この記事では介護保険料を適切に納めていない場合の罰則について、また、介護保険サービスを利用した際の自己負担割合につても解説しています。
日本では40歳になると介護保険に加入することになっており、自動的に介護保険の被保険者となるため介護保険料を支払わなくてはならなくなります。
介護保険制度は公費と被保険者(65歳以上の第一号被保険者と40歳~64歳までの第二号被保険者)が支払う保険料を財源として運営されているため、被保険者の方には介護保険料を納める義務が生じるのです。
では、義務となっている介護保険料を支払わなかった場合には一体どうなるのでしょうか?]
介護保険料を適切に納めていない場合の罰則について、また、介護保険サービスを利用した際の自己負担割合につても解説していきますので、介護保険料を滞納したりするとどうなるのかということについて詳しく知りたいという方は是非この記事をご覧ください。
現在の介護保険サービスの負担について
介護保険の被保険者は介護が必要であると認められると介護保険サービスを利用することが可能になっており、サービスを利用する際にかかった費用の1割(所得に応じて2~3割)を自己負担として支払うことになっています。
ここでは自己負担割合はどのような基準で決定されているのかということについて、それぞれの負担割合の背景と共に解説していきます。
その① 1割負担者
介護保険制度は、介護を必要としている高齢者やその介護を行っている家族を社会全体で支えていこうという目的で2000年にスタートしました。
介護保険がスタートした当初は全ての被保険者が1割の自己負担で介護保険サービスの利用が可能でした。
1割負担の対象となる方は後に解説する2割負担と3割負担に該当しない方で、現在でも多くの方が1割負担の対象となっています。
また、所得に応じて負担割合が異なってくるのは65歳以上の第一号被保険者のみであり、40歳~64歳までの第二号被保険者の方は所得に関係なく一律で1割負担となっています。
その② 2割負担者
介護保険制度の見直しは定期的に行われていますが、2015年に行われた見直しによって一定以上の所得がある方に関しては介護保険サービスを利用した際の自己負担が1割から2割に引き上げられることになりました。
この見直しで2割負担になった方は約33万人といわれており、全体の2割となっています。
この2割負担の対象となる方は以下のような方です。
- 合計所得金額が160万円以上
- 年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身世帯で280万円以上、夫婦世帯で346万円以上の場合(単身世帯で年金収入のみの場合は280万円以上に相当)
※「合計所得金額」とは給与所得・事業収入などの収入から給与所得控除や必要経費を控除した後の金額で、「その他の合計所得金額」とは合計所得金額から年金の雑所得を除いた金額です。
その③ 3割負担者
2015年に一部の方の自己負担割合が2割負担に引き上げられましたが、2018年の見直しでは2割負担の中で所得の高い一部の方の自己負担割合が3割に引き上げられることになりました。
現在日本は少子高齢化が叫ばれており、介護を必要とする高齢者が年々増加しています。
このため、介護保険制度をこれからも持続していくために一部の高所得者に負担をお願いするということで見直しが行われました。
この3割負担の対象となる方は以下のような方です。
- 合計所得金額が220万円以上
- 年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身世帯で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上の場合(単身世帯で年金収入のみの場合は344万円以上に相当)
その④ 分かりやすくフローチャートでご説明
文章だけではわかりにくいかもしれませんので、フローチャートにて自分がどの負担割合となるのかを確認してみて下さい。
介護保険の保険料について
ここまでは介護保険サービスを利用した際の自己負担割合について解説してきましたが、ここからは介護保険の被保険者が支払うことになっている介護保険料について解説していきます。
その① 滞納すると罰則が…
介護保険料の支払いは介護保険被保険者の義務となっていますが、滞納してしまうと罰則やペナルティを受けることになります。
まず、介護保険料の支払いが納付期限までに行われないと保険者(市町村)から督促状が届くことになり、本来なら支払わなくてもいい延滞金や督促料という追加料金がかかってきます。
督促状が届いてもなお介護保険料の支払いが行われない場合は、滞納期間に応じて以下のようなペナルティが科されることになります。
[滞納期間が1年以上の場合]
介護保険料の滞納期間が1年を超える場合には、介護保険サービスを利用した際の支払い方法が変更されるというペナルティが科されることになります。
通常では、サービスにかかった費用の1割(所得に応じて2~3割)を支払うことになっていますが、1年以上滞納が続いている方はサービスにかかった費用の全額(10割)を支払い、後から保険者への申請を行うことによって所得に応じた給付費が払い戻されるというかたちになります。
[滞納期間が1年6ヶ月以上の場合]
介護保険料の滞納期間が1年6ヶ月を超える場合には、利用料を全額負担した後に申請によって払い戻される給付費の一部もしくは全部が差し止められるという措置が講じられる場合があります。
滞納が続く場合には、この差し止められた分から介護保険料が差し引かれるということになります。
[滞納期間が2年以上の場合]
介護保険料の滞納が2年を超える場合には、ペナルティが最高レベルにまで引き上げられることになり、介護保険サービスを利用した際の自己負担割合が3割にまで引き上げられることになります。
また、介護保険サービスを利用した際の自己負担が高額になった際に利用することができる「高額サービス費」という制度を利用することができなくなりますので、自己負担が非常に高額になってくることになります。
その② 自己負担が4割になる場合も…
先程の項目では、介護保険料を支払っていないとペナルティが科せられ、滞納が2年以上になると自己負担割合が3割に引き上げられると解説しました。
ただ、2018年の介護保険の見直しで、先の見直しにおいて2割負担となった方の中の一部の高所得者については自己負担割合が3割に引き上げられることになりました。
このため、この見直しによって自己負担割合が3割になった方については、適切に介護保険料を納めていない場合の自己負担が4割に引き上げられることになります。
まとめ
ここまで介護保険料を適切に納めていない場合の罰則について、また、介護保険サービスを利用した際の自己負担割合につても解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、被保険者が支払っている介護保険料は介護保険制度を運営していく上で重要な財源となっており、支払いが義務となっているため滞納を続けると様々なペナルティを受けることになります。
介護保険の被保険者の中でも若い方などは元気であるため介護保険料の支払いが無駄だと感じることもあるかと思いますが、介護が必要になる「その時」はいつ訪れるか分かりません。
しっかりと介護保険料を支払っていないと適切な介護を受けることができなくなるかもしれませんので、介護保険料はしっかりと支払うようにしましょう。