この記事では介護保険を活用したリフォームについて、そのやり方などについても解説しています。
介護保険には様々な介護保険サービスがありますが、その中の1つに住宅改修という介護保険サービスがあることを皆さんはご存知でしょうか?
高齢者の中には最期まで住み慣れた自宅で過ごしたいと望まれる方が多いですが、実際身体機能が低下してくると住み慣れた自宅であっても住みづらく感じることが多くなると思います。
ただ、この住宅改修は介護保険を利用して自宅を住みやすい環境へリフォームすることができるため、最期まで自宅で住み続けたいと願う高齢者の方の希望を叶えることが可能になっています。
ここでは介護保険を活用したリフォームについて、そのやり方などについても解説していきますので、興味のある方は是非ご覧ください。
介護保険とリフォームの関係
介護保険とは介護を必要としている高齢者とその介護を行っている家族を社会全体で支えていくために2000年にスタートした制度です。
日本では40歳以上になると自動的に介護保険に加入することになっており、介護保険の被保険者として介護保険料を支払うことになります。
介護保険の被保険者は介護が必要と認められると介護保険サービスを利用することが可能になっていますが、介護保険サービスと聞くと訪問介護や通所介護といった身体的な介護を連想する方が多いかと思いますが、実は介護保険サービスの中にも介護保険を利用してリフォームを行うことができるものがあります。
介護保険を利用したリフォームは住宅改修と呼ばれており、身体機能が低下した高齢者が住み慣れた自宅でこれからも暮らし続けることができるようにするために介護保険を利用することができます。
介護保険を活用したリフォームの条件
介護保険を利用したリフォームである住宅改修ですが、行うためにはいくつかの条件をクリアしておく必要があります。
先程の項目でも触れましたが、まず住宅改修を行う方が介護保険の被保険者であり、要介護認定を受けている必要があります。
要介護認定はお住まいの市町村の担当窓口において申請することが可能になっており、介護認定調査や審査判定などを経て最終的な要介護度が通知されます。
この要介護認定ですが、65歳以上の第一号被保険者の方は介護が必要になった原因がどのようなものであっても要介護認定を受けることができますが、40歳~64歳までの第二号被保険者の方は末期のがんや関節リウマチ等を始めとする16種の特定疾病が原因で介護が必要になったと認められなければ要介護認定を受けることができません。
また、住宅改修では行うことができるリフォームの種類が決まっており、定められたもの以外のリフォームでは介護保険を利用することができません。
住宅改修によって行うことができるリフォームは以下の6つとなります。
① 手すりの取り付け(玄関・廊下・階段・浴室・トイレなどに設置するもので、取り付けに工事を伴うもののみが対象)
② 段差や傾斜の解消(玄関・廊下・浴室・トイレなどの室間の段差や傾斜の解消)
③ 滑り防止・移動の円滑化を目的とした床材の変更(車いすでは移動しにくい畳や滑りやすい床を固い床材やフローリングなどに変更)
④ 開き戸から引き戸への変更や扉の撤去(アコーディオンカーテンへの取り替えやドアノブの変更・戸車の設置なども対象)
⑤ 和式便器から洋式便器への変更(洋式から洋式への変更は対象外)
⑥ その他①~⑤の工事に付帯して必要となる工事
介護保険を活用したリフォームの費用
住宅改修を行う際にリフォームの対象となる分の工事費は、認定された要介護度にかかわらず支給限度額を20万円として被保険者に対して支給されます。
この20万円は一度で使い切らなければならないという決まりはないため、範囲内であれば何度住宅改修を行っても構いません。
例えば住宅改修にかかった費用が10万円だったとします。
自己負担が1割の方ですと、この場合の自己負担額は1割の1万円となり、残りの9万円は介護保険による負担となります。
ただ、住宅改修にかかった費用が25万円だった場合は、20万円の1割である2万円と超過分の5万円の計7万円が自己負担となります。
介護保険でのリフォームの方法とやり方
介護保険を利用したリフォームを行うためには以下のようにいくつかの必要な手続きがあります。
勝手にリフォームを行ってしまっては介護保険の給付対象になりませんので注意してください。
① 相談
住宅改修を行いたいという場合には、まずケアマネージャーや地域包括支援センターにて相談を行うようにしてください。
改修が必要な場合にはケアマネージャーと改修プランについての検討を行い、住宅改修を行う事業者の選択を行います。
② 事業者との契約
ケアマネージャーに同席してもらった上で、住宅改修を行う事業者に改修を行う箇所や工事の内容等についての確認を行ってもらい、見積書を作成した上で契約を行います。
③ 申請
住宅改修を行う際にはお住まいの市町村の担当窓口において事前申請が必要になってきます。事前申請には「住宅改修費支給申請書」「住宅改修の理由書」「見積書」「工事図面」「改修前の状況を確認することができる写真」等が必要になってきます。
④ 施行
申請を受けた市町村は住宅改修の対象となるかを審査し、対象となる場合にはその旨の通知が届きます。
審査に通ったら工事を開始します。
⑤ 支払い
工事が完了したら、工事にかかった費用を一旦全額事業者に支払い、事業者から領収書等を受け取ります。
⑥ 支給申請
自己負担分以外の費用に付いての払い戻しを受けるため、お住まいの市町村に対して支給申請を行います。
この支給申請では「住宅改修支給申請書」「領収書」「工事内訳書」「改修後の状況が分かる写真」等が必要になってきます。
⑦ 払い戻し
申請が通ると、自己負担分を除いた金額が市町村から支給されます。
リフォームでの注意点
最後に住宅改修を行う際の注意点について解説していきます。
支払い方法について
住宅改修の流れを解説した際にも触れましたが、基本的に住宅改修では一旦改修にかかった費用の全額を事業者に対して支払い、その後市町村に対して支給申請を行うことによって保険給付分が支給されることになっており、これを「償還払い」といいます。
ただ、住宅改修の支払い方法には「受領委任払い」というものもあり、こちらは事業者に対しての支払いを行う際にかかった費用の全額ではなく自己負担分(所得に応じて1~3割)を先に支払うという支払い方法です。
ただ、受領委任払いを行う際には受領委任払いの申請について事業者からの同意を得る必要があります。
業者とのトラブル防止
介護保険サービスを提供する際には基本的に市町村からじぎょうしゃとしての指定を受ける必要がありますが、住宅改修についてはこのような指定を受ける必要がありませんので、どのような建築業者、工務店、リフォーム会社でも住宅改修を行うことが可能になっています。
ただ、これによって介護保険制度に関する理解が低い事業者も介護保険を利用したリフォームを行うことが可能になっていますので、改修がスムーズに進まなかったり様々なトラブルが発生したりする場合があります。
このため、住宅改修を行う際には、その事業者が「介護保険に関する知識を持っているのか」「介護保険を利用したリフォームの経験があるのか」ということについて見極める必要があります。
これらの情報はケアマネージャーが豊富に持っていますので、事業者を選択する際にはケアマネージャーのアドバイスを良く聞くようにしましょう。
順番を守る
介護保険を利用してリフォームを行う際には事前申請と事後申請(支給申請)を行う必要があります。
事前申請を行わずに住宅改修を行いますと、介護保険の給付対象になりませんので必ず順番を守るようにしましょう。
また、事後申請についても必ず行う必要があり、払い戻しの申請が必要な償還払いを利用した方は当然ですが、払い戻しの必要がない受領委任払いを利用した方についても事後申請は必要ですので忘れず行うようにしましょう。
まとめ
ここまで介護保険を活用したリフォームについて、そのやり方などについても解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、介護に必要であると認められるリフォームについては介護保険を利用することが可能になっています。
ただ、介護保険を利用してリフォームを行う際には事前申請が必ず必要になってきますので、忘れないように行うようにしてください。
勝手に工事を開始してから申請したり、工事が全て完了してから申請したりしたとしても介護保険の給付対象とは認められませんので、このような場合はリフォームにかかった費用を全額自己負担することになります。
また、リフォームを行う際には事業者を選択する必要がありますが、スムーズに事が運ぶようにケアマネージャーのアドバイスを良く聞いた上で事業者の選定を行いましょう。