【よくある質問】介護保険のデイケアと医療保険の外来リハビリの併用は可能?
怪我や病気でリハビリが必要になったとき、自宅から通いながらリハビリを受けるには2種類の方法があります。
介護保険のデイケアと、医療保険の外来リハビリです。
介護施設に通うか、病院に通うかの2択となるわけですが、それぞれに特徴があります。
その時に脳裏に浮かぶのは、「施設と病院、それぞれに通ってリハビリを受けられないだろうか?」というポイントです。
そこで今回は、このデイケアと外来リハビリの併用について、紐解いて解説していきたいと思います。
介護保険の『デイケア』とは?
介護保険の『デイケア』とは、正式には通所リハビリテーションという名称になります。
一見、デイ=日中、ケア=介護という直訳から、デイサービスと混同されがちです。
確かに入浴や食事のサービスもありますが、あくまでリハビリ的視点で行われている介助になっています。
ごく一般的にリハビリというと、病気や怪我によって失った身体機能を様々な治療と訓練の併用によって回復させる行為、と認識されているかと思います。
しかしデイケアでのリハビリテーションで重視されているのは、心身共に生き生きと自分らしい生活を送ることができるようになること、つまりQOL(生活の質)向上を目指しているという点です。
そのため、物理的な筋力トレーニングや関節可動域訓練等だけでなく、入浴や食事といった日常生活動作の支援を行ったり、レクリエーションや他者とのコミュニケーションを通じた生活訓練を行うことによって心身の機能回復・向上を目指しているのです。
利用者のイメージとしては、例えば脳梗塞を発症して入院し、在宅復帰した後に身体機能の維持向上のために利用するようなケースです。
なお、リハビリテーションは医療行為のため、通所リハビリテーションを利用するためには医師からの指示が必要になります。
これらの考え方から、医療保険のリハビリとは違い、病気や期間に条件はなく、総合的に身体機能の維持向上のためにリハビリが必要だと判断された場合であれば利用することができます。
医療保険の『外来リハビリ』とは?
文字通り、医療機関に通ってリハビリを受ける場合です。
医療保険のリハビリの特徴は、原因疾病ごとにリハビリが提供されるという点です。
複数の原因疾病がある場合、例えば変形性膝関節症の方が転倒し骨折したとします。
そうしたときに、通院している整形外科にて変形性膝関節症のリハビリ+骨折によるリハビリが提供される、といったイメージです。
また、それぞれの原因疾病によって医療保険でのリハビリを受けることができる期間が決まっているという点も特徴です。
病院では専用のリハビリルームがあり、また常駐しているリハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等)も多いために充実したリハビリが受けられる一方、長期に渡ったリハビリを続けることができないという難点があります。
『デイケア』と『外来リハビリ』の併用は可能?
では、本題です。介護保険における『デイケア』と、医療保険の『外来リハビリ』は併用することができるのでしょうか?
例えば下記事例の場合はどうなのでしょうか?考えてみましょう。
事例:脊髄小脳変性症を患うAさん。入院加療(リハビリを含む)をし在宅復帰。退院時に、要介護認定を受けた。また、医師よりデイケア利用に関する指示書が出た。その後デイケアについてネット検索したところ、リハビリだけでなく入浴やレクリエーションもあることを知り、合わせて利用したいと希望している。病院でのリハビリテーションには信頼感が強く、今後も通ってリハビリを受けたいと考えている。
原則併用は不可
結論から言うと、併用は原則的に不可となります。
医療保険と介護保険が重なる場合は、介護保険が優先されるという原則があります。
また、医療保険での外来リハビリは先に説明したように受けられる期間が決まっています。
その期間が過ぎると、医師は主治医意見書を作成し介護保険へと移行する形になるのです。
移行したあとは同じ疾病や怪我を原因とするリハビリは医療で受けることができなくなります。
併用が不可となる理由
平成18年4月28日付(平成24年6月21日改正)「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」という文書において、「要介護被保険者等である患者に対して行うリハビリテーションは、同一の疾患等について、医療保険における心大血管疾患リハビリテーション料、脳血管疾患等リハビリテーション料、運動器リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション料」という。)を算定するリハビリテーション(以下「医療保険における疾患別リハビリテーション」という。)を行った後、介護保険における訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーション(リハビリテーションマネジメント加算、短期集中リハビリテーション実施加算又は個別リハビリテーション実施加算を算定していない場合を含む。)又は介護予防訪問リハビリテーション又は介護予防通所リハビリテーション運動器機能向上加算を算定していない場合を含む。)(以下「介護保険におけるリハビリテーション」という。)に移行した日以降は、当該リハビリテーションに係る疾患等について、手術、急性増悪等により医療保険における疾患別リハビリテーション料を算定する患者に該当することとなった場合を除き、医療保険における疾患別リハビリテーション料は算定できない。」とされています。
つまりこれを事例に照らし合わせて解説すると、「脊髄小脳変性症による症状を根拠とするリハビリを医療保険から介護保険のデイケアに切り替えたため、以降医療保険でのリハビリを実施することはできない」ということになるのです。
併用が可能になる場合
ただ、イレギュラーな形ですが一時的に介護保険と医療保険の各リハビリを同時に利用することになるケースがあります。
それは新たな疾病や事故などによって生じた怪我や機能障害に関するリハビリです。
今回のケースで説明すると、脊髄小脳変性症によって生じた機能障害へのリハビリが医療保険から介護保険に移行した後に転倒し骨折したとします。
するとこの骨折についての治療後のリハビリは一定期間が過ぎるまで医療保険で提供される形になるのです。
また、医療保険から介護保険へリハビリが移行する際に利用するサービス提供機関が異なる場合には直前1ヶ月を限定して併用することも可能です。
併用することにより円滑な移行を可能とする目的で実施されます。
(平成19年4月20日付厚生労働省保険局医療課事務連絡「疑義解釈資料の送付について その7」より)
まとめ
リハビリテーションに限らず、介護保険と医療保険に同様のサービスがある場合は、どちらからの給付になるのか非常に専門的で難しい判断を必要とします。
また、法律自体は変わらなくても厚生労働省等から法解釈の変更が通知されるという形で取り扱いが変更になる場合もあります。
自分の状況ではどうか不明な場合は、気軽に介護支援専門員や医療ソーシャルワーカー等に質問してみてください。
「基本的には介護保険が優先されるが、一定の条件であれば医療保険が優先されるか併用できる」と認識しておけば差し支えないでしょう。