この記事では介護保険を利用した住宅改修における段差解消について解説しています。
歳を重ねると身体機能が衰えてくるため、わずかな段差でも躓きやすくなり、打ち所が悪いと大きな怪我につながる可能性も出てきます。
介護保険には住宅改修という高齢者や要介護者の自宅を住みやすい環境に整えるための介護保険サービスがあり、この住宅改修では住居内の様々な段差を解消するための工事を行うことも可能になっています。
ここでは介護保険を利用した住宅改修における段差解消について解説していきますので、段差の解消に興味のある方は是非この記事をご覧ください。
段差と転倒・転落の関係
人は歳を重ねるごとに筋力が低下を始めとする様々な要因が重なってバランスを保つことが難しくなってくるため、転倒の可能性が高くなってきます。
一般的に転倒を起こしやすい原因としてあげられるのは段差であり、身体機能が低下してバランスを保つことが難しくなっている高齢者の方などは、足を踏み外しやすい階段はもちろんですが、敷居やカーペットといったわずかな段差でも足を取られて転倒してしまうことがあります。
若い頃であれば、わずかな段差でつまずいて転んだくらいであれば大きな怪我になることも少なく、小さな怪我をしてしまっても少しの間安静にしておけば症状は改善することが多いです。
ただ、身体機能が低下している高齢者などはわずかな段差でつまずいただけでも大きな怪我になることも多い上、怪我をしたことによって過度に安静にしすぎると、小河かないことによって身体機能や筋力の低下を招くことになり、かえって症状が悪化してしまう原因にもなりまねません。
また、怪我をしなかったとしても転倒したことによって歩行に対する恐怖心を持ってしまったり、自信を失ってしまったりすることがあり、そうなってしまうと自分から身体を動かすことが激減してしまい、怪我をして安静にしている場合と同様に身体機能や筋力の低下を招くことになります。
このように転倒や転落は身体機能の低下した高齢者などにとっては今後の生活に大きな影響を与えるため、住居内の段差については十分に注意し、必要な対策を行うことが重要になってきます。
介護保険には住宅改修というものがあり、段差の解消については介護保険の給付対象となっていますので、基本的にこの住宅改修を利用して対策を行うことになります。
段差解消が必要とされる場所
先程の項目で解説したように、身体機能が低下している高齢者などはわずかな段差でもつまずきやすくなっています。
ここでは高齢者が転倒しやすい段差解消が必要な場所についてみていきます。
その① 玄関
まずは玄関です。玄関ホールと土間の段差というのは高齢者にとって大きな障害であり、非常に危険です。
古い日本家屋ではこの段差が非常に大きくなっている場合があるため、早急な対策を行う必要があります。
基本的に玄関における段差を解消するためには式台の設置工事を行うことになってくると思います。
ただ、玄関の段差解消において注意しておきたいのが、固定した式台の設置にかかる費用は住宅改修の対象となりますが、固定しない段差などは住宅改修の対象外ルということです。
また、段差解消機は「福祉用具貸与」という別の介護保険サービスの対象となります。
その② 駐車場
身体機能が低下している高齢者の場合、玄関から敷地内にある駐車場までの移動は様々な段差があるため転倒の危険が高まります。
住宅改修というと住宅の中だけしかリフォームすることができないと思っている方もいるかもしれませんが、本人にとって必要である生活上の動線であれば介護保険の給付対象となります。
このため、駐車場までに段差がある場合はスロープを設置したり、階段がある場合は階段の段数を増やして一段の高さを低くしたりすることが可能になっています。
ただ、あくまで住宅改修にてリフォームすることができるのは敷地内にある場合のみです。
その③ 敷居
敷居というのは襖や障子などの建具が動作するために鴨居と一緒に作られますが、高齢者はこの敷居にもつまずいてしまう可能性があるため、介護保険を利用した住宅改修によって段差を改修する必要があります。
ただ、これらの敷居は構造上の問題から簡単に取り外すことは難しくなっているため、すりつけ板と呼ばれる小さなスロープを設置する工事を行うことになります。
このすりつけ板ですが、敷居の段差に対して1/4~1/5の勾配が望ましいとされており、歩行の妨げにならないように両端にスライス加工という加工を施すことが多いです。
その④ ベランダ
ベランダへ出る窓が履き出し窓の場合は、履き出し窓とベランダには段差があることが多く、身体機能が低下している高齢者の方にとっては非常に危険な場所になります。
このため、高齢者の方が安全に利用することができるようにするために、ベランダと履き出し窓の段差を解消する必要があります。
この場合には、ベランダに履き出し窓との段差を解消するためのスノコなどを設置するような工事を行うことになります。
スノコの高さを履き出し窓のサッシに合わせることによって安全にベランダへ出入りすることができるようになります。
階段がある場合の住宅改修
階段がある場合の住宅改修についてですが、階段とは転倒・転落の可能性が非常に高い場所であり早急に改修を行う必要がありますが、介護保険の住宅改修においてはできることが限られています。
基本的に階段の段差を解消するための工事は、階段の段数を増やして一段の高さを低くして緩やかな階段にするものとなり、この工事に関しては住宅改修の対象となります。
しかし、この施行を行う際には階段の状況や家の構造を十分に考慮する必要があり、場合によっては施行を行うことができない場合があります。
ただ、住宅改修の対象となる工事は段差解消だけではありません。
階段の介護リフォームでは、手すりの取り付けや滑り防止・床材の貼り替えなどを行うこともできますので、段差解消と併せて利用することによって転倒・転落の防止効果を高めることが可能になります。
また、身体機能が低下している高齢者や車椅子を利用している方にとって階段に付いていると便利な「階段昇降機」というものもありますが、こちらは介護保険の給付対象ではありませんので、設置の際には自己負担にて行う必要があります。
どのような家でも取り付けることができるというものではありませんし高価なものとなりますが、介護を行っている方の介護による負担も軽減することができますので、検討する価値は十分にあるかと思います。
まとめ
ここまで介護保険を利用した住宅改修における段差解消について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように敷地内の段差を解消するための工事を行う場合には、住宅改修の対象となるため介護保険による給付を受けることが可能になっています。
身体機能が低下している高齢者や障害を持っている方などはわずかな段差であっても躓きやすくなっているため、この住宅改修を利用して段差を解消して高齢者が安心して過ごすことができるような環境を整えることが重要です。
ただ、この住宅改修ですが、20万円の利用上限額が定められています。
この20万円は基本的に一生涯で一度しか支給されませんので、その点に関しては注意しておく必要がありますが、一度に全額使い切る必要はなく、何度かに分けて利用することも可能になっていますので、数年後に要介護度が上がってしまった場合のことも考えながら使用したいですね。