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デイサービス等でのお風呂介助の手順や留意点について

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まとめ
某アニメには、「お風呂は命の洗濯」という名言があります。

一日の終わりにはお風呂に入るのが皆さんも日常ではないでしょうか。

デイサービスにおいても、入浴介助はメインとなる業務の一つです。

また利用者にとってもサービスを使う大きな動機になっています。

温泉が出る所に立地している事業所では、温泉による入浴介助を受けられることを宣伝文句として謳っているところも多いようです。

今回は、そんな入浴介助に関するあれこれについて、お伝えしていきます。

お風呂がもたらす効果

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お風呂に入ることには、様々なメリットがあります。

まずは身体の清潔を保つことです。身体を洗浄することで細菌感染を防いだり、汚れを落とすことで匂いを防ぐこともできます。

外見的な清潔は、良好な人間関係を維持するためにも重要です。

身体の調子を整える効果もあります。お風呂に入って身体を温めることにより発汗を促進し、血流がよくなることで新陳代謝が向上します。

新陳代謝が向上すると、便秘が改善したり関節の痛みなどで身体を動かしづらい方も浮力によって少ない負担で手足を動かし、体を動かすことができます。

更には適度な疲労感によって睡眠導入効果もあります。

皆さんも、お風呂に入るとスッキリした気分になりますよね?これが入浴したときに生じる精神的な効果です。

暖かいお湯に浸かることによって副交感神経に作用し、緊張感がとけてリラックスした気分や爽快感を得ることができるのです。

お風呂介助で留意すべきこと


入浴には様々なメリットがありますが、逆に転倒や溺水といった危険をはらんでいる行為でもあります。

近頃は脱衣室と浴室との温度差によって突然死を引き起こしてしまうヒートショックも取りざたされています。

安全への配慮

まず何よりも気を付けなければならないのは、転倒しないようにすることです。

壁に手すりを付けたり、滑りやすい床には滑り止めマット等を使用しましょう。

浴槽への出入りを楽にしたり、座って洗身ができるようにシャワーチェアがあると便利で安全です。

浴槽の縁の高さと同じくらいになるように調整しましょう。

浴槽については、深さが550~600㎜、床から浴槽の縁の上端の高さが400㎜程度が適切と言われていますので、浴槽内椅子やすのこ等を使用し調整するとよいでしょう。

下肢筋力の低下や認知症により浮力でバランスが崩れてしまう方の場合は、浴槽に設置するタイプの手すりを使用し掴まってもらったり、浮き上がり防止の福祉用具を活用しましょう。

背もたれがないシャワーチェアの足の高さを調整し、利用者の足と浴槽壁の間に挟めるようにして浮き上がりを防ぐこともできます。

プライバシーの保護

お風呂に入るということは、自分の裸の身体を他人に任せるという行為であり、大変デリケートな介護になります。

そのため細心の気配りが必要です。羞恥心を感じさせることのないように、基本的には同性の職員による介助が望ましいです。

当然ながら、他人には裸を見せたくないという方や、身体の特徴や傷等を気にして入浴を嫌がる方もいます。

もし拒否が見られた際は、1対1で個別に入浴してみたり、本人や家族に丁寧に話をきき、入浴拒否をする原因を探りましょう。

また、認知症状による入浴拒否がある場合は、誘う職員を変えたり、時間を変えて誘導したりしてみるのも有効です。

決して無理やり入浴させることをしてはいけません。

日頃からのコミュニケーションで信頼関係を築き、相手をよく観察して様々な情報を収集しておき、心身両面の状態に配慮した対応が求められます。

室温や湯船の温度

脱衣所や浴室の温度差が大きいと、ヒートショックの危険があります。

ヒートショックとは、温度の急激な上下によって血圧が急上昇または急下降してしまうことによって失神したり、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こし、命に危険を及ぼす状態になることです。

気温が下がる冬期間に起こることが非常に多いです。

なるべく脱衣室・浴室の室温を一定に保つことがポイントです。

また、いくら利用者が熱いお湯に入りたいと希望していたとしても、ヒートショックのリスクを説明し、38~40度の適温をキープしましょう。

身体観察

入浴前には、健康状態に異常がないか事前に確認する必要があります。

何気ない会話から、顔色や受け答え、本人の自覚症状などがないか確認します。

また、見た目では分からない体温や血圧、脈拍は必ず測って確認します。

身体に傷や出血、打撲跡、皮膚状態の異常はないかも確認します。

出血や皮膚の発赤、かゆみがある場合は入浴介助を介して思わぬ病気に感染してしまうリスクがあります。

お風呂介助の手順

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それでは、入浴介助について、手順に沿って確認していきましょう。

衣類やタオルなどの準備

まずは、入浴後に着替える衣類一式やタオルを準備します。

また、前述したように脱衣室・浴室の室温やお湯の温度も確認しておきましょう。

室温は、居間と同じくらいの温度(22~24度)くらいにしておきます。

バイタルサインの測定

入浴前には、必ずバイタルサイン(体温、血圧、脈拍)を計測します。

「体調はどうですか」等と声をかけて健康状態に変わりないかも確認しながら、顔色や普段と違った状態がないかも確認しましょう。

空腹や満腹状態での入浴は避けましょう。食前後1時間程度は控えた方が無難です。

また、入浴中にもよおすことがないようにトイレは事前に済ませましょう。

入浴(髪を洗う)

基本的には上から順番に洗います。

但し、利用者本人の生活習慣上、洗う部位にこだわりがある場合がありますので、その際は本人の希望に沿って行います。

髪を洗う際は、本人からシャワーの温度を確認してもらったうえで、声がけをしながら洗髪します。

シャンプーは直接頭につけず、介護員の手で泡立てて温めてから頭皮につけます。洗浄する際は爪を立てず、頭皮に傷や湿疹などがないか確認しながら指の腹でマッサージするように洗いましょう。

本人に、「かゆいところはないか」「もっと洗ってほしいところはないか」等確認しながら行いましょう。

シャンプーが耳に入るのを嫌がる方は、耳をふさいでもらうかシャンプーハットを使うなどしましょう。

入浴(身体を洗う)

本人のADLを確認し、自身で出来るところは介助せず、本人から行ってもらいましょう。

片麻痺の場合は、健側の洗浄ができないため介助します。

足元からかけ湯をしながら、皮膚が重なっている手足の関節や陰部、耳の裏、脇の下、胸の下などを特に注意して洗います。末端から中枢へ…を心掛け、手先から中心へ、足先から中心に向かって洗体し、陰部は最後に洗います。

洗髪時と同様、傷や湿疹などがないか確認しながら洗いましょう。

入浴(必要に応じて髭剃り)

介護員が髭剃りをする場合は、基本的に電動シェーバーを使います。

防水で浴室使用OKと記載のあるものを用意するとよいです。

当然ですが、複数の利用者に対し使いまわすのは止めましょう。

入浴時の髭剃りを希望する方には、通所の際に自宅から持参していただきましょう。

なお、T字やL字の髭剃り、カミソリなどを用いた髭剃りは、介護員が使用することは基本的に認められていません。

自治体により解釈が異なったり、施設の独自解釈によりやっているところもあると聞きますが、公式に厚生労働省が認めない旨の文書を出しています。

(参照:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kouzou2/bosyu11_1/yaritori/kousei1.pdf 最上段)

入浴(湯船につかる)

浴槽の温度は38~40度が適温とされていますが、利用者の持病によってぬるめにしなければならなかったり、水位の指示があったりしますので事前に確認してください。

特に血圧や心臓に病気を持っている方は注意が必要です。

お風呂に浸かっている時間は5分程度が目安とされています。

体力が落ちていたり筋力が低下したりしている場合は不安感を訴えたり、浮いてきたりして恐怖を感じる場合があります。

丁寧な介助と言葉がけを行いましょう。

また、1人介助での浴槽への出入りが困難な場合は無理せず助けを呼んで、複数人で介助しましょう。

入浴後の対応

入浴後は大判の吸水性が優れたバスタオルで速やかに体の水分を拭き取ります。

入浴直後は疲労感や血圧の変動により立位が不安定となる場合がありますので、転倒しないように注意しましょう。

椅子などを用意しておき、座った状態で拭けば特に安全です。

その後はドライヤーでしっかり髪を乾かし、水虫予防のために足の平や指の間も丁寧に水気を拭き取ってください。

温度調整できるドライヤーであれば、それを使って足を乾かすのも有効です。

お風呂に入ると汗をたくさんかきます。水分補給も忘れずに行ってください。

体力を使って疲労しているので、体調の確認をしながら休息の時間をとるようにして下さい。

また、入浴後は爪も柔らかくなっていますので、爪切りを楽に行うこともできます。

まとめ

まとめ
今回はデイサービスでの入浴介助でしたので、ある程度設備は整っていると思われます。

自宅での介助の場合は、特に住宅改修や福祉用具を積極的に活用することが大切です。

また、個人宅のボイラーは出力が小さく、また経年状態によって水温が不安定な場合もあります。

シャワーを使用する際は、介護員の指でシャワーヘッドを覆うようにして使うと、温度を確認しつつ、水圧を弱めつつ不快なく介助することができます。

ぜひ、実践してみてください。

入浴は、ただ身体を綺麗にするためだけに行っているのではありません。

気持ちよさだったり、血行促進やリハビリの効果もあったりします。

要介護者の中には、毎日入浴できずに不満を感じている方も少なくありません。

気持ちよく楽しく入浴していただけるよう、正しい介助の仕方を身につけていきましょう。

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