医療を受けるには、病院や診療所の外来に通って受ける外来医療が一般的ですが、外来が困難な患者さんなどが自宅で受ける在宅医療と呼ばれるものがあります。
在宅医療と聞くと、寝たきりの重症の方のみが対象だと思われがちですが、そうではありません。
在宅医療には「訪問診療」と「往診」があり、この記事では介護保険の「訪問診療」と「往診」の違いについて、また、対象や費用などについても詳しく説明します。
介護保険の訪問診療について
「訪問診療」は通院が難しい人の居宅へ定期的に訪問して診察を行うものです。
この「訪問診療」は介護保険ではなく医療保険が適用されるものです。
この医療保険適用の訪問診療と同じように、介護保険を適用した医師などの訪問サービスがあります。
居宅療養管理指導」と呼ばれるもので、環境や身体的要因により通院することが困難な人を対象に、医師・歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、看護師・保健師などの専門家が自宅を訪問し、健康管理や指導を行うサービスです。
介護保険の「居宅療養管理指導」は健康管理上のアドバイスや指導であるのに対し、医療保険の「訪問診療」は実際の医療行為である点が大きな違いとなります。
その① 対象となる人
居宅療養管理指導の対象となるのは、要介護1~5に認定されている65歳以上の高齢者です。
また、40〜64歳の方でも、パーキンソン病や末期がんなどの16種類の特定疾病により要介護認定を受けている人は対象となります。
要支援1~2の方に対しては「介護予防居宅療養管理指導」と呼ばれる同様のサービスがあります。
その② 支援してくれる人
医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、看護師、保健師などの専門家が自宅を訪問し、支援します。
それぞれの職種ごとにサービス内容や回数が異なります。
その③ 費用
「居宅療養管理指導」の介護報酬は訪問指導する職種によって違います。
それぞれの職種別における居宅管理療養指導の1割負担の場合の自己負担額を表にまとめました。
自己負担額は1割負担の方で323円〜558円、2割負担の方で646円〜1116円、3割負担の方で969円〜1674円となります。
医師が訪問する場合の自己負担額は1割負担の方で507円、2割負担の方で1014円、3割負担の方で1521円となります(同一建物居住者以外の場合)。
往診について
「往診」とは、通院が困難な患者さんに対して医師が患者さんの自宅まで訪問し診療することです。
同じ医療保険適用の「訪問診療」との違いは、「訪問診療」は治療計画を予め決めて、その計画に沿って定期的にご自宅を訪問し診療することを言うのに対し、「往診」は急な体調変化があった際に患者さんの要望に応じて診察に伺うことを言います。
夜間・深夜・緊急時にも利用者から要望があれば、往診を行うことができます。
その① 対象となる人
往診の対象者は、「在宅で療養を行っている患者であり、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者」とされています。
通院が困難な方であれば、疾患や介護度による区分はありません。
除外基準として、「少なくとも独歩で家族・介助者の助けを借りずに通院ができるもの」とされています。
自力で通院ができる人は、往診を受けることはできません。
また、在宅医療が行えるのは、医療機関から16km以内の範囲とされています。
それ以上の範囲の場合は、別途交通費がかかる場合があります。
その② 支援してくれる人
往診は基本的には医師が行います。
訪問診療と往診を組み合わせたものを在宅医療と言いますが、広義の意味での在宅医療には看護師による訪問看護、歯科医師による訪問歯科診療、薬剤師による訪問薬剤指導など、在宅で行われる医療全般が含まれます。
その③ 費用
往診の診療報酬は往診料として720点が定められています。
初診の場合はこれに初診料282点が加わり、再診の場合は再診料72点が加わります。
これは医療保険が3割負担の方で2376円〜、2割負担の方で1584円〜、1割負担の方で792円〜となります。
これ以外に夜間・休日加算、深夜加算が加わったり、血液検査や点滴などその時に行った処置の費用が加わります。
まとめ
この記事では訪問診療と往診の違いについて解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 「訪問診療」は通院が難しい人の居宅へ定期的に訪問して診察を行うものであり、医療保険だけでなく介護保険を適用した医師などの訪問サービスである「居宅療養管理指導」と呼ばれるものがあります。
- 「居宅療養管理指導」とは、環境や身体的要因により通院することが困難な人を対象に、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、看護師、保健師などの専門家が自宅を訪問し、健康管理や指導を行うサービスです。対象は要介護認定を受けている人で、費用は訪問指導する職種によって違い、1割負担の方の場合320円〜550円ほどです。
- 「往診」とは、通院が困難な患者さんに対して医師が患者さんの自宅まで訪問し診療することで、定期的な訪問診療に対して、往診では夜間や緊急時も応じることができます。往診は基本的に医師が行い、対象は「在宅で療養を行っている患者であり、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者」とされており、通院が困難な方であれば、疾患や介護度による区分はありません。往診料は診療報酬720点で、これに初診・再診料、夜間・休日加算や、その時に行った処置の費用が加わります。
「居宅療養管理指導」と「往診」では介護保険と医療保険という適用される保険に違いがあり、利用する目的も違います。「居宅管理療養指導」では健康管理や指導が目的であるため、医療行為はともないません。生活上・健康上の指導だけでなく、治療も行ってもらいたい場合には向かないと言えます。サービスの利用を開始する前に、利用者本人の意向と病状を確認し、介護保険と医療保険のどちらが最適なのかを検討すると良いでしょう。