この記事では介護保険を利用した住宅改修において、夫婦とも対象の場合に住宅改修にかかってくる費用はどうなるのかということについて解説しています。
介護保険サービスの1つである住宅改修では、介護保険を利用して住宅を高齢者に適した環境に整備することが可能になっています。
しかしここで疑問となるのが、住宅改修を行う自宅に夫婦で居住しており、その夫婦が両方とも同じ住宅改修(風呂やトイレ等)を必要としている場合には、その費用はどのようになるのかということです。
ここでは介護保険を利用した住宅改修において、夫婦とも対象の場合に住宅改修にかかってくる費用はどうなるのかということについて解説していきますので、夫婦で同じ住宅改修が必要であるという方などは是非この記事を参考にしてみてください。
住宅改修の支給限度額について
介護保険を利用した住宅改修は上限額が20万円となっていますが、20万円全て使えるのかというとそうではなく、20万円の中には自己負担分も含まれていますので、自己負担1割の方であれば住宅改修費の支給限度額は18万円となり、2割負担の方は16万円、3割負担の方は14万円となります。
仮に、自己負担割合1割の方が介護保険を利用した住宅改修を行い、その費用が10万円だったとします。
この場合は、利用者は10万円の1割である1万円が自己負担分となり、残りの9万円が介護保険から住宅改修費として支給されることになります。
上限額の20万円は1回で使い切らなければならないという決まりはありませんので、残った10万円は今後住宅改修が必要になった際に利用することができます。
しかし、住宅改修の費用が21万円だった場合は、支給限度額である18万円が介護保険から支給されることになり、残りの3万円については自己負担となります。
また、この20万円の上限額は一生涯に一度の支給となっているため、基本的に利用上限額の20万円を使い切ってしまうと再度支給されることはなく、それ以降に行う住宅改修については全て自己負担で行わなければならなくなります。
ただ、特別に上限額がリセットされる方法もあり、「住居を転居した」「要介護度が3段階以上重くなった」場合にのみ上限額がリセットされ、新たに20万円の上限額が設定されます。
住宅改修の対象となる人
介護保険を利用した住宅改修は、要介護認定において「要支援1・2」または「要介護1~5」と判定された方が対象となっています。
65歳以上の第一号被保険者の方は介護が必要になれば要介護認定を受けることができますが、40~64歳までの第二号被保険者の方は介護が必要になった原因が16種の特定疾病によるものである戸認められなければ要介護認定を受けることができません。
さらに、住宅改修を行うことができるのは住所地に指定している自宅のみとなっており、一時的に身を寄せている家族・親族の家や別荘などは対象となりません。
また、介護保険を利用した住宅改修はどのようなリフォームでも行うことができるわけではなく、以下に記載する6つの工事しか介護保険の給付対象にはなりません。
[住宅改修の対象となる工事]
① 手すりの取り付け(玄関・廊下・階段・浴室・トイレなどに設置するもので、取り付けに工事を伴うもの)
② 段差や傾斜の解消(玄関・廊下・浴室・トイレなどの室間の段差や傾斜の解消)
③ 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の床材の変更(車いすでは移動しにくい畳や滑りやすい床を固い床材やフローリングなどに変更)
④ 開き戸から引き戸への変更や扉の撤去(アコーディオンカーテンへの取り替えやドアノブの変更・戸車の設置なども対象)
⑤ 和式便器から洋式便器への変更(和式から洋式への変更のみ対応)
⑥ その他①~⑤の工事に付帯して必要となる工事
夫婦とも住宅改修の対象の場合
先程の項目で申しあげたように、介護保険を利用しての住宅改修は要介護認定において「要支援1・2」または「要介護1~5」と判定された方が対象となっています。
ただ、ここで疑問となってくるのが夫婦で要介護認定を受けており、自宅に手すりを取り付けたり、段差を解消したりする場合はどうなるのでしょうか?
その① 支給限度額は夫婦合わせて40万円になるのか?
介護保険を利用した住宅改修を上限額が20万円となっていますので、夫婦で要介護認定を受けている場合は2人分を合わせて40万円となります。
単身世帯の場合には20万円までの住宅改修は1割負担(所得に応じて2~3割)で行うことが可能になっていますが、支給上限額が合わせて40万円となる夫婦世帯で、40万円までの住宅改修を1割負担で行うということはできません。
例を挙げますと、夫婦共同で使用している便器が身体機能の低下に伴って使用しづらくなったため住宅改修を行ったが、その改修費に40万円を要した場合に夫婦それぞれが住宅改修費を20万円ずつ申請することはできません。
ただ、夫婦共同で使用している風呂やトイレなどを住宅改修した際に15万円を要した場合には、夫婦どちらかの支給限度額の20万円を適用することが可能になっています。
その② 夫婦の生活空間が違う場合どなるのか?
先程の項目で解説したように、夫婦共同で使用している便器が身体機能の低下に伴って使用しづらくなったために行った住宅改修で40万円を要したとしても、住宅改修費はひとつの工事に重複しては使用できないため、超過した20万円分の費用は自己負担しなければならなくなります。
ただ、同一の住居に夫婦で居住しているが生活空間が違うという場合もあるかと思います。
そのような場合、同時にそれぞれについての住宅改修が行われた場合には、住宅改修の行われた範囲が夫婦のどちらに有意となるのかを特定し、申請の対象となる範囲が重複していない場合については、それぞれの支給限度額である20万円までの申請が可能になっています。
例を挙げますと、住宅内の複数箇所に転倒防止等を目的として手すりを取り付けた場合です。
妻と夫の身体状況が異なる場合には手すりを設置する場所も異なってくることになりますが、この際には工事内容が重複していませんので、それぞれでの申請が可能になります。
また、夫婦でそれぞれの自室の床材を変更した場合にもそれぞれでの申請が可能になっていますが、共用の部屋の床材を変更した場合には、先程の風呂やトイレのケースと同様に、いずれか一方のみが支給申請を行うことになります。
まとめ
ここまで介護保険を利用した住宅改修において、夫婦とも対象の場合に住宅改修にかかってくる費用はどうなるのかということについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
住宅改修の支給上限金額は20万円となっており、自己負担1割の方は18万円、2割負担の方は16万円、3割負担の方は14万円までが介護保険から支給されることになります。
ただ、介護保険を利用した住宅改修の上限額20万円の支給は要介護者1人につき一生涯に一度となっており、20万円を使い切ってしまうとそれ以降に行う住宅改修は全て自己負担となってしまいます。
夫婦共に要介護認定を受けている場合にはそれぞれ20万円が支給されますので、「40万円までの住宅改修が1割負担で行うことができる!」と思い込む方もいるかもしれません。
しかし、解説してきたように夫婦で共有している場所の住宅改修において40万円を要したとしても、夫婦それぞれが住宅改修費を20万円ずつ申請することはできませんので、この点に関しては理解しておく必要があります。