この記事では介護保険を利用した住宅改修におけるトイレの改修について、どのような改修を行っているのか、どれくらいの費用がかかってくるのかということなどについて解説しています。
介護保険を利用した住宅改修では、自宅を高齢者が安全に暮らすことができるような環境に整備することが可能になっています。
人は生きている限り必ず排泄を行うことになりますが、身体機能が低下した高齢者の方などは排泄を行う際の動作などがつらくなってくることがあり、座位姿勢の保持が難しい方などは便器から転落する可能性もあるため改修が行われることが多い場所となっています。
では、住宅改修によってトイレの改修を行っている人はどのような改修を行っているのでしょうか?
また、トイレの改修にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
ここでは介護保険を利用した住宅改修におけるトイレの改修について、どのような改修を行っているのか、どれくらいの費用がかかってくるのかということなどについて解説していきますので、介護保険を利用してトイレの改修を検討されている方は是非この記事を参考にしてみてください。
トイレの重要性について
人は歳を重ねるごとに身体機能が低下していくものですが、排泄という行為は歳を重ねていたとしてもできるだけ自分一人で行いたいものです。
ただ、身体機能が低下した高齢者にとって排泄を無事に完了するまでの過程は容易なものではありません。
排泄を行うための流れについて考えてみますと、立ち上がってトイレまで移動し、ズボン・下着を下ろして座り排泄を行います。排泄が終わったらお尻を拭いて立ち上がり、下着・ズボンを履いて水を流して部屋まで戻ります。
健康な若い方であればこの一連の動作をつらいと感じる方はいないと思いますが、身体機能が低下した高齢者はこの動作の数々はつらいものであり、出入り口のわずかな段差で転倒してしまうというような危険も伴うことになります。
トイレという場所は本人のプライバシーに大きく関わってくる場所となっており、身体機能が低下した方であっても自力で排泄を行いたいと考えることは至極当然なことです。
このため、家族に身体機能が低下した高齢者がいるというような場合は、介護保険を利用した住宅改修においてトイレの改修を行うことが必要になってきます。
トイレを住宅改修する際のチェックポイント
介護保険を利用した住宅改修においてトイレをリフォームする際には以下のようなポイントに注意しながらどのようなリフォームが必要なのかを検討するようにしましょう。
① トイレの扉が開閉しやすいか
握力が低下している方などは、握って回すタイプのドアノブだとドアの開閉がしにくいため開閉しやすい扉に変更する必要があります。
② 段差の有無
身体機能が低下した高齢者というのはわずかな段差であっても躓いて転倒してしまう可能性がありますので、トイレの出入り口の段差については極力なくす必要があります。
③ 居室からトイレまでの距離
利用者がトイレまでの移動が大変な場合は居室からトイレまでの距離についても確認する必要上がります。
④ 車椅子から便座への移乗
利用者が日常的に車椅子を使用している際には、便座の高さが車椅子からスムーズに移乗することができる高さであるのかをチェックする必要があります。
⑤ 手すりの有無
手すりは車椅子からの移乗や、立ち座りの動作をスムーズに行うために必要になりますので、手すりが設置されていない場合は設置する必要があります。
トイレを住宅改修する事例のご紹介
ここまでトイレの住宅改修を行う際のチェックポイントについて解説してきましたが、介護保険を利用した住宅改修においてトイレの改修を行っている方はどのような改修を行っているのでしょうか?
ここではトイレを住宅改修する事例について解説していきます。
その① 扉の変更
扉の変更ですが、扉には引き戸、折れ戸、右開き、左開き、スライド式など様々な種類がありますので、利用者の身体状況に応じて設置するようにしなければなりません。
トイレの場合ですと通路との関係によって変更することができる扉の種類が限定される場合もあるかもしれませんので注意が必要です。
また、先程も解説したように握力が低下している方などは、握って回すタイプのドアノブだとドアの開閉がしにくいため開閉しやすいドアノブに変更する必要があります。
ドアノブの変更に関しても住宅改修の対象になりますので、介護保険による給付を受けることができます。
その② 手すりの設置
この手すりの設置ですが、トイレの中だけではなく、介護保険を利用した住宅改修全体で見ても非常に事例が多い工事となっています。
トイレへの設置ですが、便器の左右いずれかと正面に設置するのが一般的となっており、このように設置することによって立ち座りの際の動作を補助することが可能になります。
左右両方につけているという事例はすくなく、意味もなく取り付けすぎると逆に事故の原因にもなりまねませんので注意が必要です。
その③ 段差解消
通常のトイレには、出入り口付近に多少の段差が存在しています。
身体機能が低下した高齢者というのはわずかな段差であってもつまずきやすくなっていますので、転倒による事故を防ぐためにも段差の解消は必須です。
ただ、利用者が日常的に車椅子を利用されている方の場合には、住宅の作り次第では車椅子で入ることができるように十分なスペースを確保することが必要になってきますので、住宅改修を行う施工業者と寿分に相談して決める必要があります。
その④ 便器の取替え
自宅のトイレが和式便器であるという場合には、本人や介護者の負担が大きく自己危険性もあるため洋式便器への取り替えが望ましいです。
和式便器から洋式便器への取り替えを行う際にはウォシュレット付きのものに変更することもできますので、負担軽減を目的にウォシュレット付きのものに取り替える方も多くいます。
ただ、住宅改修において便器の取り替えが認められるのは和式便器を洋式便器に取り替える場合のみであり、洋式便器を新しい洋式便器に取り替えることはできませんので注意してください。
費用の目安
先程の項目ではトイレの住宅改修の事例について解説してきましたが、ここではトイレの住宅改修にかかってくる費用の目安に付いて解説していきます。
介護保険を利用した住宅改修では支給上限額を20万円として、認定された要介護度にかかわらず住宅改修に行う際にかかった費用の9割(所得に応じて7~8割)が介護保険から支給されることになっています。
[トイレの住宅改修にかかる費用の目安(1割負担の場合)]
- 洋式便座に変更した場合:20,000円程度
- 転倒防止を目的として出入り口にある段差を解消した場合:20,000円程度
- 便器を丸ごと様式に変更した場合:53,000円程度
- 出入りを行いやすいように扉の付け替えを行った場合:13,000円程度
- 手すりを取り付けた上で、スペースも全体的に広く確保した場合:73,000円程度
※あくまで目安としての金額ですので実際の金額とは異なる場合があります。
まとめ
ここまで介護保険を利用した住宅改修におけるトイレの改修について、どのような改修を行っているのか、どれくらいの費用がかかってくるのかということなどについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたようにトイレとは非常にプライバシー性の高い場所となっており、身体機能が低下した高齢者が家族の中にいる場合にはできる限り自力で排泄を行うことができるようにトイレを整備する必要があります。
ただ、ウォシュレット機能を目的とした便器の交換や別室を改造して新たにトイレを設置する工事、取り付けに工事を伴わない手すりの設置などは住宅改修の対象とはなりませんので注意してください。
また、介護保険を利用した住宅改修を行うためには事前申請が必要であり、完全に住宅改修の対象である工事であっても事前申請を行っていなければ介護保険による給付を受けることができなくなる可能性もありますので、必ず事前申請を行い、保険者の許可を得てから工事を行うようにしてください。