介護保険制度は65歳以上であれば、要介護度認定を受けたのちにサービスを利用することができます。
そして、ALSは介護保険制度の特定疾病のひとつであるため、40歳~64歳までの人でも使うことができます。ALSと介護保険の利用について説明します。
介護保険の特定疾病とは一体なに?
介護保険制度は65歳以上の高齢者のことを第1号被保険者とよび、様々な介護サービスを受けることができる制度です。
介護サービスは1~3割の自己負担で支払い、残りを40歳以上の人が支払う介護保険料と税金で賄っています。
そして40歳から64歳までの人のことを第2号被保険者といいます。この第2号被保険者は通常であれば介護保険のサービスを実際に使うことができません。
しかし、介護保険制度が定める特定疾病と診断を受ければ、介護保険サービスを利用することができます。
[16種類の特定疾病]
1.がん(がん末期)
2.関節リウマチ
3.筋萎縮性側索硬化症
4.後縦靭帯骨化症
5.骨折を伴う骨粗鬆症
6.初老期における認知症
7.進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8.脊髄小脳変性症
9.脊柱管狭窄症
10.早老症
11.多系統萎縮症
12.糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13.脳血管疾患
14.閉塞性動脈硬化症
15.慢性閉塞性肺疾患
16.両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
【特定疾病の選定基準の考え方】
特定疾病とは、心身の病的加齢現象との医学的関係があると考えられる疾病であって次のいずれの要件をも満たすものについて総合的に勘案し、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因し要介護状態の原因である心身の障害を生じさせると認められる疾病である。
1)65歳以上の高齢者に多く発生しているが、40歳以上65歳未満の年齢層においても発生が認められる等、罹患率や有病率(類似の指標を含む。)等について加齢との関係が認められる疾病であって、その医学的概念を明確に定義できるもの。
2)3~6ヶ月以上継続して要介護状態又は要支援状態となる割合が高いと考えられる疾病。
ALSとはどんな病気か(参考:JALSA)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、身体を動かすための神経系(運動ニューロン)が変性する病気です。
ALSは進行性の病気で、今のところ原因が分かっていないため、有効な治療法がほとんどない予後不良の疾患と考えられています。
ALSは筋肉自身の病気ではなく、手足の細かい神経の病気でもありません。
主に脊髄と脳の運動神経が変性し、脱落するために起こるものです。
一般的には、はじめに手足が動きにくくなるタイプと、しゃべったり飲み込んだりという、口の中が先に動かなくなるタイプとがあります。最終的には手足と口の両方に障害が進みます。
症状の典型的なパターンとしては、どちらかの足の力がだんだん弱くなってきて、反対側の足に広がり、次に手の力がなくなってくるというものと、手から始まって徐々に足に広がるものがあります。
しかも手足では、からだから遠い部位の筋肉の力がまず弱くなってきて痩せて来ます。
そして、そのうちに食物を飲み込みにくくなってくる、しゃべりにくくなってくる、という症状が出てきて、からだ全体の筋肉の力が2~4年くらいで弱くなるために息苦しさを感じるようになります。
さらに進行すると、呼吸が困難になり、人工呼吸器をつけるというのが一般的な経過です。また、手足の力がなくなるのと同時くらいに言語障害、飲み込みが悪くなるという場合もあります。
ALSは全身が動きにくくなる病気ですが、出にくい症状というものが6つほどあります。
そのうち4つを4大陰性徴候といいます。筋肉の問題では、手足やからだ・顔が全く動かなくなっても目を動かす筋肉が最終的にある程度は残ることが挙げられます。
また、尿道や肛門をキュッと締める括約筋も筋肉ですが障害は受けにくいのです。すなわち尿や便が勝手にもれて、垂れ流しにはなりにくいということです。
動き以外では、知覚障害・感覚障害が起こりにくいことが挙げられます。すなわち見たり聴いたり、あるいは冷たさや痛さなどを感じる感覚は最後まで残ります。
ですから自分では動けないけれども全て周囲の状況が分かってしまうということで精神的なストレスは大きくなります。
ただ、徐々に寝たきりになって行きますが、いわゆる“床ずれ”が出来にくいという特徴もあります。
ALSの推定人数は、今のところ日本で大体6,000名から7,000名くらい、難病登録をしている患者さんの数は、平成16年度末のデータでは7,000名くらいと言われています。発症年齢は平均59歳、男性の方が1.5倍くらいの割りで多いという統計が出ています。
特定疾病となるALSの診断基準
筋委縮性側索硬化症(ALS)は以下の基準を満たした場合に特定疾病として認められます。
成人発症であること
進行性であること
体の部位を、脳神経領域、頸部・上肢領域、体幹領域、腰部・下肢領域の4つに分けたとき、ひとつ以上の領域に「上位運動ニューロン兆候」、2つ以上の領域に「下位運動ニューロン症候」と呼ばれる症状がみられる場合、または、家族性筋萎縮性側索硬化症に関わる遺伝子異常があって、ひとつ以上の領域に「上位および下位運動ニューロン徴候」という症状がみられる場合
介護保険サービスの利用までの流れ
特定疾病と認められた場合、介護保険サービスを利用するためには要介護度認定を受ける必要があります。
地域包括支援センターに相談
要介護認定の申請は市区町村の窓口で申請を受け付けています。
個人で申請を行うこともできますし、お住いの地域を担当している地域包括支援センターで代行してもらうこともできます。
申請には主治医の意見書などの書類を合わせて提出します。
4要介護認定を受ける
要介護認定の申請を行うと、市区町村の認定調査が行われます。
認定調査は担当者が直接本人と面会し、現在の生活の状況についての聞き取り調査を行います。
この調査は全国一律の基準で診断され、主治医の意見書と合わせて一次判定が行われます。
その後、一次判定の結果を基に、医師や有識者による要介護度判定審査会により要介護度が決まります。
要介護度は8段階あり、介護の必要な度合いが低い順に、非該当(自立)、要支援1・2、要介護1~5にわかれています。認定された介護度によって受けられる介護サービスの条件が定められています。
ケアマネージャーとケアプランの相談
要介護度が認定されたら、ケアマネージャー(居宅介護支援専門員)に必要な介護サービスを組み立ててもらいます。
これをケアプラン(居宅介護計画)といい、ケアマネージャーが利用者やその家族の意向に合わせて、必要なサービスを組み合わせていきます。
特定疾病の利用者であれば、医療保険サービスなどの介護保険外のサービスとの調整も必要となってきますから、生活に対する意向などをしっかりと伝えておきましょう。
利用できる介護保険サービス
介護保険サービスは、自宅を中心に受けるサービスと、施設に入所して受けるサービスに大分別されます。
【居宅サービス】
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリテーション(デイケア)
【訪問サービス】
- 訪問介護(ホームヘルプサービス)
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導
【地域密着型サービス】
- 夜間対応型訪問介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
【短期入所サービス】
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
【施設サービス】
- 指定介護老人施設(特養)
- 介護老人保健施設
- 指定介護療養型医療施設
【そのほか】
- 特定施設入居者生活介護
- 特定福祉用具販売
- 福祉用具貸与
気になる介護保険の負担割合は?
介護保険サービスを利用した場合の利用料(利用者負担)はかかった費用に対して1割(一定以上の所得者は2割又は3割)です。1万円分のサービスを利用した場合の負担は千円となります。
また、介護度ごとに定められたサービス量を超えた場合には全額自己負担として10割分を支払うことになります。
介護保険サービス以外にかかる費用としては、サービス事業によって食費やおむつ代などの日常生活費などがかかることがあります。
まとめ
特定疾病の方の支援には、素人にはわかりにくい部分もたくさんあります。
医療ソーシャルやケアマネージャーのサポートを受け、安心して生活できるように整えていきたいですね。