この記事では介護保険における第三者行為とは一体何なのか、また、第三者行為の求償事務についても解説しています。
介護保険では、介護保険サービスを利用するためには原則として所得に応じて1~3割の自己負担で利用することになっていますが、第三者行為によって介護が必要になった場合にはその限りではなく、この行為を行った第三者が介護保険サービスを利用した際にかかる費用を負担することになっています。
では、この第三者行為とは一体どの用のもののことを指すのでしょうか?
ここでは介護保険における第三者行為とは一体何なのか、また、第三者行為の求償事務についても解説していきますので、介護保険における第三者行為について詳しく知りたいという方や第三者行為の求償事務について知りたいという方は是非この記事をご覧ください。
第三者行為とは
第三者行為とは、交通事故等の第三者による不法行為のことをいいます。
冒頭でも解説したように、日本では40歳になると自動的に介護保険に加入することになっており、介護保険の被保険者に位置づけられることになっています。
介護保険の被保険者は介護保険サービスを利用する際には原則1割(所得に応じて2~3割)を負担し、残りを保険者(自治体)が介護保険給付として負担しています。
ただ、交通事故等の第三者による行為が原因で介護が必要になった場合や要介護状態が悪化して介護保険サービスが必要になった際には、被害者(被保険者)が介護保険サービスを利用した際にかかる費用は加害者となった第三者が支払うことになっています。
この際には、被害者(被保険者)の利用者負担分1割(所得に応じて2~3割)は被害者自身が直接加害者に請求することになっており、残りの介護給付分は被害者が加害者(第三者)に対して有している損害賠償請求権を保険者の自治体が代位取得することになっており、保険者が加害者に対して請求することになります。
このように、交通事故等の第三者による不法行為によって保険者が受けた損害を補手するために行う求償行為を「第三者行為求償」といいます。
ただ、この第三者行為によって介護保険サービスを利用することができる被保険者は65歳以上の第一号被保険者のみと定められています。
第一号被保険者の方は第三者行為によって介護が必要になった場合や要介護状態が悪化した場合には介護保険サービスを利用することができますので、被保険者が第三者行為によって介護保険の要介護認定(区分変更申請も含む)を行う場合には、その旨を保険者に申告してください。
一方で、40歳~64歳までの第二号被保険者の方の場合は介護保険サービスを利用することができるのは、末期のがんや関節リウマチなどを始めとする16種類の特定疾病によって介護が必要になったと認められた場合のみであり、交通事故等の第三者行為によって要介護状態になったとしても介護保険サービスを利用することはできませんので注意してください。
その① 第三者行為の届出の義務化
保険者が加害者に対して請求することになっている介護保険給付分費用ですが、保険者が加害者に対して請求を行うためには、その保険給付が第三者行為を原因としたものであるのかを確認する必要があります。
介護保険法の施行規則が改正されたことによって、2016年4月1日から第一号被保険者の方が交通事故等の第三者行為を原因として介護保険サービスを利用した場合には、保険者である自治体への届出が義務とされることになりました。
第三者行為求償の手続きについて
被害者(被保険者)の方は第三者行為求償に該当する可能性が生じた場合には、まずお住まいの市町村の担当窓口において相談を行うようにしましょう。その行為が第三者行為に該当する場合には様々な書類の提出が必要になってきます。
また、自治体によっては交通事故等に関する求償の事務手続きを別の組合等に委託している場合があり、求償予定の事案についての示談を締結した場合や事故と介護保険給付の因果関係が確認できない場合などは、求償を行うことができない場合があります。
必要書類
交通事故等の第三者行為によって介護が必要な状態になった場合には、そのことについての届出を行う必要がありますが、その際には以下のような書類が必要になります。
また、既に医療保険において求償を行っている場合には、提出することになる書類を入部省略することができる場合がありますので、事前に相談するといいでしょう。
その① 傷病届
第三者行為によって介護保険サービスが必要になったことを届けるための書類となります。
発病の原因または負傷事の状況欄の内容はできる限り詳細に記入する必要があります。
また、相方(加害者)の自賠責及び任意保険加状況等について不明な点がある場合は、相方の保険会社に作成または記入を依頼するようにしてください。
この傷病届は医療保険においてすでに届出済みという場合にはコピー可となっています。
その② 交通事故証明書
交通事故の事実を証明するための書類で、自動車安全運転センターが発行することになっています。
警察署や交番においてある申請書で取り寄せるか、既に保険会社が持っている場合には写しでも可となっていますが、交通事故証明書が取得できない場合には「人身事故証明書入手不能理由書」を添付するようにしてください。
また、この交通事故証明書は医療保険においてすでに届出済みという場合にはコピー可となっています。
その③ 事故発生状況報告書
交通事故が発生した場所や発生したときの状況について記載する書類であり、内容はできる限り詳細に記入する必要があります。
同等の内容を記載している書面が既に存在している場合には、余白部分に内容についての誤りがない旨を記載した上で届出者が署名・捺印して提出するようにしてください。
また、この事故発生状況報告書は医療保険においてすでに届出済みという場合にはコピー可となっています。
その④ 念書兼同意書
被害者(被保険者)が加害者に対して有している損害賠償請求権のうち、保険者が負担した介護保険給付分については保険者が権利を行使すること及び求償を行う上で必要になってくる情報提供について同意するという書類です。
これは被害者(被保険者)が作成するようにしてください。
その⑤ 誓約書
相手方(加害者もしくは加害者側の保険会社)に被害者が受けた介護保険給付にかかる費用を支払うことを約束してもらうための書類です。
これは被害者が作成するのではなく、相手方(加害者もしくは加害者側の保険会社)に渡して記入してもらい、相手方に提出してもらいます。
その⑥ その他
ここまで解説してきた必要書類の他に、事故の参考となるような書類等がありましたら、必要に応じて添付して提出するようにしてください。
これには示談書の写し等が該当しますが、示談等に伴って加害者から師が立て替えることになる金額に相当する金銭を受領した場合には、相手方が負担することになる分を被保険者が支払わなければならなくなる場合があります。
このため、示談を行う前には必ず保険者への連絡を行うようにしてください。
まとめ
ここまで介護保険における第三者行為とは一体何なのか、また、第三者行為の求償事務についても解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、交通事故等の第三者行為によって介護が必要になった場合にかかってくる費用は加害者が負担することになっています。
そのためには様々な書類が必要になってきますので、この記事を参考にしてしっかりと必要書類をそろえていただければと思います。
ただ、1つ気をつけておいていただきたいのが、この制度で介護保険サービスを利用することができるのは65歳以上の第一号被保険者のみであるということです。
40歳~64歳までの第二号被保険者の方は特定疾病が原因で介護が必要になった場合にしか介護保険サービスを利用することはできませんので注意してください。