この記事では介護保険において医療費控除を受けるためにはどうすればいいのか、また、医療費控除を受ける際の計算方法についても解説しています。
高齢者の生活というのは介護だけではなく医療など、何かとお金が必要になってきますので、このあたりの出費を何とかして減らしたいと考えている方も多いかと思います。
話は変わりますが、皆さんは年間の医療費が多くかかったらお金が戻ってくる医療費控除という制度があるのはご存知でしょうか?
現在日本では40歳を迎えると介護保険に加入することになっていますが、実はこの介護保険においてかかった費用に関しても医療費控除を受けることが可能になっているものもあります。
ここでは介護保険において医療費控除を受けるためにはどうすればいいのか、また、医療費控除を受ける際の計算方法についても解説していきますので、医療費控除に興味のある方は是非この記事をご覧ください。
そもそも医療費控除とはなにか?
医療費控除とは、本人または扶養親族のために支払った医療費の金額が一定以上になった場合、医療費の額を基にして算出される金額分の所得控除を受けることができるというものです。
この医療費控除を受けるためには条件があり、「本人または生計を一にする家族が支払った医療費であること」と「その年の1月1日~12月31日の間に支払った医療費であること」がその条件となっています。
1月1日~12月31日の間の1年間に本人または生計を一にする家族が支払った医療費から保険金等によって補填される金額を差し引いて、そこから10万円(所得金額が200万円に満たない場合は所得金額の5%の金額)を除いた金額が控除の対象となり、所得控除を受けることができます。
介護保険が医療費控除の対象になる条件(対象サービス)
介護保険サービスを利用した際にかかってくる費用の多くも医療費控除の対象になります。
ここでは医療費控除の対象となる介護保険サービスについて解説していきます。
その① 居宅サービス
居宅サービスには単独で医療費控除の対象となるサービスと単独で医療費控除の対象となるサービスと併せて利用する場合にのみ医療費控除の対象となるサービスがあります。
① 単独で医療費控除の対象となるサービス
- 訪問看護
- 介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 介護予防訪問リハビリテーション
- 居宅療養管理指導【医師等による管理・指導】
- 介護予防居宅療養管理指導
- 通所リハビリテーション【医療機関でのデイサービス】
- 介護予防通所リハビリテーション
- 短期入所療養介護【ショートステイ】
- 介護予防短期入所療養介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限ります。)
- 複合型サービス(上記の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
② ①のサービスと併せて利用する場合にのみ医療費控除の対象となるサービス
- 訪問介護【ホームヘルプサービス】(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除きます。)
- 夜間対応型訪問介護
- 介護予防訪問介護(※平成30年3月末まで)
- 訪問入浴介護
- 介護予防訪問入浴介護
- 通所介護【デイサービス】
- 地域密着型通所介護(※平成28年4月1日より)
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 介護予防通所介護(※平成30年3月末まで)
- 介護予防認知症対応型通所介護
- 介護予防小規模多機能型居宅介護
- 短期入所生活介護【ショートステイ】
- 介護予防短期入所生活介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限ります。)
- 複合型サービス(上記①の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除きます。)に限ります。)
- 地域支援事業の訪問型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)
- 地域支援事業の通所型サービス(生活援助中心のサービスを除きます。)
その② 施設サービス
医療費控除を受けることができる施設サービスは以下の通りです。
① 施設サービスの対価(介護費・食費・居住費)として支払った金額の全額が医療費控除の対象となるもの
- 介護老人保健施設(老健)
- 指定介護療養型医療施設(療養病床)
② 施設サービスの対価(介護費・食費・居住費)として支払った金額の2分の1が医療費控除の対象となるもの
- 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 指定地域密着型介護老人福祉施設(地域密着型特別養護老人ホーム)
その③ 交通費やおむつ代は?
交通費ですが、通所リハビリテーション等のために介護施設に通う際に必要になってくる交通費は医療費控除の対象となります。
ただ、自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場代に関しては医療費控除の対象とはなりません。
おむつ代も申請を行いさえすれば医療費控除を受けることが可能になっています。
ただ、そのためには医師から治療を受けるために必要な費用であると認められたことを証明する「おむつ証明書」が必要になってきます。
また、2年目以降の場合は、要介護認定を受けている方は市町村長等が交付する「おむつ使用の確認書」等をおむつ証明書の代わりとすることができます。
医療費控除を受けるための流れとポイント
医療費控除を受けるためには確定申告を行う必要があります。
確定申告はお住まいの市町村を管轄している税務署にて確定申告書を提出するか、管轄の税務署に対して確定申告書を郵送すること等によって行うことが可能になっています。
この申告の際には医療費控除の対象となるサービスを受けたということを証明するための医療費控除の明細書が必要になってきます。
医療費控除の申請には以下のようなものが必要になってきます。
[医療費控除の必要書類]
- 確定申告書
- 医療費控除明細書(税務署にて入手、もしくは国税庁のホームページからダウンロードする)
- 源泉徴収票等
- 医療費の領収書
- 交通費の領収書
- 施設発行の領収書
また、世帯内に所得税の申告者が複数いる場合には誰が医療費控除の申告を行うのがお得なのかと悩まれる方も多いと思います。
医療費控除は200万円までであり、医療費控除の対象となるのは自己負担分が10万円(所得金額が200万円に満たない場合は所得金額の5%)を超える金額であることという点を踏まえると、基本的に医療費控除の申告は世帯内で所得税率が最も高い方が行うのが一番お得であるといえます。
ただ、医療費控除額が少ない場合には所得金額の5%の方を適用する法がお得になる場合もあります。
計算方法について
医療控除金額は以下の計算方法によって求めることが可能になっています。
「医療費控除額=医療費控除の対象となる医療費-保険金等で補填される金額-10万円(総所得が200万円未満の方は総所得金額×5%)」
※保険金等で補填される金額とは、医療費の補填を目的とする損害賠償金・生命保険から支払われた保険金・高額療養費などのことをいいます。
所得が少ない方の少ない医療費でも控除を受けることができるようにするため、保険金等で補填される金額を控除の対象となる医療費から引き、所得に応じて10万円か総所得金額の5%を引きます。
例として、介護に関する費用として12万円(全額医療費控除の対象)がかかったというAさんという方がいたとします。
Aさんには保険金等での補填はありませんでした。この場合は医療費控除の対象となる費用が12万円となり、保険金等での補填は0円ですので、先程の計算式に当てはめると「12万-0円-10万円=2万円」となりますので、医療費控除額は2万円となります。
ただ、2万円が丸々戻ってくるというわけではなく、Aさんの所得に応じて戻ってくる額が変動することになります。
戻ってくる金額は医療費控除額に所得税の税率を掛けることによって算出することが可能になっており、500万円なら20%、800万円なら23%、2000万円なら40%というようになっています。
まとめ
ここまで介護保険において医療費控除を受けるためにはどうすればいいのか、また、医療費控除を受ける際の計算方法についても解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように多くの介護保険サービスにかかった費用が医療費控除の対象となっています。
ただ、医療費控除を行うためには確定申告を行う必要があり、その際にはサービスを受けたことを証明するための領収書などが必要になってきます。
このため、介護保険サービスを利用した際には、そのサービスが医療費控除の対象になるのかを確認した上で、医療費控除の対象であるなら受け取った領収書等は捨てずに保管しておくようにしましょう。