この記事では介護保険サービスを利用した際に支払うことになる自己負担の割合はどのようにして決まるのかということについて、また、その決定に預貯金や現金等は影響してくるのかということについて解説しています。
日本では40歳になると自動的に介護保険に加入することになっており、介護保険の被保険者となります。
介護保険の被保険者は介護が必要になった場合、介護保険サービスを利用することが可能になっていますが、その際に支払うことになる費用は介護保険サービス利用する際にかかった費用の1~3割のみとなっており、全額を支払う必要はありません。
ただ、1つ気になりませんか?この負担割合は一体どのようにして決められているのかということが。
ここでは介護保険サービスを利用した際に支払うことになる自己負担の割合はどのようにして決まるのかということについて、また、その決定に預貯金や現金等は影響してくるのかということについて解説していきますので、介護保険の負担割合について詳しく知りたいという方は是非この記事をご覧ください。
介護保険の負担割合は誰が決める?
介護保険において介護保険サービスを利用した場合、利用した被保険者はサービスにかかった費用の総額を負担するわけではなく、利用総額に対して一部だけを支払うことになっており、残りの分については保険者である市町村が負担することになっています。
被保険者が利用したサービスにかかった費用の総額に対してどの程度の負担が必要なのかということを定めたものが「負担割合」ですが、一体誰が決めているのでしょうか?
この負担割合を決定しているのは保険者である各市町村です。
負担割合は所得がどの程度あるのかということから決められることになっており、保険者は被保険者の前年度の所得に応じて負担割合を決定します。負担割合の決定は毎年行われ、7月の末頃に判定の結果が被保険者の元へ届くことになっています。
なお、この負担割合は個人ごとに決定されますので、同世帯に介護保険の被保険者が2人以上いるという場合には、それぞれ負担割合が異なることもあります。
介護保険の負担割合の判定
介護保険の負担割合には「1割負担」「2割負担」「3割負担」の3種類があり、所得に応じて決定されることになっています。
なお、所得に応じて1~3割負担となるのは65歳以上の第一号被保険者のみとなっており、40歳~64歳までの第二号被保険者の方は所得がどれほどあろうが一律で1割負担となります。
その① 1割の人
負担割合が1割となるのは以下のような方です。
- 本人の合計所得金額が160万円未満
- 課税年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身世帯で
で280万円未満、夫婦世帯で合計346万円未満の場合
その② 2割の人
負担割合が2割となるのは以下のような方です。
- 本人の合計所得金額が160万円以上
- 課税年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身世帯で280万円以上、夫婦世帯で346万円以上の場合(単身世帯で年金収入のみの場合は280万円以上に相当)
その③ 3割の人
負担割合が3割となるのは以下のような方です。
この3割負担に該当する方は12万人ほどであるといわれており、全体の3%といわれています。
- 本人の合計所得金額が220万円以上
- 課税年金収入とその他の合計所得金額の合計が単身世帯で340万円以上、夫婦世帯で463万円以上の場合(単身世帯で年金収入のみの場合は344万円以上に相当)
関係するのは合計所得金額のみ?預貯金や現金は?
先程の項目では負担割合を決定する際の所得基準について解説してきましたが、基本的に負担割合に関係してくるのは合計所得金額と年金収入のみとなっており、預貯金や現金等は反映されません。
合計所得金額とは、収入金額から必要経費に相当する金額を控除した後の金額のことをいい、医療費控除や扶養控除等の所得控除をする前の金額となります。
また、その他の合計所得金額とは、合計所得金額から年金収入にかかる雑所得を引いた後の金額となります。
なお、年金収入についてですが、障害年金と遺族年金については非課税年金であるため年金収入には含まれません。
預貯金や現金が影響するのは『負担限度額認定証』
介護保険には負担限度額認定制度というものが設けられており、要件をクリアすることによって介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型病床)を利用する際にかかってくる食費と居住費を軽減することが可能になっています。
この負担限度額認定制度を利用する際の要件には以下のように「所得の基準」と「預貯金等の基準」が設けられており、制度を利用する際には預貯金等が影響してくることになります。
- 所得基準
- 本人及び同一世帯内全ての方が住民税を課税されていない
- 本人の配偶者(別世帯も含む)が住民税を課税されていない
- 預貯金等の基準
預貯金等の合計金額が、配偶者がいない場合は1,000万円以下、配偶者がいる場合は合計で2,000万円以下である
※預貯金等には、預貯金(普通預金・定期預金)、有価証券(株式・国債・社債・地方債等)、投資信託、金・銀(購入先の口座残高によって評価額を容易に把握することができる貴金属)、タンス預金(現金)が該当することになります。
負担限度額認定制度を利用するためにはお住まいの市町村の担当窓口において申請を行う必要があり、これらの要件を満たしていると判断されると「負担限度額認定証」というものが交付されます。
ただ、負担限度額認定証の交付を受けていたとしても、所得に応じて「利用者負担段階」というものが設定されているため、所得等の条件によって減額される金額が変わってくることになります。
この利用者負担段階は以下のように4つの段階に分けられています。
また、段階による食費と居住費の負担限度額は以下のようになっています。
まとめ
ここまで介護保険サービスを利用した際に支払うことになる自己負担の割合はどのようにして決まるのかということについて、また、その決定に預貯金や現金等は影響してくるのかということについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
介護保険の負担割合は被保険者の所得に応じて保険者が決めることになっています。
介護保険がスタートした際には全ての被保険者が一律で1割負担であったものが、年を経るごとに2割負担の追加、3割負担の追加と負担割合が増えてきています。
介護を必要とする高齢者が年々増加している我が国では介護保険の財源は厳しいものがあり、今後は4割負担も追加されるのではないかともいわれています。