介護保険サービスのデイケアとは、正式名称を「通所リハビリテーション」といいます。
内容は、その名の通り施設に通所してリハビリテーションを受けることが主な目的です。実はそれ以外に様々なオプション(加算)があり、その中の一つに「栄養改善加算」というものがあります。
人間が生きていくうえで必須である「栄養」。
栄養状態が悪いと体調を崩しやすくなったり、体力が落ちて活動性が低下することによって生活不活発病に繋がったりします。
床ずれの原因にもなりえます。
それらの課題解決の一助となるのが今回ご紹介する「栄養改善加算」です。
デイサービスにも同様の加算がありますので、しっかり確認しておきましょう。
そもそも栄養改善加算とは何か?
栄養改善加算とは、デイケアもしくはデイサービスにて提供されます。
低栄養状態にある、またはその恐れがある利用者に対して、栄養状態の改善に向けた相談や管理といったサービスを利用者それぞれ個別に提供します。
その内容は利用者の栄養状態改善を通して心身状態やQOL(生活の質)の維持または向上に資すると認められる内容であることが必要です。
栄養状態に関することは生活全般に関わっているという性質上、デイケアのサービスだけで解決するものではなく、ケアマネジメント全体の中で一本の柱として実施されます。
具体的には、対象者の栄養状態に合わせてデイケア利用時の昼食時に不足している栄養分を補う食べ物を提供したり、本人や家族・ヘルパー(家事援助を利用している場合)に効率よく自宅で栄養補給するための方法を助言・指導をしたりする等のサービスを提供します。
同じような名称の加算として「栄養スクリーニング加算」というものがありますが、より専門的な内容で単位数も高く、算定可能な回数が多いのが特徴になります。
栄養改善加算の点数について
単位数は、要介護・要支援どちらの場合も1回あたり150単位(自己負担額1割の場合、150円)です。原則3ヵ月の間、要介護1~5の場合は月2回まで、要支援1・2の方の場合は月1回までの提供になります。3ヵ月毎に評価し、改善が認められなかった場合は延長することが可能です。
栄養改善加算の算定要件
下記内容のすべてを満たす必要があります。
管理栄養士を1名以上配置すること。または外部連携(他の介護事業所や医療機関、栄養ケアステーション等に派遣を依頼する形)によって管理栄養士を1名以上配置していること。
非常勤による配置でもよいが、サービス提供を遂行できる人員配置を整えること。
利用者ごとの摂食・嚥下機能及び食形態にも配慮した栄養ケア計画を作成し、状態を適切に記録すること。
下記「デイケアの栄養改善加算を算定するまでの流れ」に沿った内容を適切に実施すること。
計画の進捗状況を定期的に評価すること。
厚生労働大臣の定める基準を満たした事業所であること(指定事業所として認められていること)。
都道府県や指定都市等の所轄庁へ算定開始を届け出ていること。
栄養改善加算の対象になる人
下記内容のいずれかに該当する方が対象になります。
過去6ヵ月の間に3%以上、もしくは2~3kg以上の体重減少が認められる者
食事摂取量が不良(75%以下)の者
※普段の量に比べて全体摂取量が75%以下の場合や、1日の食事回数が2回以下であって、1回あたりの食事摂取量が普段より少ない場合などが該当。
血清アルブミン値が3.5g/dl以下の者
BMIが18.5未満の者
その他低栄養状態にある、またはその恐れがあると認められた者。
※主治医の医学的判断や認定調査・主事意見書などによって担当者会議にて確認された場合などの基準あり。詳細は各保険者へ確認してください。
また、以下の生活課題が認められた者に対しては、対象者に該当するか確認する必要があります。
- 口腔および摂食・嚥下機能
- 生活機能の低下
- 褥瘡に関する事柄
- 食欲の低下
- 閉じこもり
- 認知症
- うつ
デイケアの栄養改善加算を算定するまでの流れ
それでは、栄養改善加算を実際に利用するまでの一連の流れについてご紹介していきます。
対象者の栄養状態のリスクの把握
対象者となる利用者の栄養状態や、想定される栄養リスクについて確認します。
サービス利用開始時や生活全般に状態変化があった際、サービス内容が変更になる際などはサービス担当者会議が開催されます。
そこで客観的データを元に確認したり、認定調査時の主治医意見書や栄養リスクに関する診断書等の書類を用いて具体的に情報を共有します。
これが栄養改善加算の必要性を確認する作業になります。
栄養ケア計画の原案作成
入手した情報や利用者・家族から聴取した内容について、管理栄養士を中心に介護職員や看護職員、機能訓練指導員等多職種間で共同して作成します。
利用者の摂食状況や嚥下状態、現在の食形態に配慮しながら栄養改善に向けた課題とそれを解決するための取り組む方法について項目別に作成します。
様式は任意ですが、下記に参考様式が示されています。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000180928_6.pdf
本人や家族への説明及び同意
原案が完成したら、利用者や家族に説明し同意を得、計画書に記名捺印をしてもらい同意となります。
なお、この場合の書類作成日は原案を作成した日ではなく、同意を得た日が作成日となるので注意が必要です。
当然のことですが、算定開始前に同意を得る必要があります。
3ヵ月ごとの評価
サービス提供は、同意を得た栄養ケア計画に基づき利用者ごとに栄養改善サービスを実施します。
実施経過において問題が生じたときは、その都度関係職種や介護支援専門員と情報を共有しつつ、適宜修正していきましょう。
定期的に利用者の生活機能の状況を検討し、3ヵ月毎に行う体重測定等で利用者の栄養状態の評価を実施し、担当の介護支援専門員や主治医に情報提供しましょう。
2-1に戻り、PDCAサイクルを回す
評価の結果、栄養改善サービスの提供が継続的に必要と判断された場合は、再度計画を作成→サービス提供→モニタリング→評価のサイクルを繰り返していきます。
デイケアの栄養改善加算を算定する場合の留意点
原則3ヵ月であり、必要と判断されれば継続して算定することが可能とされていますが、平成31年4月現在、その限度については示されていません。
…とは言いつつも、ダラダラとサービス提供するのではなく、利用者が効果を実感できる計画やサービスを提供しなければならないので、留意しましょう。
要支援の利用者で運動機能向上加算や口腔機能向上加算等と一緒に栄養改善加算を算定する場合は、個別に単位数計算はせず、「複数サービス実施加算」として異なる単位数を算定する形になるので注意が必要です。
まとめ
栄養改善加算には、栄養状態を向上させることによって低栄養状態を予防し、QOLを高めたり、他者との交流や社会参加を促すなどといった効果が期待されています。
しかし、ニーズが少ない、管理栄養士を配置するのが難しいなどの理由で提供可能な事業所が限られているのも現実です。
法改正によって管理栄養士の配置が非常勤でも可となった経緯もあります。
今後の浸透・活用が課題となりそうですね。