介護保険サービスの中に地域密着型サービスというものがあるのはご存知でしょうか?
高齢化や核家族化の影響で、地域で生活する独居高齢者や認知症高齢者が増えてきています。
地域密着型サービスの創設により、高齢者ができる限り住み慣れた地域で生活ができるよう支援されています。
このサービスは地域に密着したサービスであり住民票にも関係があります。この記事では、地域密着型サービスについて詳しく解説していきます。
地域密着型サービスについて
介護保険適用のサービスには様々なサービスがありますが、「居宅サービス」、「施設サービス」、「地域密着型サービス」の3つの種類に分類されます。
「居宅サービス」は訪問看護やデイサービスなど、要介護・要支援者が現在の居宅に住んだまま提供を受けられる介護サービスです。
「施設サービス」は特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設に入所した要介護状態にある高齢者に対して提供されるサービスです。
そして「地域密着型サービス」は、平成18年に新設されたサービスで、高齢者が身近な地域で生活し続けられるように、事業所のある市町村の要介護者・要支援者に提供されるサービスです。
地域密着型サービスでは、訪問・通所・短期入所によるサービス、認知症患者向けのサービス、特定施設や介護保険施設におけるサービスなどが提供されます。
その① 地域密着型サービスの特徴
地域密着型サービスは、介護が必要になっても住み慣れた地域で生活が継続できるように、地域ぐるみで支援する仕組みです。
今後ますます増加が予想される認知症高齢者や要介護高齢者が、介護度が重くなっても、できる限り住み慣れた地域で生活ができるようにする目的で創設されました。
居宅サービスと施設サービスは都道府県が事業所指定や指揮監督等を行うのに対して、地域密着型サービスでは市町村が事業所指定と指揮監督を行います。
そのため、地域の特性を活かし、地域の事情に即したサービスを提供することが可能です。
また、小規模な施設や滞在時間が少なく回数を多くできる訪問サービスなど、利用者のニーズにきめ細かく応えられるよう、柔軟にサービスが設定されています。
地域密着型サービスを利用することができるのは下記の方です。
- 原則65歳以上(40〜64歳で特定疾患により要介護認定を受けている方も含む)
- 要介護認定を受けている方
- 原則としてサービス事業者と同一の市町村に住民票を有する者
地域密着型サービスの種類
地域密着型サービスは、「訪問・通所型サービス」、「認知症対応型サービス」、「施設・特定施設型サービス」の3つに分けられます。
それぞれの種類のサービスについて以下に説明します。
その① 訪問・通所型サービス
- 小規模多機能居宅介護
小規模な施設への「通い」を中心に「訪問」「泊まり」を組み合わせてサービスを受けることができます。
複数のサービスを同じ事業所で行うため、顔なじみの職員から介護サービスを受けることができ、組み合わせも柔軟に対応することができます。
利用料は介護度による定額料金となっています。利用できる事業所は1ヶ所のみで、担当のケアマネージャーも小規模多機能に在籍しているケアマネージャーへ変更になります。看護師の常駐を定めておらず、医療ケアに関してはバイタルチェックなどに限られます。
- 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
前述の小規模多機能居宅介護の「通い」「訪問」「泊まり」に看護が加わった、介護と看護が一体となったサービスです。看護師が配置されているため、医療ケアが必要な方も利用できます。要支援の方は利用することができません。
- 夜間対応型訪問介護
夜間に訪問介護を受けるサービスです。トイレ介助やオムツ交換などに対応する「定期巡回で受けられる訪問介護」と緊急時に利用者の求めに応じて介護を受けられる「臨時対応の訪問介護」があります。
定期巡回・臨時対応型訪問看護との違いは、夜間のみ対応というところです。
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
日中・夜間を通して訪問介護と訪問看護が一体となって密に連携して、定期巡回や緊急時の随時対応・随時訪問サービスを行います。
24時間切れ目なく訪問介護や訪問看護を受けられます。
その② 認知症対応型サービス
- 認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
認知症高齢者(医師により認知症の診断を受けた方)を対象としたデイサービスです。
利用定員が12名以下の少人数で家庭的な雰囲気の中、食事や入浴、レクリエーションや機能訓練などのサービスが提供されます。
一般のデイサービスとの違いは、定員が少なく設定されており、利用者は認知症と診断された方のみというところです。
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
認知症高齢者(医師により認知症の診断を受けた方)が「ユニット」と呼ばれる単位(1ユニットは最大9名)に分かれ、共同生活を送りながら、食事や入浴など日常生活の介 護を受けられる施設です。
利用者が家事を分担するなどして、リハビリをしながら認知 症症状の進行を防ぎ、安心して生活を送れるようにします。
いつも同じメンバーで生活 できるユニット型の生活環境は認知症ケアに適しています。要支援2の方から利用可能 です。
その③ 施設・特定施設型サービス
- 地域密着型入居者生活介護
指定を受けた定員30名未満の小規模な介護専用の有料老人ホームや軽費老人ホームで、少人数の入居者に対し、食事や入浴などの生活支援や介護サービス、機能訓練などが提供されます。
- 地域密着型介護老人福祉施設
定員30名未満の小規模な特別養護老人ホームで、入浴、排泄、食事等の介護、機能訓練、健康管理などのサービスが提供されます。
地域密着型サービスと住民票の大切な関係[ヤ1]
地域密着型サービスが創設され、市町村による独自の政策が進められるようになりましたが、それに伴い問題点も浮上してきています。
地域密着型サービスの整備が進んでいない地域と積極的に高齢者介護の課題に取り組んでいる地域などでは、地域密着型サービスの内容や質に格差が生まれてしまいます。
地域密着型サービスは、原則としてサービス事業者と同一の市町村に住民票を有する人が利用できるサービスとなっています。
前述したように、自治体によりサービスに格差があることにより、住民が隣の自治体へ住民票を移しサービスを受けようとするケースが多く見られています。
サービス目当ての転入は「住み慣れた地域で継続的に介護を受ける」という地域密着型サービスの本来の目的から外れることになります。
こうした地域密着型サービス目的の転入を防止するために、住民票を移しなおかつ一定期間(数ヶ月から数年)そこで生活しなければサービスを利用できなかったり、転入自体が脱法行為であると位置づけている自治体もあります。
また、やむを得ない事情であった場合、一定の条件を満たしていれば、他の地域の住民であっても利用を許可する自治体があったりと様々です。
まとめ
この記事では地域密着型サービスについて解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 地域密着型サービスは、介護が必要になっても住み慣れた地域で生活が継続できるようにする目的で創設されました。サービスを行う事業所の指定や監督は市町村が行い、地域の特性を活かし、地域の事情に即したサービスを提供しています。
- 地域密着型サービスは、小規模多機能居宅介護などの「訪問・通所型サービス」、認知症対応型通所介護などの「認知症対応型サービス」、地域密着型入居者生活介護などの「施設・特定施設型サービス」の3つに分けられます。
- 地域密着型サービスは、原則としてサービス事業者と同一の市町村に住民票を有する人が利用できるサービスとなっていますが、自治体によりサービスに格差があり、住民が隣の自治体へ住民票を移しサービスを受けようとすることが問題となっています。
地域密着型サービスは、介護度必要になっても住み慣れた地域でその人らしい生活を継続できるようにという目的で創設されたものです。
市町村が指揮監督を行っており、地域による特性も様々です。
まずは、自分が住んでいる地域には、どのような地域密着型サービスが存在するのか確認してみましょう。