この記事では介護保険における地域支援事業とは一体何なのかということについて、介護の現場で活躍するプロの方にも役立つ情報込みで解説しています。
皆さんは「地域支援事業」というものについてどのくらいご存知ですか?
介護を必要としている方や家族に介護が必要な方がいるという方ならば是非知っておいていただきたいのがこの地域支援事業です。
この地域支援事業は2006年に創設されたものなのですが、一体どのようなものなのでしょうか?
ここでは介護保険における地域支援事業とは一体何なのかということについて、介護の現場で活躍するプロの方にも役立つ情報込みで解説していきますので、介護を必要としている方や家族に介護が必要な方がいるという方は特に、また、地域支援事業について知りたいという方も是非この記事をご覧いただければと思います。
介護保険の地域支援事業とは?概要や役割をご紹介!
地域支援事業とは、介護保険法の改正によって2006年に創設された介護保険の介護予防事業のことです。
日本では40歳になると自動的に介護保険に加入することになっており、介護保険の被保険者となるため介護保険料を支払わなければならなくなります。
そして、その介護保険料の支払いに対する保険給付として要介護状態や要支援状態になった場合には様々な介護保険サービスを利用することが可能になっています。
この介護保険サービスは要介護認定において「要支援1・2」または「要介護1~5」と判定された方しか利用することができないと定められていますが、地域支援事業は要介護認定で「非該当(自立)」と判定された方でも利用することが可能になっています。
本来であれば介護を受ける必要のない健康な身体で、日常生活を送ることが一番の理想となっており、万が一、要介護状態や要支援状態になったとしても、これまで住み慣れた自宅や地域で自立した生活を送ることが求められます。
このため、介護が必要になる前から予防介護を行い、要介護状態や要支援状態になった場合でもできる限り自立した日常生活を送ることができるようにするという目的で地域支援事業はスタートしており、介護保険の基本理念を徹底するための事業としても位置づけられています。
地域支援事業は、要介護認定において「要介護1~5」と判定された方が利用することができる介護保険サービス、「要支援1・2」と判定された方が利用することができる介護予防サービスと並ぶ介護保険制度における3つの柱といわれています。
地域支援事業は「介護予防事業」「包括的支援事業」「任意事業」の3つの事業に分かれており、その中核となっているのが、今回紹介する「介護予防事業」です。
ちなみに「包括的支援事業」とは地域包括支援センターが行っている相談業務等のことで、「任意事業」とは市町村が独自の工夫に基づいて行っている事業のことをいいます。
介護保険の地域支援事業の対象者について
地域支援事業における介護予防事業には、対象者別に2つの種類があります。1つは65歳以上の全ての高齢者を対象としている「介護予防一般高齢者施策(一次予防事業)」で、もう1つは要支援状態や要介護状態になる可能性が高い虚弱な高齢者を対象としている「介護予防特定高齢者施策(二次予防事業)」です。
ここでは2つの介護予防事業について解説していきます。
その① 介護予防 ~一般高齢者施策~
65歳以上のすべて高齢者の方が対象となっているこの介護予防事業では以下のような事業が行われています。
[介護予防普及啓発事業]
介護予防に関するパンフレットなど、情報の提供[地域介護予防活動支援事業]
ボランティア活動などを活用した介護予防活動の支援引用元: 「地域支援事業における介護予防事業」
その② 介護予防 ~特定高齢者施策~
要支援状態や要介護状態になる可能性の高い虚弱な高齢者(市町村に「特定高齢者である」と認められた方)が対象となっているこの介護予防事業では以下のような事業が行われています。
ただ、「介護予防一般高齢者施策」とは異なり、「介護予防特定高齢者施策」を利用するためには必要に応じて介護予防ケアプランが必要になってくる場合があります。
こ介護予防ケアプランは地域包括支援センターに作成を依頼することが可能になっており、作成には一切費用がかからず、無料にて作成して貰うことができます。
[二次予防事業対象者把握事業]
基本健康診査などによる虚弱な高齢者の把握[通所型介護予防事業]
地域の公民館などに通って受ける介護予防サービス[訪問型介護予防事業]
通いのサービスが利用できない方へ自宅へ訪問してくれる介護予防サービス引用元: 「地域支援事業における介護予防事業」
サービス開始までの流れについて
介護保険の被保険者が介護保険サービスを利用するためには、要介護認定の申請を行い、介護認定調査、審査判定などを経てケアプランを作成する必要がありますが、地域支援事業のサービスを利用するための流れは全く異なってきます。
① 市町村が行っている基本健康診断を受ける
「これからも今までのように元気に暮らしたい」「まだまだ介護が必要ではないが、最近体力が衰えてきたように感じる」というような方はお住まいの市町村が行っている基本健康診断を受けてみましょう。
受けるためには申し込みが必要になりますので、お住まいの市町村の担当窓口において申し込みを行うようにしてください。
② 介護予防の生活機能評価を受ける
申し込んだら、基本健康診断に行って「介護予防の生活機能評価」を受けます。
ここでは健康診断の結果を基にして健康診断の担当医が「介護要望の必要度」に関する判定を行ってくれます。
健康診断の結果とは、身体測定、問診、その他検査の他、自分でチェックを行う基本チェックリストも含まれています。
③ 一般高齢者と特定高齢者のいずれかに判定される
市町村は健康診断の担当医が下した判定結果を踏まえた上で、その高齢者が「一般高齢者」であるか「特定高齢者」であるのかを決定します。
「一般高齢者」と判定された方は、介護予防プログラムへの参加が必要ないと判定されたということであり、利用することができるのは「介護予防一般高齢者施策(一次予防事業)」のサービスとなります。
一方で、「特定高齢者」と判定された方は介護予防プログラムへの参加が望ましいと判定されたということであり、「介護予防特定高齢者施策(二次予防事業)」のサービスを利用することが可能になります。
まとめ
ここまで介護保険における地域支援事業とは一体何なのかということについて、介護の現場で活躍するプロの方にも役立つ情報込みで解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように介護保険には地域支援事業という介護予防事業が存在しています。通常の介護保険サービスが要介護認定において「要支援1・2」または「要介護1~5」と判定された方しか利用することができないのに対して、この地域支援事業は要介護認定において「非該当(自立)」と判定された方でも利用することが可能になっています。
このため、今はまだ要支援や要介護状態ではないが、自分の体力や気力が低下していると感じている方はお住まいの市町村の介護予防の生活機能評価を受けるようにしてください。
解説してきたような予防事業を利用することによって、将来的に介護が必要な状態になるのを防ぐことができるかもしれませんので、早め早めに行動するようにしたいですね。