自宅に看護師などの医療従事者が来訪し、サービスの提供を行う「訪問看護」ですが、適用する保険によって1日に利用できる「訪問看護」の回数が異なります。
今回は「訪問看護」の利用回数について解説していきます。
訪問看護の1日の利用回数
冒頭でも紹介したように保険によって、1日のうちに利用できる「訪問看護」の利用回数が異なります。
具体的には適用する保険が「介護保険」か、「医療保険」かによって、1日のうちで「訪問看護」を利用できる回数が変化します。
次に「介護保険」と「医療保険」それぞれの保険を適用した場合、1日に利用できる「訪問看護」の回数について解説していきます。
介護保険であれば、1日のうち複数回の利用が可能
「介護保険」で「訪問看護」を利用した場合、1日のうち「訪問看護」を複数回利用することができます。
「介護保険」を適用した「訪問看護」の利用について、回数制限は定められていません。
しかし「訪問看護」に限らず、「介護保険」でサービスの提供を受けるときには「区分支給限度額」に気を配らなければなりません。
「区分支給限度額」とは、1か月間に「介護保険」で利用できる介護サービスの限度額になります。
「区分支給限度額」は要支援度、要介護度によって異なります。
要支援度、要介護度別の「区分支給限度額」は次の通りです。
この限度額は利用料金の限度額ではなく、「介護保険」からの支払いになる料金の限度額であるため、食費や居住費などの実費となる利用料金を除いた金額になります。
「区分支給限度額」の対象となる介護サービスは、1か月間に利用したすべての介護サービスです。
そして「区分支給限度額」を超えて介護サービスを利用すると、限度額を超えた利用料金は実費負担(10割負担)になります。
「区分支給限度額」を超えた介護サービスの利用は、経済的な負担が大きくなるため注意が必要です。
先ほど紹介したように、「介護保険」で「訪問看護」の利用したときの回数制限がありませんが、「区分支給限度額」により、介護サービスそのものに利用の限度があることは胸にとどめておく必要があります。
利用している介護サービスが「区分支給限度額」に収まっているかどうかは、担当ケアマネージャーに確認するとよいでしょう。
また「区分支給限度額」を超えて介護サービスを利用したい場合にも、担当ケアマネージャーに相談することをおすすめします。
医療保険の場合は回数制限がある
「医療保険」で「訪問看護」利用した場合ですが「介護保険」での利用とは異なり、利用回数に制限があります。
原則、1日のうち1回、週3回までという利用回数の制限です。
しかし「厚生労働大臣が定める疾病」に該当する方であれば、「訪問看護」を週4回以上の利用することができます。
「厚生労働大臣が定める疾病」は次の疾病が該当します。
また病状の悪化により「特別訪問看護指示書」が発行された場合も、「訪問看護」を週4回以上利用することができます。
「特別訪問看護指示書」の発行は主治医の判断によって行われ、発行から14日間の有効期間があります。
1か月間に発行できる「特別訪問看護指示書」は原則1枚までと定められていますが、真皮を超える褥そうのある方や気管カニューレを使用している方であれば、「特別訪問看護指示書」を1か月間に2枚発行することができます。
いずれにしろ、「特別訪問看護指示書」の発行には主治医の判断を必要とするため、「医療保険」で「訪問看護」を利用するときの回数について、要望や不明な点がある場合には主治医や病院など医療機関の相談窓口に問い合わせるとよいでしょう。
原則、訪問する看護師は1人
「訪問看護」を利用した時に来訪する看護師は、原則1人となっています。
しかし「訪問看護」を利用される方の状態によって、複数名の看護師が来訪しサービスの提供が行われる場合があります。
利用者の身体的理由により、1人の看護師による「訪問看護」が困難と認められる場合や、「特別訪問看護指示書」の発行された場合などです。
また「医療保険」を適用した場合に限りますが、先ほど紹介した「厚生労働大臣が定める疾病」に該当する方や「厚生労働大臣が定める状態等」に該当する方も、複数名の看護師による「訪問看護」を受けられる可能性があります。
「厚生労働大臣が定める状態等」は次の通りです。
なおそれぞれの表をご覧になっていただければおわかりいただけるでしょうが、「厚生労働大臣が定める疾病」が「疾病」の一覧であるのに対し、「厚生労働大臣が定める状態等」が「状態」の一覧であることに注意が必要です。
複数名の看護師による「訪問看護」の利用時には加算の対象になり、利用料金が割り増しになる可能性があります。
複数名の看護師による「訪問看護」を希望する際には、「訪問看護」を提供している事業所に確認することを強くおすすめします。
また利用料金に関しても、複数名の看護師による「訪問看護」を利用する前に確認にしておきましょう。
介護保険で訪問看護を利用するにはどうしたらいい?
病院などの医療機関を受診したときに利用する「医療保険」とは異なり、「介護保険」の利用には事前に行わなければならない手続きが存在します。
次に「介護保険」で「訪問看護」を利用するには、どうすればいいかを解説していきます。
介護保険を利用するには要支援、要介護認定を受けることが大切
「介護保険」の利用には要支援、要介護認定を受ける必要があります。
要支援、要介護認定を受けるには、「訪問看護」を利用予定の方が住んでいる市区町村に要支援、要介護認定の申請を行なわなければなりません。
要支援、要介護認定の申請には「介護保険被保険者証」や申請書等の書類が必要になります。
なお申請を行うのは「訪問看護」を利用予定の方でなく、家族であっても問題有りません。
まずは地域支援包括支援センターへ相談
「介護保険」で「訪問看護」を利用するに際し、要支援、要介護認定の申請だけでなく、「訪問看護」を提供している事業所の所在地や、利用までの流れについて不安があるのであれば、「地域包括支援センター」へ相談がするとよいでしょう。
「地域包括支援センター」は地域に住む高齢者をはじめとした、介護が必要な方をサポートする目的で設置されており、「訪問看護」をはじめとした介護サービスの利用についての相談ごとを受け付けています。
「地域包括支援センター」の所在地はインターネットで検索を行うか、市区町村の介護保険を担当している窓口にて確認できます。
なお「訪問看護」を利用予定の方が住んでいる市区町村に設置された「地域包括支援センター」へ、相談すると要支援、要介護認定の申請等の手続きがスムーズに行えます。
まとめ
保険の違いによる「訪問看護」の利用回数から、「介護保険」で「訪問看護」を利用するにはどうしたらよいか解説してきました。
「介護保険」と「医療保険」では「訪問看護」を利用する回数制限が異なることや、「介護保険」の利用については「地域包括支援センター」へ相談を行うとよいことがおかわりいただけたのではないでしょうか。
訪問看護の利用回数についてまとめると
- 「介護保険」を適用した「訪問看護」では、「区分支給限度額」以内であれば利用回数に制限はない。
- 「訪問看護」を「医療保険」で利用する場合は、原則週3回までの利用制限があり、「厚生労働大臣が定める疾病」に該当する方や「特別訪問看護指示書」の発行がされた場合には、「訪問看護」を週4回以上利用することができる。
- 要支援、要介護認定の申請についてだけでなく、「介護保険」の利用については「地域包括支援センター」へ相談するとよい。
ということがあります。
同じ「訪問看護」でも適用になる保険によって、利用回数が異なりますので、「訪問看護」の利用回数についてわからないことがあれば、主治医や病院など医療機関の相談窓口に確認するとよいでしょう。
また「介護保険」を利用しているのであれば、担当ケアマネージャーに「訪問看護」の利用回数について確認するのも選択肢の1つです。
特にはじめて「訪問看護」を利用するときには、不安やわからないことが多くあるでしょうから、専門家や相談窓口にその都度確認するように心がけたいものです。