この記事では介護保険サービスの1つであるデイケアにおける加算について、また、加算の要件や単位についても解説しています。
介護保険には数多くの介護保険サービスがありますが、その中には提供を受けたサービスの内容によって料金が増額される加算料金というものがあります。
事業所は提供している介護サービスの質を向上させるためにも、条件が満たされている場合には加算料金を請求する権利があるのですが、デイケアにおける加算料金にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここでは介護保険サービスの1つであるデイケアにおける加算について、また、加算の要件や単位についても解説して行きますので、興味のある方は是非この記事をご覧ください。
リハビリマネジメント加算
デイケアにおいて行われる加算の1つであるリハビリマネジメント加算は正式にはリハビリテーションマネジメント加算といいますが、内容は以下のようになっています。
その① 加算の概要
リハビリの継続的な管理とSPDCA(調査、計画、実行、評価、改善)のサイクルの構築に対して加算されるもので、利用者の日常生活における活動の質の向上のために行われるリハビリの促進が加算の目的となっており、リハビリテーションマネジメント加算Ⅰ~Ⅳの4種類が存在しています。
その② 加算の要件
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[リハビリテーションマネジメント加算Ⅰ]
- リハビリ計画を作成して定期的に評価を行い、適宜計画の見直しを行っている
- ケアマネージャーを通じて理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者が利用してる他のサービスの職員に対して、リハビリの観点から日常生活の留意点や介護のアドバイス等の情報伝達を行っていること
- 新規にリハビリ計画を作成した利用者に対して医師若しくは医師からの指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が1ヶ月以内に自宅を訪問することによる検査等を実施している
- 医師から理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に対してリハビリの目的とリハビリの実施に伴う指示があること
- リハビリの実施に伴う医師からの指示内容が明確になるように記録を行うこと
- リハビリ計画を作成に関与した理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者やその家族に対しての説明を行い、同意を得た上で説明した内容を医師に報告すること※
- リハビリテーション会議を開催し、リハビリの内容・目標等を関係者間で共有し、内容を記録する(医師の参加はテレビ電話でも可)
- 利用開始から6ヶ月以内の間は1ヶ月に1回、6ヶ月を超えた場合には3ヶ月に1回リハビリテーション会議を開催して適宜計画を見直していること
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がケアマネージャーに対して、リハビリの観点から有する能力、日常生活の留意点、自立のための支援方法等についての情報の提供を行うこと
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者の自宅を訪問し、家族又は利用者が利用している他の介護サービスの職員に対して、リハビリの観点から日常生活の留意点や介護のアドバイス等の情報伝達を行っていること
- 医師から理学療法士・作業療法士・言語聴覚士に対してリハビリの目的とリハビリの実施に伴う指示があること
- 以上に関する記録を残すこと
- リハビリテーションマネジメント加算Ⅱの※以外の算定要件を全て満たしていること
- リハビリ計画については理学療法士廊のリハビリ専門職による説明ではなく、医師が利用者又は家族に説明を行って同意を得ること
- リハビリテーションマネジメント加算Ⅲの算定要件を全て満たしていること
- リハビリに関するデータの提出を行うこと
[リハビリテーションマネジメント加算Ⅱ]
[リハビリテーションマネジメント加算Ⅲ]
[リハビリテーションマネジメント加算Ⅳ]
その③ 加算の単位数
リハビリテーションマネジメント加算Ⅰ:330単位/月
リハビリテーションマネジメント加算Ⅱ:開始日から6ヶ月以内は850/月、6ヶ月目以降は530/月
リハビリテーションマネジメント加算Ⅲ:開始日から6ヶ月以内は1,120/月、6ヶ月目以降は800/月
リハビリテーションマネジメント加算Ⅳ:開始日から6ヶ月以内は1,220/月、6ヶ月目以降は900/月
短期集中個別リハビリ実施加算
デイケアや訪問リハビリテーションにおいて加算されるもので、デイケアにおける短期集中個別リハビリテーション実施加算の内容は以下のようになっています。
その① 加算の概要
通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションにおける短期集中個別リハビリ実施加算は、病院や施設を退院・退所してから3ヶ月以内の利用者に対して、集中的に身体機能を回復するためのリハビリテーションを個別に実施することを評価するための加算です。
その② 加算の要件
- リハビリテーションマネジメント加算のⅠ~Ⅳまでのいずれかを算定している
- 病院や施設を退院・退所した日又はその認定日から起算して3ヶ月以内に個別リハビリテーションを集中的に行うこと
- 医師若しくは医師から指示を受けた理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がリハビリを行うこと
- 個別でのリハビリを1週間のうちに2日以上、1日あたりで40分以上実施すること
その③ 加算の単位数
デイケアでの短期集中個別リハビリテーション実施加算において加算される単位は1日あたり110単位となります。
認知症短期集中リハビリ実施加算
こちらは認知症高齢者を対象とした専門的なリハビリを実施することができるデイケア業者や介護老人保健施設等が加算の対象となっています。
その① 加算の概要
認知症の高齢者に対して、集中的かつ短期間にリハビリを行った際に加算することができるものです。
デイケアにおける認知症短期集中リハビリテーション実施加算にはⅠとⅡの2種類があります。
その② 加算の要件
認知症短期集中リハビリテーション実施加算の算定要件は以下のようになっています。
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[ⅠとⅡで共通]
- リハビリテーションマネジメント加算のⅠかⅡを算定している
- 認知機能検査等を行った結果が5~25点だった方などを対象とし、対象者の認知機能や生活環境を踏まえた上で生活機能を改善することを目的としたリハビリを行うこと
- 過去3ヶ月の間に短期集中個別リハビリテーション実施加算を算定していない利用者であること
- 1週間に2日を限度とし、個別でのリハビリを20分以上実施する
- デイケアの計画書を作成する場合には、利用者宅を訪問して生活環境の把握を行う
- デイケアの計画書では時間・場所・実施方法・頻度について定め、その計画に基づいて個別若しくは集団でのリハビリを月4回以上実施する
- 利用者の自宅を訪問して社会的応力や居宅での応用動作能力の評価を行い、結果を利用者やその家族に報告する
[短期集中個別リハビリテーション実施加算Ⅰ]
[短期集中個別リハビリテーション実施加算Ⅱ]
その③ 加算の単位数
短期集中個別リハビリテーション実施加算Ⅰ:240単位/日
短期集中個別リハビリテーション実施加算Ⅱ:1,920単位/日
生活行為向上リハビリ実施加算
こちらの加算は2,015年に行われた介護報酬の改定によって新たに設けられた加算となっており、内容は以下の通りです。
その① 加算の概要
加齢などが原因で生活機能の中でも活動する能力が低下している高齢者の方を対象とし、活動機能の向上を目指した目標を掲げて実施計画に沿ったリハビリを行うことによって、実際に生活機能の向上が見られた場合に6ヶ月に限って算定することができます。
その② 加算の要件
- 生活行為の向上を図るための研修を終了した理学療法士・言語聴覚士又は生活行為内容の充実や向上に関する専門的な知識及び経験を持つ作業療法士が担当すること
- 生活降雨意を向上するための目標を立てた上で、目標に沿ったリハビリ実施計画を作成し、計画に沿ったリハビリを実施すること
- リハビリ計画が終了する日までの1ヶ月間の間にリハビリテーション会議を開催して目標の達成状況等の報告を行うこと
- リハビリテーションマネジメント加算Ⅱを算定していること
その③ 加算の単位数
デイケアの利用を開始した月から3ヶ月以内:2,000単位/月
デイケアの利用を開始した月から3ヶ月を超えて6ヶ月以内:1,000単位/月
入浴介護に関する加算
入浴に関する加算として入浴介助加算というものがありますが、内容は以下のようになっています。
その① 加算の概要
入浴介助加算とはデイケア等において、入浴中である利用者の見守りを含む介助を行った場合に算定することができる加算となっています。
その② 加算の要件
加算の対象となるのは全身浴だけではなく、全身シャワー浴も対象となります。
また、見守りを含む介助とありますが、見守り介助とは利用者に対しての入浴中の気分の確認や必要に応じた転倒防止の呼びかけ等が該当し、利用者の身体に直接触れない場合であってもkさんの対象となります。
その③ 加算の単位数
入浴介助加算の単位数は1日につき50単位となります。
若年性認知症利用者受入加算
デイケアにおいて加算することができる加算の中には若年性認知症利用者受入加算というものもあります。
その① 加算の概要
この若年性認知症利用者受入加算とは、デイケア等の事業所において若年性認知症の方の受入を行い、担当スタッフを個別に定めた上で利用者やその家族のニーズに応じたサービスを提供した際に算定することができるものです。
その② 加算の要件
- 若年性認知症患者ごとに担当者を定めること
- 若年性認知症患者のニーズや特性に合わせたサービスの提供を行うこと
その③ 加算の単位数
若年性認知症利用者受入加算において加算される単位は介護サービスによって異なってきますが、デイケアにおいては1日につき60単位となります。
栄養改善加算
デイケアにおける加算には低栄養状態にある利用者を対象とした栄養改善加算というものがあります。栄養改善加算の内容は以下の通りです。
その① 加算の概要
デイケアにおいて低栄養状態にある、若しくは低栄養状態になる恐れのある利用者に対して、栄養状態の改善を図ることを目的としており、利用者一人一人に対して食事総相談を始めとする栄養管理を行うことによって算定することができます。
その② 加算の要件
- 管理栄養士を1名以上は位置すること
- 利用者ごとに栄養ケア計画を作成した上で、その計画に則って管理栄養士等が栄養改善のサービスを提供し、その状態についての記録を定期的に行うこと
- 利用者ごとの栄養ケア計画の状況についての評価を定期的に行うこと
その③ 加算の単位数
栄養改善加算は1回につき150単位となっており、要介護者は月2回までとなっています。
口腔機能向上加算
口腔機能向上加算とは利用者の口腔機能の向上を目的としており、口腔機能が低下している利用者やその恐れがある利用者を対象としています。
口腔機能向上加算の内容は以下のようになっています。
その① 加算の概要
口腔機能(口腔清潔、唾液分泌、食事摂取、嚥下、咀嚼等)の低下が見られる利用者やその恐れのある利用者に対して、口腔清掃の指導や摂食・嚥下・咀嚼二関する訓練等が適切に実施されている場合に加算されます。
その② 加算の要件
口腔機能向上加算は以下の要件を満たした上で届出を行い、個別訓練を実施した場合に算定することができます。
- 歯科衛生士、言語聴覚士又は看護師を1名以上は位置すること
- 口腔機能改善管理指導計画書を作成すること
- 口腔機能改善管理指導計画書に則って利用者ごとに実施し、計画の進捗状況を定期的に評価すること
その③ 加算の単位数
口腔機能向上加算は1回につき150単位となっており、要介護者は月2回までとなっています。
重度療養管理加算
この加算は要介護度が高い方が対象となる加算となっており、内容は以下の通りです。
その① 加算の概要
要介護3~5という医療的に重度である利用者に対して在宅での生活を継続することができるようにすることを目的に、計画的な医学的管理を行い、療養上必要である処置を行った場合に算定することができます。
その② 加算の要件
要介護3~5であり、以下のいずれかの状態に該当する利用者に対して計画的な医学管理のもとデイケアを行った場合に加算することができる。
- 常時痰を吐いている(1日8回以上の日が20日を超えている場合)
- 呼吸障害等によって人工呼吸器を使用している
- 中心静脈のみで薬剤や栄養維持の注射を行っている
- 人工腎臓を週に2日以上行っている又は決められた合併症を抱えている
- 重篤な心機能障害、呼吸障害等があり、常時モニター測定を行っている
- 膀胱又は直腸の機能障害が身体障害者4級以上であり、ストームでの処置を実施している
- 経鼻胃管や胃瘻等の経管栄養が行われている
- 褥瘡に対しての治療を行っている
- 気管切開が行われている
その③ 加算の単位数
デイケアにおける重度療養管理加算は100単位となっています。
中重度者ケア体制加算
中重度者ケア体制加算は通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションを提供している事業者が対象となる加算で2015年に新たに設けられました。
その① 加算の概要
中重度者ケア体制加算は、介護度が中重度の方であっても住み慣れた地域でこれからも暮らし続けることができるように、介護事業を提供している事業者が中重度の方の受入体勢を整えることによって算定することができるようになっています。
その② 加算の要件
- 指定基準によって定められている介護職員又は看護職員の他に介護職員又は看護職員を常勤換算で2名以上配置すること
- サービス提供時間において専従の看護職員を1名配置すること
- 直近3ヶ月の実利用者又はのべ利用者数のうち、要介護3以上の利用者が3割以上を占めていること
- 中重度であっても社会性の維持を図り、在宅での生活を行うために必要となるリハビリやケアを計画的に実施するためのプログラムを作成していること
その③ 加算の単位数
デイケアの場合、中重度者ケア体制加算は1日20単位となります。
社会参加支援加算
デイケアにおいて加算されるものの中には社会参加支援加算というものもあり、リハビリによって身体機能が向上し、家事、仕事、地域行事、通所介護への参加等を目的としています。
加算の内容については以下の通りです。
その① 加算の概要
リハビリを行うことによってADL(日常生活動作)・IADL(手段的日常生活動作)が向上したことによって家事、仕事、地域行事、通所介護への参加が可能になり、他のサービスに移ることができた場合に算定することができる加算です。
その② 加算の要件
- 「ADLやIADLの向上によって社会参加に移行することができた取り組みを行った人数」を「評価対象期間の間にサービスの提供を終了した実人数」で割った数が5%よりも多いこと
- デイケアの回転率が「12月の利用者」÷「平均利用延月数」の計算結果が25%以上であること
- 期間中にデイケアを終了後、14日~44日以内にデイケアの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が修了者の自宅を訪問若しくはケアマネージャーからの情報提供によって、通所介護等の実施が3ヶ月以上行われていることを確認して記録すること
その③ 加算の単位数
評価対象期間において、次の年度内に限って1に月加算することができるようになっており、デイケアでは1日あたり12単位の加算となっています。
まとめ
ここまで介護保険サービスの1つであるデイケアにおける加算について、また、加算の要件や単位についても解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
解説してきたようにデイケアには様々な加算が存在しており、事業所は提供している介護サービスの質を向上させるためにも、条件が満たされている場合には加算料金を請求する権利があります。
ただ、加算料金を算定するためにはそれぞれに設けられている算定要件を満たしている必要があり、要件を満たしていない場合は加算料金を算定することはできませんのでちゅういしてください。