この記事では2018年に行われた介護保険制度の改正における改正の概要や改正のポイントなどについて解説しています。
40歳以上の国民が加入することになっている介護保険制度ですが、この制度が3年ごとに改正を行い見直されていることをご存知でしょうか?
この改正ですが、直近ですと2018年に行われておりますが、皆さんはこの改正によって改正を行う前の介護保険制度とどのような違いが生まれたのかご存知ですか?
ここでは2018年に行われた介護保険制度の改正における改正の概要や改正のポイントなどについて解説していきますので、介護保険制度の改正について詳しく知りたいという方は是非この記事をご覧ください。
2018年介護保険制度の改正の概要
介護保険の改正は3年ごとに行われることになっていますが、2018年に行われた改正では「地域包括ケアシステムの推進」「自立支援・重度化防止に資する質の高いサービスの実現」「多様な人材確保と生産性の向上」「介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続性の確保」という4つを基本として様々な制度変更等が行われました。
この4つの考え方ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか?
その① 地域包括ケアシステム
地域包括ケアシステムですが、これは高齢者がこれまで住み慣れた地域で最期まで生活を送ることができるように介護・医療・介護予防・生活支援等のサービスを一体的に提供することができるケア体制のことをいいます。
今回の介護保険制度の改正によって、医療機関とケアマネージャーの連携強化、医療リハビリから介護リハビリへのスムーズな移行を可能にするというようなことが盛り込まれており、身体状況が中・重度の高齢者を医療と介護が連携することによって支えていくための体制づくりを推進しています。
その② 自立支援・重度化防止に資する質の高いサービスの実現
リハビリテーションを重視したり褥瘡の発生を防止したりするなど、自立支援や重度化防止に役立つ介護サービスの実現を目指しています。
今回の改正で、自立支援や重度化防止に役立つ介護サービスについては「介護報酬の増額又は加算サービス対象として新設する」とされており、高く評価されるようになります。
また、「アウトカム評価」という要支援状態・要介護状態の維持改善率が重視されるようになり、介護予防訪問リハビリテーションや通所介護にもこの評価方法が導入されることになりました。
その③ 多様な人材確保と生産性の向上
現在日本は高齢化社会となっているため、年々介護を必要とする高齢者の数が増えていますが、一方で介護を行う人材は不足しているため団塊の世代が75歳以上になる2025年には介護サービスを利用したくても利用することができない「介護難民」発生することになるといわれています。
今回の改正では介護難民等の問題に対する備えとして、ホームヘルパーしか行うことができなかった訪問介護における生活援助をホームヘルパーの資格を持っていなくても行うことができるようにしたり、介護ロボットのケイティ酢用を促進させるために介護報酬の加算対象に介護ロボットの導入を加えたり、医師がテレビ電話でリハビリテーション会議に参加することを認めたりというようなことが新たに定められました。
その④ 介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続性の確保
今回の改正では介護保険制度を安定的に継続していくために、介護保険サービスの適正化が行われます。
介護保険サービスの適正化を行う必要性の1つに一部の悪徳業者の存在があります。福祉用具貸与がわかりやすく、制度に詳しくない利用者に対して他の事業者と比べて著しく高いレンタル料金を提示する事業者がいたため、そのような悪意のある価格設定を防ぐために新たに上限金額が設けられました。
この他にもサービス利用時の自己負担割合の見直し、長時間の通所リハビリの基本報酬の見直し、訪問看護の報酬体系の見直し等が行われます。
改正のポイント
先程の項目では2018年の改正の概要について解説しましたが、ここでは知っておく必要がある2018年の改正におけるポイントについて解説していきます。
その① 2018年4月から
今回の改正によって2018年4月からは以下の4つがスタート又は変更されることになります。
① 介護医療院の創設
先程も申しあげたように日本は高齢化社会となっていますので、今後も年々介護を必要とする高齢者が増加していくことになります。
このような状況に対応するための新しい介護保険施設として「介護医療院」が創設されます。
この介護医療院は長期間にわたって療養するための医療と日常生活を送る上での介護を一体的に受けることが可能になっています。
下位右折することができる主体は医療法人・地方公共団体・社会福祉法人といった非営利法人となります。
② 「共生型サービス」のスタート
共生型サービスとは、高齢者と障害者の方が同一の事業所でサービスを受けやすくするためのもので、介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に提供するためのサービスとなります。
これまでの制度では介護保険サービスを提供している事業所が障害福祉サービスを提供する場合にはそれぞれの指定基準を満たしている必要があったため、障害福祉サービスを利用していた方が介護保険サービスに移行する際に事業所を変えなければいけないという不便さがありました。
ただ、今回の改正によってこの不便さが解消されることになります。
③ 介護保険の財源の負担割合の変更
介護保険の財源は公費が50%(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)、被保険者が支払う介護保険料が50%(第一号被保険者22%、第二号被保険者28%)となっていましたが、高齢者が増加していることに伴って、第一号被保険者の負担割合が23%に、第二号被保険者の負担割合が27%になります。
④ 要介護認定の有効期間の延長(更新申請のみ)
要介護認定の更新申請を行った場合の有効期間はこれまで最長で24ヶ月でしたが、最長36ヶ月に変更されます。
その② 2018年8月から
今回の改正によって2018年8月からは以下の点について変更されることになります。
① 一定以上の所得がある第一号被保険者の方の自己負担割合の変更
2015年の改正によって一部の高所得者の自己負担割合が2割となりましたが、今回の改正で先の改正で2割負担となった方の中の一部の方については自己負担割合が3割になることになります。
3割負担となるのは以下の2つの条件を満たす方です。
- 合計所得金額が220万円以上
- 年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身世帯で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上の場合(単身世帯で年金収入のみの場合は344万円以上に相当)
なお、第二号被保険者の方は所得に関係なく一律で1割負担のままで変更はありません。
その③ 2018年10月から
今回の改正によって2018年10月からは以下の点について変更されることになります。
① 福祉用具貸与価格に関する見直し
これまでの福祉用具貸与ではレンタルを行う事業者によって価格に亜があるのが実情でしたが、今回の改正で貸与対象商品ごとにレンタル価格の全国平均が公表されることになり、レンタル価格の上限も設定されることになります。
まとめ
ここまで2018年に行われた介護保険制度の改正における改正の概要や改正のポイントなどについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
解説してきたように、2018年の改正では介護保険サービスを利用した際の自己負担割合が最大で3割に引き上げられるなどサービス利用者に大きな影響を及ぼす改正が行われました。
サービスを利用した際の支払いが増える方もでてきますが、これは介護保険制度を存続させていく上で必要不可欠な改正であるためしょうがないという他ありません。
ただ、福祉用具貸与の価格の適正化など利用者にとってはプラスとなる改正もありますので、介護保険を利用されている方は是非この記事を参考にしていただいて介護保険改正のポイントを理解していただければと思います。