この記事では介護保険を利用した住宅改修における3段階リセットについて解説しています。
介護保険には、住宅改修という自宅を介護に適した環境にするためにかかった費用の一部を介護保険によってまかなってくれる介護保険サービスがあります。
ただ、介護保険は公的な制度であるため無制限に費用負担をしてくれるわけではなく、介護保険の被保険者一人一人に上限額が設定されており、その上限額の範囲内であれば介護保険の給付を受けることができますが、上限額を超えてしまうと超過分は全て自己負担ということになってしまいます。
この上限額は一生涯に一度の支給となっているため年度が替わってもリセットされることはありませんが、一定の条件を満たしている場合にのみリセットが認められることになっており、一般的に3段階リセットと呼ばれています。
ここでは介護保険を利用した住宅改修における3段階リセットについて解説していきますので、上限額を使い切ってしまってリセットの方法がないのか知りたいという方などは是非この記事をご覧ください。
介護保険による住宅改修は何回できる?
高齢者の中にはこれまで住み続けてきた自宅で一生暮らし続けたいと考えている方が少なくありません。
このような高齢者が住み慣れた自宅で暮らし続けていくためには、その高齢者の身体機能に合わせて住環境を整備する必要が出てきます。
介護保険には様々な介護保険サービスがありますが、その中の1つである住宅改修では自宅を高齢者の身体機能に合わせた住環境に整備するためにかかってくる費用の一部を介護保険からの支給でまかなうことができるようになっています。
ただ、どのような住宅改修でも行うことができるというものではなく、以下に記載する工事しか介護保険の給付対象にはなりません。
[住宅改修の対象となる工事]
- 手すりの取り付け(取り付けに工事を伴うもののみ)
- 段差や傾斜の解消(玄関・廊下・浴室・トイレなどの室間の段差や傾斜の解消)
- 滑り防止・移動の円滑化を目的とした床材の変更(車いすでは移動しにくい畳や滑りやすい床を固い床材やフローリングなどに変更)
- 開き戸から引き戸への変更や扉の撤去(アコーディオンカーテンへの取り替えやドアノブの変更・戸車の設置なども対象)
- 和式便器から洋式便器への取替
- その他①~⑤の工事に付帯して必要となる工事
上記に記載したような住宅改修を行うことができるのは、要介護認定において「要支援1・2」又は「要介護1~5」と判定された方のみであり、要介護度にかかわらず支給上限額を20万円として住宅改修を行う際にかかった費用の9割(所得に応じて7~8割)が介護保険から支給されます。
つまり、自己負担1割の方は18万円、2割負担の方は16万円、3割負担の方は14万円が支給限度額となります。
例として、自己負担1割の方が介護保険を利用した住宅改修を行ったとしてその費用が10万円だったとします。
この場合は、利用者は10万円の1割である1万円が自己負担分となり、残りの9万円は介護保険から住宅改修費として支給されることになり、支給上限額20万円の残りである10万円は今後住宅改修が必要になった際に利用することができます。
ただ、行った住宅改修の費用が30万円だった場合は、支給上限額の20万円の1割である2万円と超過分の10万円の合計12万円が自己負担分となります。
この20万円ですが、使い切ったからといって年度が替わるとリセットされるかというとそうではありません。基本
的にこの20万円は一生涯に一度の支給となっており、支給上限額の20万円を使い切ってしまうと再度支給されることはなく、それ以降に行う住宅改修に関しては全て自己負担で行わなければならなくなります。
ただ、20万円は一度に使い切らなければならないものではありませんので、この20万円の範囲内であれば何回でも介護保険を利用した住宅改修を行うことが可能になっています。
住宅改修は一人1回が条件だが例外も・・・
先程の項目では20万円の範囲内であれば何回でも住宅改修を行うことができるが、20万円の支給は一生涯に一度きりであると解説しましたが、実は一定の条件を満たしていれば上限額がリセットされ、再度20万円の給付を受けることが可能になっています。
その条件というのが「住居を転居した場合」「介護の段階が3つ以上上がった場合」の2つであり、いずれかを満たすことによって上限額のリセットが可能になります。ここではそれぞれの条件について解説していきます。
その① 【条件1】住居を転居した場合
住居を転居し、住所地として指定している住居が変更されると支給限度額がリセットされますので、再度20万円の給付を受けることができます。
介護保険被保険者証上の住所を基準として、住所地の住居は判断されますので、転居した後に住所変更の手続きを行っていないと20万円の給付を受けることができませんので注意してください。
この「住居を転居した時」という条件ですが、引っ越しを行えば条件をクリアしますので、理論上は引っ越しを行いさえすれば何回でもリセットすることができるようになっています。
ただ、住居Aで住宅改修を行った後に住居Bに転居し、その後再び同じ住居Aに戻ってきた際には、一度住居Aに対して介護保険による助成を行っているという理由から限度額のリセットは行われませんので注意する必要があります。
その② 【条件2】介護の段階が3つ以上上がった場合(3段階リセット)
介護保険サービスを利用する際に必要になってくる要介護認定では、判定される要介護度は「要支援1・2、要介護1~5」の7段階となっていますが、この要介護度が3つ以上上がった場合にも再度20万円の給付を受けることが可能になっています。
しかし、住宅改修費の3段階リセットにおいては「要支援1・2」は同じものであると見なされるため、数字的には3段階上昇している「要支援1から要介護2に上がった場合」というのは2段階しか上昇していないことになります。
このため、要支援1及び要支援2から3段階上昇したと認められるのは「要支援1から要介護3に上がった場合」と「要支援2から要介護3に上がった場合」のみとなっています。(図1参照)
一方、要介護の場合は「要介護1から要介護4に上がった場合」と「要介護2から要介護5に上がった場合」には条件通り再度20万円の給付を受けることが可能になります。(図2参照)
しかし、転居の場合は引っ越しを行いさえすれば何回でもリセットを行うことが可能になっていますが、3段階リセットを行うことができるのは1回のみと定められています。
このため、要介護1の時に住宅改修を行った後に要介護度が要介護4に上がったのでリセットを行ったという場合には、その後、要介護度が要介護2まで下がった後に要介護5まで上がったという場合には3段階リセットを行うことはできませんので注意する必要があります。(図3参照)
まとめ
ここまで介護保険を利用した住宅改修における3段階リセットについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、基本的には支給上限額の20万円は一生涯に一度きりの支給となっていますが、「住居を転居した場合」「介護の段階が3つ以上上がった場合」といういずれかの条件に該当する場合にのみ再度20万円の給付を受けることが可能になっています。
ただ、勘違いしないでいただきたいのが、リセットを行ってもあくまで再度20万円が設定されるだけですので、「前の分の残りが10万円あるからリセットしたら20万円加算されて30万円分使うことができる」ということにはなりませんので、お間違えのないようにお願いいたします。