原則65歳以上で利用できるようになる「介護保険」により、介護サービスを利用するときの料金が1割から3割負担になります。
介護サービスの利用者は、自己負担しない利用料金の支払いについて手続きを行う必要がないため、どのような流れで介護サービス事業所に利用料金(介護サービス費)が支払われているか、わからないという方がいらっしゃることでしょう。
今回は介護保険サービスを利用した時に、どのような流れで介護サービス事業所に介護サービス費が支払われるかを解説していきます。
そもそも介護保険ってどんな制度?
「介護保険」は高齢者をはじめとした介護が必要な方を、社会全体で支えるために設立された制度になります。
冒頭でも紹介したように「介護保険」は原則65歳以上で利用することができ、介護サービスを利用したときに発生する料金が1割から3割負担になります。
負担割合が1割から3割と幅があるのは、収入状況によって負担割合が異なるためです。
原則65歳からの利用となる「介護保険」ですが「介護保険の特定疾病」に該当すれば、40歳以上65歳未満の方でも「介護保険」を利用できることがあります。
「介護保険の特定疾病」に該当するかどうかは医師による診断が必要となるため、40歳以上65差未満の方で「介護保険」の利用を希望しているのであれば、主治医や病院の窓口に相談するとよいでしょう。
介護保険制度の財源は?
先ほど介護保険サービスを利用するときには、利用料金が1割から3割負担になると紹介しました。
続いて自己負担額を除いた「介護保険」にかかる費用(以後、9割負担分と呼称する)について解説していきます。
「9割負担分」の内訳ですが、半分が40歳以上から徴収される「介護保険料」で、残り半分が国や都道府県、市区町村が負担する「公費」からなります。
「公費」の内訳については国が25%、都道府県が12.5%、市区町村が12.5%という割合で負担される自治体が見受けられます。
【9割負担分 内訳】
「公費」の負担割合についての詳細は自治体によって異なるため、「公費」の詳しい割合が気になる方は、市区町村の役場になる窓口に確認しましょう。
介護サービス費の内訳について
ここまでの話を整理すると、介護サービスを提供する事業所へは、次のような内訳で介護サービス費が支払われるを確認することができました。
【介護サービス事業所への支払い】
「介護サービス費」の内訳が確認できたところで、次に利用者負担分と「9割負担分」が、どのような流れで介護サービスを提供する事業所へ支払われるかを解説していきます。
自己負担の1割(2・3割)
まずは介護サービスの利用者が、直接負担することになる自己負担についてです。
1割から3割負担になる自己負担については、介護サービスを提供する事業所へ利用者が支払うことになります。
介護サービスを利用したときの負担割合は「介護保険被保険者証」に記載されていますので、介護サービスを利用するときには、負担割合を前もって確認しておきましょう。
介護サービスを提供する事業所への支払いは、口座引き落としや事業所への直接支払などがあります。
介護サービスを提供する事業所との契約時に、利用料金の支払い方法について事業所の担当者から話がありますので、利用料金の支払い方法についてわからないことがあれば、契約時に確認することをおすすめします。
詳しくは次の項目で紹介しますが、ケアプランの作成を行うケアマネージャーが所属している「居宅介護支援事業所」へは、利用者が利用料金を支払う必要はありません。
なぜかと言うとケアプランの作成にかかる費用は、すべて「介護保険」の財源でまかなわれるためです。
要支援1または要支援2の認定が下りた際に契約することがある、「地域支援包括センター」に所属しているケアマネージャーがケアプランの作成を行った場合も、利用者は利用料金を負担することはありません。
自己負担以外の9割(7・8割)
続いて自己負担以外の介護サービス費について解説していきます。
はじめに自己負担額以外の介護サービス費は、介護サービスを提供する事業所が支払いの手続きを行うため、介護サービスの利用者が行わなければならないことはありません。
さて自己負担以外の介護サービス費の請求ですが、介護サービスを提供する事業所は毎月1日から10日の間に、「国民健康保険連合会(国保連)」に書類を提出しなければなりません。
このとき介護サービスを提供する事業所は、「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」を「国保連」に提出します。
またケアマネージャーが在籍しケアプランの作成や介護サービスの利用に際し手続きを行う「居宅介護支援事業所」は、「居宅介護支援介護給付費明細書」と「給付管理票」を提出することになります。
「居宅介護支援介護給付費明細書」や「給付管理票」にはケアプランの作成など、ケアマネージャーが行った業務に関して支払われる報酬について記載されています。
先ほど紹介したようにケアプランの作成に関して介護保険で全額負担されるため、利用者は自己負担額が発生しません。
その後、「国保連」では介護サービスを提供する事業所から送られてきた書類と、「居宅介護支援事業所」から送られてきた書類を突き合わせ、介護サービス費の請求に関して審査を行います。
介護サービスを提供する事業所からの請求を「国保連」で審査したあとは、「国保連」から市区町村へ審査の内容に応じた介護給付費の請求を行います。
「国保連」から介護給付費の請求を受けた市区町村は「国保連」へ介護給付費を支払い、「国保連」は市区町村から支払われた介護給付費を、「介護サービス費」として介護サービスを提供する事業所へ支払われます。
介護サービスを提供する事業所へ支払われる「介護サービス費」の流れは、下の図をご覧になっていただければ理解しやすいかと考えます。
【介護サービス費の流れ】
まとめ
「介護保険」制度の大筋から「介護保険」の財源、「介護サービス費」の請求方法などを解説してきました。
介護サービスを提供する事業所は「国保連」を通じて、市区町村から介護サービスの支払いが行われていることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
介護保険の9割負担についてまとめると
- 介護保険の9割負担は40歳以上から収められている「介護保険料」と国や都道府県、市区町村からの「公費」によって、まかなわれている。
- 介護サービスを提供する事業所は「国民健康保険連合会(国保連)」へ、利用者が負担する利用料金以外の「介護サービス費」を請求する。
- 「国保連」は市区町村へ介護給付費を請求し、市区町村から支払われた介護給付費を介護サービス提供する事業所へ支払う。
ということがあります。
介護サービスを利用するときには、9割負担分について利用者は手続きを行う必要はありません。
しかし介護サービスを提供する、事業所が行っている「介護サービス費」の請求方法について確認することは、40歳から徴収れる「介護保険料」がどのような流れで、「介護サービス」に利用されているかを知るきっかけになります。
「介護サービス費」が請求される流れについて、頭の片隅でもよいので留めていただければ幸いです。