介護保険サービスにおいて、デイサービスと言えば日中施設に通い、入浴や食事などの介護、リハビリを受けることができるサービスです。
また、ショートステイとは、短期間介護施設に入所して入浴や食事などの介護、リハビリを受けることができるサービスです。
どちらも要介護者本人だけではなく、家族にとっても普段できない家事をしたり、普段介護している家族自身の休息を図ったりするためにも用いられる非常に使い勝手のいいサービスです。
筆者も実際に現場で業務を行ったことがありますが、利用中の様々なトラブルによって利用を中断しなければならなくなったが、自宅に戻ることもできない…という特殊な状況に直面したことがあります。
そんなときに脳裏に浮かぶのは、「(デイサービス利用中の状況で)このまま他のショートステイに移ることはできないかな?」とか、「(ショートステイ利用中に)帰宅してもらわないといけないけど、今すぐ家族も受け入れられないだろうし、夕方までデイサービスにいられないかな?」というところです。
はたして、デイサービスとショートステイの同時利用は可能なのでしょうか?
答えは、△です。
条件付きで算定可能という旨が、「平成12年4月28日付事務連絡 介護保険最新情報vol.71 介護報酬等に係るQ&A vol.2 (参考URL:www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/qa/dl/qa-2012.pdf)にて示されています。
今回は、体験談から見えるデイサービスとショートステイを同日利用できる場合について説明していきます。
デイサービスとショートステイ両方を同日利用するケース
デイサービスとショートステイの同日利用については、「算定できるが、(ショートステイの)利用当日であっても当該入所前に利用する訪問通所サービスは別に算定できる。ただし、入所前に通所介護又は通所リハビリテーションを機械的に組み込むといった計画は適正でない。」と示されています。
これは、デイサービスとショートステイでは同様の介護サービスを受けることができるので、日常的に定期のプランとして同じ日にデイサービスとショートステイを組んでおくことはダメ。ただし、何らかの緊急的で予想外の事態が起きたときは同時利用ができますよ、ということが示されています。
まぁ、普通に考えてもショートステイは朝から利用できるのに、なぜデイサービスを利用してからショートステイに行くのか…この点は想像しずらいですよね。
実際に筆者が体験し、同日算定が可能なケースは、このようなものがありました。
ただしお伝えしておきたいのは、こういった事態に対応の中心となる専門職は、デイサービスやショートステイの職員ではなく、介護生活全体をコーディネートする介護支援専門員です。
施設職員や家族にしても、まずは緊急時は情報を介護支援専門員に集約させ、知恵を出し合って対応策を総合的に判断するというプロセスが必要ですので、頭に入れた上でご覧ください。
デイサービス利用後ショートステイを利用
例えば、デイサービス利用中に、同居している家族が急変し入院した場合などです。
介護者の都合が付かなくなった場合です。こうなると、家に帰ることができないですよね。
このような時は、デイサービスの利用を中断して受入れ可能なショートステイを利用することが可能となります。
ただし、これらのサービス提供を管理しているのはケアマネジャーです。
まず緊急事態が起きてすぐにでも対策を講じなければならない場合は、直ちにケアマネジャーに連絡することを忘れないでください。
ショートステイを中断しデイサービスを利用
逆に、ショートステイの利用を中断しデイサービスを利用したケースもあります。
ショートステイは集団生活と在宅生活の中間に位置するサービスのため、感染症対策には特に気を遣っています。
インフルエンザや感染性胃腸炎などの季節性感染症の時期になると、よく特別養護老人ホーム等で集団発生する場合があります。
老人ホームにおいて感染が広まる原因となるのは、実は外部からくる職員・面会者・併設しているショートステイやデイサービスの利用者が菌を運んでくる場合が多いと言われています。
そういったことから、ショートステイでは健康状態がよくない場合や感染症の疑いがある場合は利用を断ったり、中止してお帰り頂く場合があります。
利用中にインフルエンザ疑いの状態となり、一時的に預かってくれると日常的に利用しているデイサービスの事業所と連絡を取って、こちらの利用を中止してデイサービスに行っていただたいたことがあります。
もちろん、この場合もご家族や担当のケアマネジャーさんと連絡を取り、トラブルのないようにしっかりと調整する必要があります。
デイサービスとショートステイ両方を同日利用した場合の料金
それでは、上記のように緊急やむを得ない理由によりデイサービスとショートステイを同日利用した際の料金の取り扱いについて、確認してみましょう。
算定はどちらも可能か?
料金の算定自体については、同日利用をしたのが機械的に予定されているものでないかぎりは可能です。
ただし、その提供時間については記録のミスなどにより重なることがないように、十分に事業所双方で確認しましょう。
その場合は、直接双方でやりとりするよりも、担当のケアマネジャーさんを通じて調整するのが間違いないと思います。
送迎加算はどうなるか?
送迎加算については、算定することができませんので、誤って請求することがないように注意しましょう。
「平成15年5月30日事務連絡介護保険最新情報vol.151介護報酬に係るQ&A」において、「短期入所の送迎加算については、利用者の心身の状況、家族等の事情等から見て送迎を行うことが必要と認められる利用者に対して、原則として、送迎車により利用者の居宅まで個別に送迎する場合について算定されるものであり、短期入所サービス費の算定の有無にかかわらず、事業所間を直接移動した場合には送迎加算は算定できない。」と明示されています。
つまり、今回示したようにデイサービスを中断してショートステイを利用する場合や、その逆の場合は居宅と事業所間ではないため、送迎加算を算定することはできません。
まとめ
まとめると、デイサービスとショートステイを同日利用できるのは、あくまで特段の事情により利用者の安全確保を図る目的の場合のみということになります。
機械的に同日利用することはできないと規定されているため、パターン化されていなくとも、そもそもサービス利用表によって予定されている場合は算定できないと考えた方がよいでしょう。
算定が可能なのは、‘想定外の事態による緊急性のある場合’です。
なお、食費やショートステイの居住費など、介護保険制度対象外の料金については、あらかじめ契約書類で確認しておくか、事業所に問い合わせて確認し、後々トラブルに発展しないように配慮する必要があります。