この記事では生活保護を受給している方が介護保険サービスを受ける方法について、また、介護券の役割についても解説しています。
日本では生活保護の受給者が増加してきており大きな社会問題となっています。
ここで気になってくるのが生活保護と介護保険の関係なのですが、実は生活保護を受給している方も介護保険サービス利用することは可能になっているのです。
では、どうすれば介護保険サービスを利用することができるのでしょうか?
ここでは生活保護を受給している方が介護保険サービスを受ける方法について、また、介護券の役割についても解説していきますので、生活保護を受給しているが、介護保険サービスを利用したいと考えている方は是非この記事を参考にしてみてください。
生活保護を受けていても介護保険の対象になる
そもそも生活保護を受給している方は介護保険の対象になるのかということですが、これは被保険者の年齢によって異なってきます。
ただ、結論から言いますと生活保護を受給している方でも介護保険サービスを利用することは可能になっています。
ここでは第一号被保険者と第二号被保険者に分けて、生活保護受給者の介護保険について解説していきます。
①第一号被保険者の場合
介護保険制度では65歳を迎えると第一号被保険者になりますが、これは生活保護を受給しているか否かにかかわらず全ての国民がそうなると定められています。
このため、生活保護を受給していても介護保険が適用されることになり、介護が必要な場合は他の第一号被保険者と同様に1割負担で介護保険サービスを利用することが可能になります。
この際の1割負担の費用ですが、この自己負担分は生活保護費の中の「介護扶助」からまかなわれることになっています。
ただ、65歳以上になると生活保護受給者といえども介護保険料を支払わなければならなくなります。
基本的に通常の第一号被保険者の場合は、年金からの天引きというかたちで介護保険料を支払うことになりますが、生活保護受給者の場合は、生活保護費の中の「生活扶助」によって介護保険料がまかなわれています。
65歳以上の生活保護受給者の介護保険料は支給される生活保護費に加算され、福祉事務所から市町村へ代理納付されることによって介護保険料が支払われています。
介護扶助は現物給付(サービスの提供)が原則ですので、生活保護受給者に渡る生活保護費が増えるということはありません。
②第二号被保険者の場合
日本国民は40歳になると自動的に加入することになり、第二号被保険者となります。
ただ、生活保護受給者の方はこの第二号被保険者になることはできません。
第二号被保険者は介護保険料を加入している医療保険の保険料に上乗せするかたちで支払うことになっており、第二号被保険者となることができるのは40歳~64歳までで医療保険に加入している方ということになります。
このため、医療保険に加入することができない生活保護受給者は介護保険の第二号被保険者にはなれないということです。
では、生活保護を受給している40歳~64歳までの方は介護保険サービスを利用することができないのかというとそうではありません。
これらの方は介護保険の被保険者とはなれませんが、介護が必要になった際には第二号被保険者とみなして介護保険の認定審査を行うことになっており、これを「みなし二号」といいます。
みなし二号の方は介護保険の認定審査によって「要支援1以上」と判定されると、通常の第二号被保険者と同じように介護保険サービスを利用することが可能になります。
また、介護保険サービスを利用する際にかかる費用については生活保護を受給している第一号被保険者の方と同様に生活保護費の「介護扶助」によって全額まかなわれることになっています。
ただ、みなし二号の方も通常の第二号被保険者の方と同じように介護保険サービスを利用するためには条件があります。
第一号被保険者の方は介護保険サービスを利用したいと思ったら申請することによって利用が可能になりますが、第二号被保険者及びみなし二号の方は以下に記載する特定疾病であると認められなければ利用することができません。
[特定疾病一覧]
1.がん(がん末期)
2.関節リウマチ
3.筋萎縮性側索硬化症
4.後縦靭帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8.脊髄小脳変性症
9.脊柱管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
生活保護の介護扶助について
介護保険制度では、介護保険の被保険者で生活保護を受給している方が介護保険サービスを利用した際の自己負担1割分は、生活保護法によって生活保護費の介護扶助によってまかなわれ、40歳~64歳までの医療保険未加入である生活保護受給者が介護保険サービスを利用した際にかかる費用(10割)も介護扶助によってまかなわれることになっています。
ここではその介護扶助について解説していきます。
その① 介護扶助の手続き
介護保険サービスを利用するためには要介護認定を受ける必要がありますが、要介護認定の申請はお住まいの市町村によって手続きの仕方が異なる場合がありますが、介護扶助の手続きに関してもお住まいの市町村によって手続きの方法が異なってくる場合があります。
ただ、介護扶助は被保険者からの申請に基づいて決定されるものなので、介護扶助を受けたいと考えている方は、たとえ介護保険の被保険者であったとしてもお住まいの地域を所管している福祉事務所に介護扶助の申請を行う必要があります。
また、要介護認定を受けていないという方は、まず要介護認定の申請を行うようにしましょう。
その② 介護扶助の申請に必要な書類
その①でも申し上げたように介護扶助の申請の手続きがお住まいの地域によって異なってくるように介護扶助の申請に必要になってくる書類も異なってくる場合があります。
ただ、概ね以下のような書類が必要になってきます。
- ケアプラン
- 介護保険被保険者証(写しでも可)
- サービス利用票
- サービス利用票別票
- 同意書2枚(福祉事務所から被保険者の情報をケアマネージャーに提供するために必要)
その③ 認定から介護扶助申請までの流れ
要介護認定から介護扶助申請までの流れですが以下のようになっています。
①要介護認定の申請を行う
②要介護認定の結果と介護保険被保険者証が届く
③ケアマネージャーと契約し、ケアプランを作成してもらう
④サービス担当者会議が開かれる
⑤利用票(被保険者の氏名、事業所名、利用するサービスの概要などが記載されているもの)に同意を得る
⑥介護扶助の申請を行う
簡単になりましたが、要介護認定から介護扶助申請までの流れですがこのような感じになっています。
介護扶助の申請を受け付けた福祉事務所は介護扶助を受けるにあたるかの審査を行います。
その④ 介護券の役割について
福祉事務所などでは介護扶助の申請を受理した場合、要介護認定の結果とケアプランに基づいて介護扶助の給付を決定し、指定の介護機関に対して介護券を送付します。
この介護券には介護扶助対象者の氏名、公費の負担割合、本人支払額、有効期間といったものが記載されており、福祉事務所が介護扶助の委託を決定したという証明となるものです。
まとめ
ここまで生活保護を受給している方が介護保険サービスを受ける方法について、また、介護券の役割について解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
解説してきたように介護保険サービスは生活保護を受給している方でも利用することが可能になっており、介護保険サービスを利用する際にかかってくる費用は生活保護費の「介護扶助」というものでまかなわれることになっています。
介護扶助を受ける為には申請を行う必要がありますので、忘れずに行うようにしましょう。
ただ、介護扶助には介護保険被保険者証のような証明書が存在していません。
このため、毎月ケアマネージャーのもとに届く介護券が介護扶助を受ける資格を持っていることの証明となるものとなりますので、給付管理後も捨てずに保存しておくようにしましょう。