この記事では介護保険サービスが抱えている5つの大きな問題点について解説しています。
現在日本は少子高齢化が急激なスピードで進行しており、年々介護が必要な高齢者が増加しています。
皆さんの中にも親の介護をどのようにするか、また誰が行うのかということで悩んでいる方がいるのではないでしょうか?
ただ、介護を必要とする高齢者の増加は家庭内の問題だけではなく介護保険サービスにおいても様々な問題を生じさせており、介護保険制度そのものを揺るがすことにもなりかねない状況になっています。
さらに、2,025年には団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に突入することもあり、日本の介護の将来について不安視されている方も多いのではないかと思います。
ここでは介護保険サービスが抱えている5つの大きな問題点について解説していきますので、介護保険サービスが抱えている問題点について詳しく知りたいという方は是非この記事をご覧ください。
財源が不十分で介護サービスが受けられない人が出ている
現在日本は少子高齢化社会であるため年々高齢者が増加しており、それに伴って介護を必要とする高齢者も増加しています。
年々生産人口が減少していますので、税収も減少しており介護保険の財源は現在進行形で厳しい状態にあります。
財政面の問題もあり、年々増加する介護を必要とする高齢者が要介護認定を受けているにもかかわらず介護サービスを利用することができないということが起こってきています。
2025年には団塊の世代が後期高齢者に突入することになっており、現在でも厳しい財源がさらに厳しくなります。
このため、介護保険制度を維持するためにも介護保険料の負担を40歳から引き下げるという案や自己負担割合を最大4割負担にするという案が議論されています。
このように要介護認定を受けているにもかかわらず介護サービスを利用することができない65歳以上の高齢者のことを「介護難民」といいます。
この介護難民ですが、民間の有識者会議によると団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年には東京圏で約13万人、全国では約43万人が介護難民となるという予測を発表しており、早急な対応が必要となっています。
保険料を払っているのに施設がまだ足りていない
先程の項目でも申しあげたように現在の日本は少子高齢化が進行しているため年々高齢者が増加しており、それに伴って介護を必要とする高齢者も増加しています。
ただ、現状の問題として介護サービスを提供する施設の数がこの高齢化のスピードに対応することができていないため、しっかりと介護保険料を納めているにもかかわらず施設に入所することができないという状態が起こってしまっています。
この問題の代表的なものが特別養護老人ホームへの入居待機者の数です。
2014年の段階では約52万人が入居待機者となっており、入居基準が要介護3に引き上げられたことによって待機者は減少したものの2017年時点でもまだ30万人の待機者がいるといわれています。
2015年の段階で団塊の世代は65歳以上の高齢者となっており、この団塊の世代が高齢化によって介護が必要となるのは時間の問題となっており、施設の確保は喫緊の問題となっています。
医療と介護の連携がスムーズに行なわれていない
在宅での介護を行うにあたって医療機関の担当医や地域のかかりつけ医といった医療従事者と介護サービスを提供している事業者といった介護従事者との連携は、介護を必要とする高齢者の生活を支えるために欠かすことができない要素となっています。
ただ、現状では連携体制の整備が進んでいないこともあり、医療分野と介護分野の連携がスムーズに行われているとはいえず、サービスの提供はそれ添えの分野で独自に行うことになっています。
このため、医療ケアが必要になってくる重度の要介護者に対する柔軟なサービス提供を行うことが難しくなっています。
今後在宅での療養が必要になる高齢者は増加していきますので、医療と介護の連携はより一層重要になってきます。
このため、2018年に行われた介護保険の改正では医療と介護が連携することによって中・重度の高齢者を支えていく体制づくりのために地域包括ケアシステムの推進が盛り込まれました。
介護保険サービス従事者の人材不足
ここまでの項目で介護を受けたくても受けることができない「介護難民」について触れましたが、介護保険サービス従事者の人材不足も介護難民を生み出す要因となっています。
現在、介護保険サービスの従事者の人材不足は深刻化しており、サービスを提供する側の事業者もサービスを提供したくてもできないというような状況が続いています。
この人材不足は今後さらに深刻化するとみられており、団塊の世代が75歳となる2025年には38万人の介護保険サービス従事者が不足するといわれています。
介護保険サービス従事者の人材が不足している大きな理由の1つが賃金が低いということです。
介護職員の平均賃金は付き22万円となっており、全産業の平均より約10万円も低くなっています。
なぜ困難にも他産業との賃金格差があるのかといいますと、そもそも介護保険制度がスタートした段階で賃金水準が低く設定されたこと、そして2015年の介護保険の改正によって介護報酬が2.27%引き下げられてしまったことが挙げられます。
他産業とこれほどまでに賃金格差がありますと介護の現場に人が集まらないのは当然のことといえましょう。
政府はこの人材不足を解消するために介護職員の賃金を月額1万円引き上げることを発表しましたが、本当に必要なのは継続して賃金の水準を引き上げていくことであり、月に1万円引き上げたからといって介護の現場に人が集まるようになるとはとうてい考えられません。
今必要なのは若者たちが介護の現場で働きたいと思うことができるような賃金に引き上げることができるような財源を確保することですが、その財源がそもそも厳しいので難しい問題となっています。
在宅介護サービスの限界
現在、介護を必要とする高齢者の増加によって膨らんでいる介護保険に関する費用を抑えようと、介護保険では要介護状態にならないように介護予防に力を入れており、要介護状態になったとしてもできる限り在宅で過ごすことを目的として日常生活支援総合事業などをスタートさせています。
ただ、在宅での介護というのは介護を行うことになる家族に非常に負担がかかることになっており、介護をする側が精神的にも肉体的にも追い詰められるということが問題となっています。
認知症の高齢者を介護している場合ですと、夜間に起き出して徘徊したりする場合がありますので、そのたびに介護者も起きなければならず、在宅介護者の6割が不眠状態にあるともいわれています。
このような場合、介護保険施設の利用やケアプランの見直し等を行うことによって介護による負担が改善されることもありますので、まずは担当のケアマネージャーに相談してみるようにしてください。
まとめ
ここまで介護保険サービスが抱えている5つの大きな問題点について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
介護保険には様々な問題が山積しています。日本の65歳以上の高齢者の人口は既に3000万人を超えており、2025年には800万人もの団塊の世代が75歳以上となり、介護保険の財政はどんどん厳しさを増していきます。
このため、介護保険の保険料も年々上昇していますし、介護保険料の支払い開始年齢の引き下げや介護保険サービスを利用した際の自己負担割合を最大4割にするなどの議論が起こっており、国としても財源の確保に必死となっています。
このため、今後国が解説してきたような介護保険が抱える問題にどのように対処していくのかを注視していく必要があります。