自宅に看護師などの医療従事者が訪れ、サービスの提供を行う「訪問看護」ですが、一か月間の利用回数に制限があるのはご存知でしょうか。
すべての「訪問看護」利用者について、利用回数の制限があるわけではありませんが、利用回数の制限がある方は計画的な「訪問看護」の利用が必要になります。
今回は「訪問看護」の利用回数について、解説していきます。
訪問看護とはどういった内容のサービス?
「訪問看護」は自宅に看護師など医療従事者が来訪し、サービスの提供を行います。
提供されるサービスは清拭や洗髪、入浴介助などの身体介護の他に、経管栄養の管理、点滴注射、そして褥そうの処置など医療的な知識が必要となるものになります。
自宅にヘルパーが来訪しサービスの提供が行われる「訪問介護」と比較して、「訪問看護」は医療的な側面が強いサービスと言えるでしょう。
訪問看護を利用できる人
「訪問看護」を利用するには、一定の要件を満たさなければなりません。
次に「訪問看護」を利用するには、どのような要件が必要なのかを解説していきます。
要介護、要支援認定を受けた人
まずは「要介護、要支援認定」を受けた人です。
「要介護、要支援認定」を受けるには、市区町村に申請を行う必要があります。
「要介護、要支援認定」の申請は原則65歳以上からとなっており、「介護保険の特定疾病」に該当すれば、40歳以上65歳未満の方でも「要介護、要支援認定」の申請を行えます。
「介護保険の特定疾病」に該当するかどうかは、医師の診断によって決定します。
具体的な「介護保険の特定疾病」に該当する疾病は、次の通りです。
「要介護、要支援」の申請後、申請を行った方の状態によって、要支援1から要介護5までの「要介護、要支援認定」が下ります。
「要介護、要支援認定」の申請についてわからないことがあれば、市区町村の役場内にある担当窓口か、「地域包括支援センター」に相談するとよいでしょう。
「地域包括支援センター」は、高齢者をはじめとした介護が必要な方の生活を支えるために、自治体に設置された施設で、「要介護、要支援認定」の申請に関しての相談を受け付けています。
「地域包括支援センター」の所在地はインターネットで検索を行うか、市区町村の役場にて確認しましょう。
厚生労働大臣が定める疾病にかかっている人
次に紹介する「厚生労働大臣が定める疾病」にかかっている人でも、「訪問看護」を利用することができます。
「厚生労働大臣が定める疾病」は、次の疾病がそれにあたります。
上表をご覧になっていただければおわりいただけますが、「要介護、要支援認定」の項目で紹介した「介護保険の特定疾病」と「厚生労働大臣が定める疾病」は、一部重複する疾病はあるものの基本的に異なるものになります。
「介護保険の特定疾病」と同じように、「厚生労働大臣が定める疾病」に該当するかどうかも、医師の診断が必須となります。
なお「要介護、要支援認定」とは異なり、「厚生労働大臣が定める疾病」に該当すれば年齢制限なく、「訪問看護」を利用することができます。
訪問看護指示書、特別訪問看護指示書をもらった人
先ほど紹介した「厚生労働大臣が定める疾病」に該当しなくとも、「訪問看護」を利用することができます。
それは主治医が「訪問看護」の必要性を認めたときです。
そしてこのときに発行されるのが「訪問看護指示書」で、「訪問看護指示書」の発行に際し、年齢制限はありません。
また利用者の状態が著しく悪化すると医師が判断した場合には、「特別訪問看護指示書」が発行されます。
「訪問看護指示書」と「特別訪問看護指示書」の違いは、利用できる「訪問看護」の回数です。
詳しくは次の項目にて解説します。
訪問看護の利用回数
「訪問看護」の利用回数ですが、適応される保険が「医療保険」か「介護保険」かによって異なります。
また「医療保険」が適応になる方でも、「厚生労働大臣が定める疾病」に該当するかどうかでも、利用回数に違いが生まれます。
介護保険で訪問看護を利用した場合
「介護保険」で「訪問看護」を利用する方は、前項目の「2-1 要介護、要支援認定を受けた人」が該当します。
「介護保険」での「訪問看護」の利用にあたり、1点注意しなければならないことがあり、「厚生労働大臣が定める疾病」に該当する方は「医療保険」での利用となることが定められています。
さて「介護保険」で「訪問看護」を利用した場合ですが利用者の状態に関わりなく、利用回数の制限は存在しません。
ただし「介護保険」には支給限度額が存在し、「介護保険の支給限度額」を超える「介護保険」の利用は自費(10割負担)となります。
「介護保険の支給限度額」は要支援、要介護度によって異なり、「訪問看護」だけでなく「介護保険」で利用できるすべての介護サービスが関わってきます。
「訪問看護」の利用に際し、利用する保険が「介護保険」になるか、また「介護保険の支給限度額」内に収まっているかどうか気になる方は、担当ケアマネージャーに確認することをおすすめします。
医療保険で訪問看護を利用した場合
「医療保険」で「訪問看護」を利用した場合には、原則一週間に3回までの利用という回数制限がされています。
一か月間であれば、一週間の利用限度である3回の4倍である12回前後になるでしょう。
ただし「厚生労働大臣が定める疾病」に該当すれば、一週間に4回以上の利用が可能です。
また「特別訪問看護指示書」が発行された場合にも、「訪問看護」の利用が一週間に4回以上となります。
「特別訪問看護指示書」は有効期間が14日間、一か月間の発行が1枚のみとされています。
気管カニューレを使用している人や真皮を超える褥そうがある人であれば、「特別訪問看護指示書」を一か月間の発行枚数が2枚となります。
「医療保険」を利用した方の「訪問看護」の回数について、表にまとめてありますので、あわせてご確認いただけますと幸いです。
もし「医療保険」で「訪問看護」を利用したときの回数について不明な点があるのであれば、「訪問看護」を提供している医療機関や主治医に相談するとよいでしょう。
自費で訪問看護を利用した場合
自費で「訪問看護」を利用した場合には、利用回数の制限は存在しません。
しかし保険外となるため、「訪問看護」を提供している医療機関によって、一か月間に利用できる回数が異なる可能性があります。
また「介護保険」や「医療保険」での利用と比較し、「訪問看護」を利用したときの経済的な負担が大きくなることにも注意が必要です。
自費での「訪問看護」については、「訪問看護」を提供している医療機関や主治医に確認することを強くおすすめします。
まとめ
「訪問看護」とのサービス内容から、「訪問看護」の利用回数について解説してきました。
利用する保険によって、「訪問看護」の利用回数が異なる点について確認できたのではないでしょうか。
「訪問看護」の利用回数についてまとめると
- 「介護保険」での利用であれば「訪問看護」の利用回数について制限がなく、「医療保険」での利用であれば原則週3回までの利用になる。
- 「医療保険」でも「厚生労働大臣が定める疾病」に該当する方や、「特別訪問看護指示書」が発行された場合には週4回以上の利用が可能になる。
- 自費であれば利用回数の制限がないものの保険外となるため、経済的な負担が大きくなる点や「訪問看護」を提供している医療機関によって異なる利用回数について注意が必要。
ということがあります。
「訪問看護」の利用回数については、「医療保険」と「介護保険」の関係性、「厚生労働大臣が定める疾病」に該当するかどうかなどの、専門知識が必要となる場面が多くあります。
利用回数だけでなく、「訪問看護」の利用に際しわからないことや希望があれば、担当ケアマネージャーや主治医、関係医療機関に相談し、利用者だけでなく家族が安心して利用できるように心がけたいところです。