要介護者の心身の状態に合わせて様々な介護用品をレンタルにて安価で活用できる介護サービス、それが福祉用具貸与です。
皆さんは、要介護度によってレンタルできない品目があるのをご存知でしょうか?その品目は13種類中6種類にも及びます。
例えば車椅子。
でも、同じ要介護度でもその方によって介護が必要な部分や、その心身の状況は千差万別です。
住宅環境によっても必要な介護は変わってきます。
そんなときに、条件付きですが例外給付という仕組みが活用できます。
複雑で誤解を招きやすい制度でもあるため、詳しく説明していきたいと思います。
福祉用具貸与の例外給付とは
介護保険制度における福祉用具貸与では、要支援1・2及び要介護1と認定された方を軽度者と呼んでいます。
福祉用具には色々な種類がありますが、そのうち6種類については軽度者にレンタルすることが相応しくないとされているのです。
公的には、「その状態像から見て使用が想定しにくい一部の福祉用具(以下「対象外種目」) は原則として算定することができない」と言われています。
算定することができないというのは、サービスを利用できないと読み替えることができます。
その理由を筆者の表現を用いて分かりやすくザックリ説明すると、
比較的介護依存度が低く、移動や移乗などの動作に介助を要しない場合が多いため、当該用具そのものが必要ない(介護給付費の無駄遣い)
身体機能上必要とは考えにくい福祉用具を使用することにより、それまでは自力で行えていた動作が便利すぎる用具に依存してしまうことによって出来なくなってしまうリスクがある(自立性の低下による介護依存度の増悪)
例えば、要支援1ですが布団で寝起きしている方がいるとします。
床に直接敷いた布団から起きて立ち上がるという動作は日常的に行っているわけですが、この筋力や関節の柔らかさが必要な複雑動作を日ごろから行っているから、下半身の機能を維持できているのです。
日常生活上の中で行っているリハビリとも言えます。
これを起居動作が簡単なベッドに変更した場合、リハビリの機会が自然と奪われ、下肢筋力が徐々に低下していってしまいます。
素人が見れば加齢による機能低下に見えなくもないので、なかなか分かりづらいことです。
要介護度が決まる仕組みによって生じる溝
しかしその一方で、要介護度が決定されるプロセス上どうしても特定の動作が困難なのにも関わらず軽い要介護度で判定されてしまう場合もあります。
認定調査の結果である点数評価をベースとした情報に主治医の医学的見地からの意見や認定審査会の委員による意見で総合的に決定されるからです。
例えば「ごく短距離の歩行しかできないが、その他は殆ど自力で出来る」との評価で要介護度1と判断されたケースの場合は、車椅子があれば自分で漕いで移動することによって自立性が担保できるのに、要介護度1の軽度者だから車椅子が借りられないということになってしまいます。
例外給付とは、狭間にいる人をカバーする仕組み
このように制度の狭間にいて不具合を感じている方をカバーする仕組みとしてあるのが、例外給付という仕組みなのです。
特定の条件を満たして市町村から認められれば、軽度者の方でも対象外種目をレンタルすることができるようになるのです。
例外給付の対象品目
福祉用具貸与には全部で、以下の13品目があります。
そのうち☆マークがついているのが例外給付の対象品目です。
☆車椅子
☆車椅子付属品
☆特殊寝台
☆特殊寝台付属品
床ずれ防止用具
体位変換器
☆移動用リフト(吊り具部分を除く)
☆認知症老人徘徊感知器
手すり
スロープ
歩行器
歩行補助杖
☆自動排泄処理装置
このうち車椅子、車椅子付属品、特殊寝台、特殊寝台付属品、移動用リフト、認知症老人徘徊感知器が要介護1以下が通常はレンタル不可なもの。
自動排泄処理装置については要介護3以下が通常はレンタル不可なものとなっています。
例外給付の判断基準について
判断基準については、あくまで例外的措置であり特例なのであるという原則をもとに、適切な手順によって利用者の状態や当該福祉用具の必要性を慎重に精査し、適切なケアマネジメントに基づいて判断する必要があります。
判断基準① 下記の表に該当する者
※(注)参照
該当する認定調査項目がないため、主治の医師から得た情報及び福祉用具専門相談員等が参加するサービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントによりケアマネジャーまたは地域包括支援センター担当職員が判断します。
例えば車椅子の貸与について「日常生活範囲における移動の支援が特に必要と認められる者」とケアマネジャー等が判断した場合は、市町村への確認依頼を行う必要はありません。
(引用:http://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000016/16727/keidosya.pdf)
方法② 次の3つの要件を満たす者
要件1
ケアマネジャー等が医師の医学的な所見に基づき、下表の(1)~(3)までのいずれかに該当すると判断していること。
なお、医師の医学的な所見については主治医意見書又は医師の診断書による確認のほか、介護支援専門員等が聴取した医師の医学的所見をケアプラン(介護予防プラン含む)に記載する形で示してもよい。
要件2
ケアマネジャー等がサービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより福祉用具貸与が特に必要であると判断していること。
要件3
上記2つの条件について、市町村に書面など確実な方法により確認を受けること(各市町村によって様式が定められている場合あり)。
申請手続きについて
上記の手順を整理し、実際に例外給付を受ける流れについて説明します。
これらの手順は、当該利用者を担当する介護支援専門員が中心となり実施する専門的な手続きになります。
主治医の判断を得る
まず、当該利用者の主治医から対象外種目が本人にとって必要であると判断される旨の判断を、書類で確認しなければなりません。
- その方法は、主治医所見聴取記録を作成する(市町村によっては所定の様式あり)
- 認定調査時の主治医意見書に対象外種目の使用が必要である旨の記述を確認する
- 対象外種目が必要である旨の診断書を作成してもらう(市町村によっては所定の様式あり)
このいずれかになります。この書類は、4-3で説明する確認申請に必要な添付書類となります。
サービス担当者会議を開催する
サービス担当者会議を開催し、適切なケアマネジメント結果を踏まえた記録 (第4表サービス担当者会議の要点) を作成します。
検討の結果として、具体的に当該福祉用具の必要性が記載されていることが必要です。
これも確認申請に必要な添付書類となります。
確認申請書類を作成する
これらが済んだ後、保険者である市町村に確認申請書類を上記添付書類と共に提出します。
確認通知書が届く
市町村によって違いますが、10日~2週間程度で確認通知書が届きます。
届いたら介護支援専門員や福祉用具貸与事業所に連絡しましょう。
これを以て、レンタルサービスの利用開始となります。
福祉用具貸与事業所とレンタル契約を結びましょう。
再度サービス担当者会議の開催が必要となる場合もありますので介護支援専門員に確認してください。
なお、対象外種目の貸与を受けている方が下記のいずれかの変更に当てはまった時は、再度市町村に算定可否の確認を受ける必要があります。
- 医学的見地に基づくケアマネジャー等が判断した要件1の表の状況が変わったとき
- 貸与する福祉用具の追加変更が生じたとき
- 当該利用者が更新認定・区分変更認定を受けたとき
(同一品目における変更等軽易なもの、かつ当該変更等が利用者の身体状況や介護状況の変化に起因するものではない場合不要)
まとめ
いかがでしたでしょうか。
確かに福祉用具の例外給付は複雑で難しい仕組みですが、要介護度が軽いにもかかわらず必要としている利用者にとっては、なくてはならない制度です。
ぜひ覚えておいて、いざというときに備えておきたいですね。