この記事では介護保険サービスの1つである福祉用具貸与とはどのような仕組みになっているのか、また、サービスを利用するための手続きの仕方や対象となっている品目についても解説しています。
介護保険サービスと聞くと、訪問介護や通所介護といった身体的な介護を行ってくれるものをイメージする方が多いと思いますが、実は介護に必要な福祉用具をレンタルすることができる福祉用具貸与も介護保険サービスの1つになっています。
では、この福祉用具貸与ですが、一体どのような仕組みになっているのでしょうか?
ここでは介護保険サービスの1つである福祉用具貸与とはどのような仕組みになっているのか、また、サービスを利用するための手続きの仕方や対象となっている品目についても解説していきますので、福祉用具貸与について詳しく知りたいという方や、福祉用具貸与の利用を検討していて手続きや品目について知りたいという方などは是非この記事を参考にしてみてください。
そもそも福祉用具貸与とは何か?
介護保険サービスと聞くと訪問介護や通所介護などの身体的な介助を受けることができるものを想像される方が多いと思いますが、数ある介護保険サービスの中には身体的な介助以外にも様々なサービスがあり、その中に服しよう具体よというものがあります。
この福祉用具貸与とは、利用者がこれまで住み続けてきた自宅で可能な限り自立した日常生活を送ることができるように、保険者から指定を受けた事業者が利用者の身体状況・希望・生活環境に合わせた適切な福祉用具を貸与するというサービスです。
福祉用具貸を利用することによって利用者の日常生活における便宜を図り、利用者の介護を行っている家族の介護による負担軽減などを目的として実施されています。
福祉用具貸与によってレンタルすることができる福祉用具は全部で13品目となっていますが、それぞれの福祉用具には要介護度における適用基準が設けられており、その基準に合っているものしかレンタルすることができなくなっています。
福祉用具貸与を利用することができるのは基本的に要介護認定において「要介護1以上」と認定された方のみとなっていますが、種目によっては「要支援」と判定された方でも利用することが可能になっています。
福祉用具貸与のレンタルまでの流れ
先程の項目でも申しあげたように福祉用具貸与を利用するためには要介護認定を受けている必要があります。
要介護認定を受けるにはお住まいの市町村の担当窓口において申請を行う必要があります。
申請によって認定された要介護度によって介護保険サービスを利用するまでの流れが異なってきますので、それぞれの流れについて解説していきます。
2-1. その① 予防給付対象者のケース
介護保険サービスを利用するためにはケアプランを作成しなければなりませんが、要介護認定において「要支援1・2」と認定された方は予防給付の対象者となり、ケアプランを地域包括支援センターにて作成してもらうことになります。
ケアプランの作成を行ったら福祉用具貸与事業者を選定しますが、このケアプランは自分自身で作成することも可能になっています。
事業者の選定を行うと福祉用具専門相談員が利用者の自宅を訪問し、どのような福祉用具が良いのか選定・提案を行います。
福祉用具を決定したら事業者が納品を行い、適合状況に問題がなければ事業者と契約して福祉用具貸与のサービスが開始されます。
その② 介護給付対象者のケース
要介護認定において「要介護1~5」と認定された方は介護給付の対象者となり、ケアプランは指定居宅介護支援事業者にて作成してもらうことになります。
このケアプランは要支援の場合と同様に自分で作成することができ、ケアプランの作成が完了したら福祉用具貸与事業者の選定を行います。
事業者の選定を行ったら要支援の場合と同様に、福祉用具専門相談員の訪問を受け、福祉用具を決定したら事業者が納品を行い、適合状況に問題がなければ事業者と契約して福祉用具貸与のサービスが開始されます。
福祉用具貸与の対象品目
ここまで福祉用具貸与を利用するまでの流れについて解説してきましたが、ここでは福祉用具貸与の対象品目について解説してきます。
その① 車椅子
自走用標準車いす、介助用標準車いす、普通型電動車椅子のみが対象となります。
サービス対象者:要介護2~5
その② 車椅子付属品
クッション、電動補助装置、姿勢保持用品等であって車いすと一体的に使用されるもののみが対象となります。
サービス対象者:要介護2~5
3-3. その③ 特殊寝台
サイドレールが取り付けてあるもの、もしくは、サイドレールが取り付け可能なものであって以下の機能を有するもののみが対象となります。
- 背部又は脚部の傾斜角度を調節することができる機能
- 床板の高さが無段階に調節することができる機能
サービス対象者:要介護2~5
その④ 特殊寝台付属品
マットレス、サイドレール等であって特殊寝台と一体的に使用されるもののみが対象となります。
サービス対象者:要介護2~5
その⑤ 床ずれ防止用具
空気圧調整装置又は送風装置を備えた空気マット、もしくは、水等によって減圧することができる体圧分散効果を備えている全身用マットのいずれかに該当するもののみが対象となります。
サービス対象者:要介護2~5
その⑥ 体位変換器
空気パッド等を利用者の身体の下に挿入することによって、利用者の体位変換を容易にするもののみが対象となり、体位の保持のみを目的とするものは対象外となります。
サービス対象者:要介護2~5
その⑦ 手すり
取り付けに工事を伴わないもののみが対象となります。(工事を伴うものは住宅改修の対象)
サービス対象者:要支援1・2、要介護1~5
その⑧ スロープ
段差の解消を目的としたものであり、取り付けに工事を伴わないもののみが対象となります。(工事を伴うものは住宅改修の対象)
サービス対象者:要支援1・2、要介護1~5
その⑨ 歩行器
歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有しているもので、移動時に利用者の体重を支える構造を有しているものであって、以下のいずれかに該当するもののみが対象となります。
- 車輪を有する歩行器の場合は身体の前及び左右に把手を有するもの
- 四脚を有する歩行器の場合は上肢で保持して移動することが可能になっているもの
サービス対象者:要支援1・2、要介護1~5
その⑩ 歩行補助杖
松葉杖、サイドウォーカー、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ、プラットホーム・クラッチ、多点杖などが対象となります。(一脚杖のステッキなどは対象外)
サービス対象者:要支援1・2、要介護1~5
その⑪ 認知症徘徊感知器
認知症の高齢者が家の外絵で要とした場合に、センサーによってその動きを感知し、家族や隣人等に通報するもの
サービス対象者:要介護2~5
その⑫ 移動用リフト
床走行式・固定式・据置式のいずれかであり、かつ、利用者の身体をつり上げる機能もしくは体重を支えることができる構造を有するものであって、その構造によって自力での移動が困難な者の移動を補助する機能を有しているものが対象となります。
(取り付けに住宅改修を伴うものは対象外)
サービス対象者:要介護2~5
その⑬ 自動排泄処理装置
尿や便を自動的に吸引してくれるものであって、かつ、尿や便の経路となる部分を分割することができる構造を有しており、容易に使用することができるもの
サービス対象者:排便機能を有しているものは要介護4・5、それ以外のものは要支援1・2、要介護1~5
費用について
従来の介護保険法では、福祉用具貸与事業者における事業者間の競争によって適正価格の維持を行ってもらうためにレンタルにかかる費用は事業者によって決めることができるようになっていました。
このため、事業者によってレンタルにかかる費用が異なってくるため、値容赦が支払う自己負担額も契約する事業者によって異なってくることになっていました。
ただ、この方法では利用者が他の事業者のレンタル価格を知らないのをいいことに、高額なレンタル価格を設定する事業者が現れるなど問題になっていました。
ただ、2018年に行われた介護保険の改正によって、厚生労働省が全国のレンタル平均価格を公表することになり、その価格をもとにしてレンタル価格の上限を設定することになりました。
また、事業者は利用者に対して全国のレンタル平均価格や価格・機能の異なる複数の商品を提示することが義務付けられました。
これによって利用者は適正価格を理解した上で、事業者から提示される様々な選択肢の中から福祉用具を選択することが可能になりました。
まとめ
ここまで介護保険サービスの1つである福祉用具貸与とはどのような仕組みになっているのか、また、サービスを利用するための手続きの仕方や対象となっている品目についても解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
人は歳を重ねるごとに身体機能が低下していきますが、身体機能が低下した高齢者であっても福祉用具を利用することによって、住み慣れた自宅で自立した生活を送ることができるようになります。
また、福祉用具の利用は高齢者の自立支援だけではなく、介護を行っている家族の身体的負担をも軽減することが可能になっていますので、自身の状況に適合している福祉用具がある場合は是非福祉用具のサービスを利用してみてください。
また、今すぐに福祉用具が必要ない場合でも、どのような福祉用具をレンタルすることができるのかを知っていることで安心感にもつながりますので、この記事にて福祉用具貸与に関する知識を深めていただければと思います。