことができる椅子に座って行うことができるものもあります。
リハビリとは介護の現場において大きな意味を持っており、目的を持ってリハビリを行うことで身体の機能が改善するだけではなく、生き甲斐のようなものが生まれて心身ともに健全化することが可能になっています。
ただ、日頃運動を行っていなかった方などは、あまり無理すると筋疲労によって倦怠感や発熱などが起こる場合がありますので、リハビリになれるまではリハビリの回数や頻度は少なめにしておくようにしましょう。