歩くのが大変になって車椅子を使用しなければならなくなった際、今までの生活を見直すことになりますが、ここで課題となってくるのが日々の起居動作です。昔ながらの日本家屋はまだまだ多いので、畳の上で生活してる方が多いでしょう。
そうなると、車椅子から床に移るときには介助が必要になります。今回は、要介護者にとっても介護者にとっても安心・安全な介助の方法について解説していきます。
車椅子から床へ移る介護手順
では、車椅子から床に移る際にはどのように介助したらよいのでしょうか。力づくの介助では介護を受ける方も怖さを感じることがあるでしょうし、介助者にとっても無理な体勢になりますので腰痛の原因になってしまいます。
ここでは介助のポイント毎に説明していきます。
相手の膝裏へ自分の膝を入れる
まずは車椅子に座った状態の方の脇に立ち、片方の膝をついた状態になりましょう。
要介護者に対し内側の膝をつく形です。
その後、要介護者の両膝の裏に自分の片膝を差し入れます。
こうすると要介護者の大腿部が上がるので、自然と腰を動かしやすい状態になります。
身体を抱える
次に、介護者の右手を要介護者の左腋の下に差し入れて骨盤全体を支えるイメージで臀部を支えます。
介護者の左手は相手の右腋から肩甲骨付近に当てて支えます。
ここでは手の力だけで介助するのではなく、膝を差し入れていることで要介護者と体を密着させ、自分の全身の動きを効率よく伝えるんだという点を意識して行ってください。
座面からゆっくり離す
いよいよ、体を動かす段階に入ります。体を前方に倒すことを相手に説明し、同意を得て協力してもらいます。
声をかけたら肩甲骨に当てている状態の左手を使い、本人からも協力してもらいながら要介護者の上半身を前傾させていきます。
そうすると、自然と臀部が車椅子の座面から離れ、相手は介助者の膝の上に乗っている状態になります。
臀部を抱えて床に降ろす
要介護者を膝に乗せたまま、つま先を左右に少しずつ動かしながら車椅子から離すように移動させていきます。
介助者自身の足を椅子代わりにしてずらしていくイメージです。
臀部を回転させて床に安定させる
次に、介助者自身の床についている方の膝を支点として内側に倒していきます。
そうすると自然と体が回転するので、無理なくずらすように要介護者の体を床に降ろしていくことができます。
姿勢を整える
完全に要介護者の体が床についたら姿勢を整えて完了です。
車椅子から床に移る介助の留意点
上記では具体的な動作と共に説明していきましたが、この際に気を付けるべきポイントを確認していきましょう。
ボディメカニクスを意識する
ボディメカニクスとは、骨・筋肉・関節の動きの相互関係の総称、あるいは力学的相互関係を活用した技術のことを言います。
例えば、野球選手やゴルファーがボールを打つ時の動きをよく観察してみて下さい。足→腰→腕という順番で体が回転していることに気づくと思います。
こうすることで効率よく力をボールに伝えているのです。
このような人体の仕組みを有効活用することで、より小さい力で大きな効果を生み、介助者にとっても要介護者にとっても安楽な介護を目指すことができるのです。
安全への配慮を忘れない
ただ、今回説明した介護方法は慣れないと無理な体勢になってしまい、かえって体に負担がかかります。また、自分の膝から要介護者が滑り落ちてしまい怪我をさせてしまう可能性もあります。実際に介助に活用する際は健常者から協力してもらい練習してから臨むなど、慣れておくとよいでしょう。
自分の腰痛にならないように
要介護者が安全に移乗できるようにすることが第一ですが、もちろん介助者自身の身も守る介護方法を取らなければなりません。
無理な体勢で介護したり、ボディメカニクスを意識せず行ってしまうと力づくの介護方法になってしまい、腰痛の原因となってしまいますので注意して下さい。
まとめ
介護者にとって楽な方法で行われる介助は、すなわち要介護者にとっても安心・安楽な介助であるとも言えます。
ボディメカニクスを意識した介助を行うことにより、怪我の防止ができるだけでなく、不安感や不快感を与えなくて済みますので、良好な人間関係を維持することにもつながっていきます。
場面ごとに応じた安心・安全な方法を学び、お互いに楽な介護を目指していくことが結果的に生活の質全体を維持向上していくことにもなりますので、ぜひ有効活用してみてくださいね。
参考出展及び画像引用:https://www.elavel-club.com/lifespecial/kaigo/kaigocolumn23.html