介護保険で提供される介護サービスは、『予防給付』と『介護給付』のふたつの大きな枠組みの中で分けられているということはご存じでしょうか?
例えば、在宅でのサービス分類である「居宅サービス」という種別の中に『予防給付』と『介護給付』があるのです。それぞれで、その目的や利用料にも違いがあります。
今回は、そんな『予防給付』と『介護給付』の違いについて説明していきます。
予防給付について
予防給付とは、要介護認定において「要支援1・要支援2」に該当した人が利用できる介護サービスのことです。
介護度が軽いという判断になるため、主に施設入所して生活全般の介護を受ける施設サービスは利用できません。
予防給付で利用できるサービスは、介護サービスのパンフレット等で見ると“(介護予防)通所介護”や“(介護予防)訪問介護”と等と書かれているものが対象となります。
具体的には、下記の通りです。具体的には、下記の表の通りです。
※以前あった介護予防訪問介護及び介護予防通所介護は、現在『日常生活支援総合事業』に移管されています。
介護給付について
介護給付とは、要介護1~5の要介護認定を受けた方が利用できるサービスです。
ただし、利用するサービスによっては要介護度による制限があります。
例えば、福祉用具貸与であれば特定の品目が要介護3以上でないと基本的に借りられない、介護老人福祉施設に入居するためには要介護3以上であることが条件となる…等です。
実際に利用する際に個別の確認が必要です。
予防給付の新制度!『日常生活支援総合事業』について
読者の皆様は、『日常生活支援総合事業』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
正式には『介護予防・日常生活支援総合事業』と呼ばれるこの事業は、平成27年4月より段階的に始まった制度で、現在は全市町村で正式に実施されています。
要支援または「基本チェックリスト」の項目に当てはまる要支援状態となる恐れのある高齢者を対象に、住み慣れた地域でできる限り健康で自立した生活を送ることができるよう、多様な社会資源やマンパワーを活用した生活支援サービスを総合的に提供する事業です。
これにより、要介護認定を受けなくても特定の要件を満たせばこの介護予防のためのサービスを受けることができるようになっています。
訪問・通所介護が移行する
日常生活総合支援事業は、大きく「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」の2つに分けられています。そのうち前者に訪問介護や通所介護が移行されました。
この事業では訪問サービスとして、身体介護や生活援助、相談助言などのサービスが提供されます。また通所サービスとして、身体介護や健康状態観察、機能訓練などが提供されます。
それ以外に安否確認や配食サービスなど、以前は介護保険サービス以外の有償ボランティアや自治体の独自サービスとして行われていたものも含まれています。
また、介護予防ケアマネジメントとして地域包括支援センターが起点となり、要支援者に対するケアマネジメントが提供されます。
市町村によって運営される
通常の介護保険サービスは、県が指定・管理・指導を行っているものが大半でした。
それに対し、この日常生活支援総合事業は、市町村単位で運営されることが特徴となっています。
市町村が中心となって運営することにより、地域の特性やニーズ、社会資源の把握が容易になり、より効果的なコーディネートに繋がることが大いに期待されています。
地域の人的・社会資源を活用する
もう一つの柱である、「一般介護予防事業」は市区町村の支援により実施されるものです。
介護予防をテーマにした講演会や介護予防教室、高齢者向けのサロンやサークル活動の立ち上げによって外出機会を促すなど、地域人材や社会資源を活用する事業です。
またく「介護予防・生活支援サービス事業」においても、NPOやボランティア団体が提供する会員型相互扶助サービス(通称たすけあい活動)等によってサービスが展開されることが想定されていて、まさに地域の力を活用する事業と言えます。
既存の介護保険サービス事業所だけでなく、様々な団体がサービス提供を行うことができます。
ニーズへの柔軟な対応
日常生活支援総合事業は、要支援の認定を受けた方だけが対象ではありません。
それ以外の要介護状態になりえる虚弱体質の方や引きこもりの方も対象となります。
市町村の管理による、地域の実情に合わせた地域住民によるサービス提供によって、ニーズに合わせた柔軟で多岐にわたったサービス提供が想定されています。
リハビリ専門職などの関わり
また、現在は「地域リハビリテーション活動支援事業」が追加されています。
これは地域包括支援センターがリハビリテーション専門職等と連携し、地域での介護予防機能としての取り組みを強化する事業です。
「介護予防・生活支援サービス事業」で展開される通所や訪問サービス提供内容へ関与し、専門職による指導を受けたり、サービス担当者会議や「一般介護予防事業」において提供される介護予防教室や高齢者サロンへの参加による指導等を行い、より積極的な介護予防活動の展開を目的として実施されています。
まとめ
現在の介護保険事業では、要支援1・2の方を対象とした「予防給付」と要介護1~5の方を対象とした「介護給付」によって各種サービスが提供されています。
また、これとは別に「日常生活支援総合事業」として要支援1・2の方とそれ以外の要介護状態になる可能性がある高齢者を対象とした各種介護予防サービスが各市町村単位で展開されています。
超高齢化社会を超えて人口減少社会と言われている現在、これらのサービスによって要介護者へのケアだけではなく、介護予防活動の推進によって要介護状態に陥る高齢者を減らすことで、高齢者介護にかかる費用全体の圧縮を図ることも目的となっているのです。
介護保険制度の持続可能性について議論されているほど、実は国の財政はひっ迫しています。
介護保険制度の片翼は私たち市民の介護保険料によって運営されています。一人一人が健康寿命を維持して心構えと努力が必要となってきているとも言えますね。