40歳から徴収が始まる「介護保険料」ですが、加入している医療保険や年齢によって、「介護保険料」の計算方法が大きく異なります。
本人の意思に関係なく、「介護保険料」の徴収は始まりますので、どのようにして「介護保険料」が決まっているかを確認しておきたいところです。
今回は「介護保険料」の計算方法について、解説していきます。
介護保険の財源について
「介護保険料」の計算方法を紹介する前に導入として、介護保険の財源がどのように成り立っているのかを解説していきます。
介護保険の財源(必要な金銭の出所)は、50%が40歳以上の被保険者から徴収した「保険料」で、残りの50%「公費」となっています。
「公費」とは国や公共団体が負担する費用のことで、「公費」の内訳は国が25%、都道府県が12.5%、市区町村によって12.5%となっています。
40歳以上被保険者からの保険料(50%)
国(25%)
都道府県(12.5%)
市区町村(12.5%)
なお「公費」の負担割合について、自治体よって先ほど紹介した比率とは異なる場合がありますので、気になる方は住んでいる自治体のホームページや、「介護保険料」を担当している課に確認するとよいでしょう。
介護保険料の使い道や決め方について
介護保険の財源が確認できたところで、次は「介護保険料」の使い道と決め方について紹介していきます。
介護保険料の使い道
「介護保険料」は、市区町村から介護が必要な状態であるという認定(要介護または要支援認定)が下りた場合に、介護サービスにかかる費用の一部を負担するのに使わています。
要介護または要支援認定が下りた場合、収入状況から1割から3割負担で、介護サービスで発生した費用を支払うことになります。
例えばデイサービスの1カ月に発生した費用が10,000円だった場合、1割負担の方であれば1,000円を支払うことになります。
残りの9,000円については、「介護保険料」から事業所に支払われます。
介護保険料の決め方
気になる「介護保険料」の決め方ですが、まず加入している年齢によって異なります。
具体的には65歳以上の方であれば「第1号被保険者」と呼ばれ、加入している医療保険に関わりなく、独自の「介護保険料」の決め方が定められています。
また「介護保険料」の徴収が始まる40歳から65歳未満の方は「第2号被保険者」と呼ばれ、「第2号被保険者」の方は加入している医療保険が「国民健康保険」かそうでないかで、「介護保険料」の決め方が変わります。
詳しくは介護保険料の計算方法と共に、次の項目で解説していきます。
介護保険料の計算方法
前項目で加入している医療保険が「国民健康保険」かそうでないか、また65歳以上であるかなどが、「介護保険料」の計算方法を決定づける要素を紹介していきました。
具体的な「介護保険料」の計算方法は以下の通りです。
その① 【第2号被保険者】国民健康保険以外 医療保険の場合
40歳以上65歳未満の方が該当する「第2号被保険者」のうち、まずは「国民健康保険」以外の医療保険に加入している方の、計算方法について解説していきます。
「国民健康保険」以外の医療保険とは、中小企業に務めている方が加入することになる「協会けんぽ」や、大企業に勤務している方が加入する「健康保険組合」、公務員や私立学校の教職員の方が加入する「共済組合保険」などの医療保険が該当します。
さて「介護保険料」の計算方法ですが月々に発生する給与と、賞与(ボーナス)では異なったものとなっています。
給与に関してですが、「標準報酬額×介護保険料率」で「介護保険料」が算出されます。
「標準報酬額」は通勤代や残業代を含んだ月々の給与を、区切りよい幅で50等級に分別したものです。
「介護保険料率」は加入している医療保険によって異なる割合となっています。
一方で賞与に関しては、発生した賞与から1,000円未満を切り捨てた「標準賞与額」に「介護保険料率」を掛けて算出されます。
ここでの「介護保険料率」は、給与から徴収される「介護保険料」を算出したときと同じ数値になります。
給与、賞与ともに算出された「介護保険料」のうち、半分は勤め先が負担してくれることになっています。
最後に「第2号被保険者」の方で「国民健康保険」以外の医療保険に加入している方の、「介護保険料」の計算方法の事例を紹介しておきます。
【第2号被保険者】国民健康保険以外 医療保険の場合の事例
- 被保険者:中小企業に勤めているAさん
- 加入医療保険:協会けんぽ(介護保険料率:1.57%)
- 標準報酬額:19,800円
- 賞与:200,000円
- 介護保険料:17,254円(月額)
※月々の給与から算定
※算出手順
19,800円×1.57%=3,108円(給与から徴収される「介護保険料」)
200,000円×1.57%=31,400円(賞与から徴収される「介護保険料」)
(3,108円+31,400円)÷2=17,254円(Aさんが負担する「介護保険料」)
その②【第2号被保険者】 国民健康保険のケース
40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」のうち、「国民健康保険」に加入している方は市区町村ごとに算出方法が異なる「所得割」、「均等割」、「平等割」、「資産割」を組み合わせものとなっています。
「介護保険料」を算出するためのそれぞれの要素ですが、「所得割」は世帯ごとに被保険者の前年の所得に応じて算出されます。
「均等割」は被保険者の人数に応じて課され、「平等割」は一世帯ごとに課されます。
「資産割」は所有する土地や家屋などの資産に応じて課される要素となります。
それぞれの要素について、先ほど紹介したように算出方法が市区町村によって異なるため、気なる方は市区町村の「介護保険料」を担当している課に確認するとよいでしょう。
前項目と同じように、「第2号被保険者」の方で「国民健康保険」に加入している方の事例を紹介しておきます。
【第2号被保険者】国民健康保険の場合の事例
- 被保険者:30代Bさんの1人世帯
- 加入医療保険:国民健康保険
- 所得割:150,000円(所得に応じて算出)
- 介護保険料:187,800円(年額)
均等割:20,400円×1人(国民健康保険に加入している人数に応じて算出)
平等割:17,400円(1世帯ごとに算出)
資産割:0円
※算出手順
150,000円+20,400円+17,400円=187,800円(年額)
その③ 【第1号被保険者】
加入している医療保険に関わらず、65歳以上になると「第1号被保険者」となります。
「第1号被保険者」の「介護保険料」は、本人および世帯員が住民税が課税されているか、本人の前年度の収入状況はどのようになっているかなどを加味し、「介護保険料」の支払い段階が算出されます。
「介護保険料」の支払い段階については、市区町村によって異なります。
「第2号被保険者」で国民健康保険に加入している方の「介護保険料」を算出する場合と同じように、「第1号被保険者」の方も「介護保険料」について疑問に思うことがあったら、市区町村の「介護保険料」を担当している課に確認しましょう。
次に【第1号被保険者】の方の事例を紹介します。
【第1号被保険者】の事例
- 被保険者:70代のCさん(妻と2人暮らし)
- 住民税:本人、妻ともに非課税
- 収入状況:前年度、本人の課税年金収入額と合計所得金額の合計が80万円以上、120万円以下
- 介護保険料:46,200円
※算出手順
Cさんが住んでいる市区町村では住民税の課税状況、収入状況から、支払い区分が第2段階と判断されたため。
注:支払区分の条件は市区町村によって異なります。
まとめ
「介護保険」の財源や「介護保険料」の使い道、「介護保険料」の算出方法について解説してきました。
加入している医療保険や年齢によって、算出方法が異なることが確認できたのではないでしょうか。
「介護保険料」の算出方法についてまとめると
- 介護保険は40歳以上の方から徴収される「介護保険料」以外に国、都道府県、そして市区町村などの自治体が負担する「公費」を財源としている。
- 40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」の方は、医療保険が「国民健康保険」かそうでないかで、「介護保険料」の算出方法が異なる。
- 65歳以上の「第1号被保険者」の方は、加入している医療保険に関わらず、「介護保険料」の算出方法が市区町村によって定められた、支払い区分により決められる。
ということがあります。
収入状況だけでなく、住民税の課税状況が影響することもあり、「介護保険料」の計算方法はわかりにくいものとなっています。
「介護保険料」についてわからないことがあるときは、手間がかかりますが、市区町村の担当課に相談するのが近道となります。
将来、介護保険制度を利用する可能性がありますので他人事とせず、「介護保険料」について不明なことは確認するようにしましょう。