介護保険のデイケアといえば、皆さんはどんなサービスを思い浮かべるでしょうか?
よくデイサービスと混同して誤解されがちですが、実はサービス内容も目的も全く違うサービスなんです。
「本当はデイサービスを利用したかったのに」「こういうところだとは思わなかった」などとトラブルや苦情になってしまった話も聞きます。
高齢者の方やその主介護者である世代の方たちであれば、口コミやネットの簡易的な情報で利用を決めてしまうことも多いでしょう。
そんな誤解や誤った情報からデイケアに対してマイナスイメージを持ってしまうことは、本当に勿体ないです。
今回は、意外と知られていないデイケアというサービスについて勉強していきましょう。
介護保険のデイケアの特徴
デイケアは正式名称を「通所リハビリテーション」といいます。
それに対してデイサービスは「通所介護」と呼びます。このようにみてみると、少し違いが見えてきませんか?
デイケアとは、施設に通って専門的なリハビリを受ける。
デイサービスとは施設に通って全般的な介護を受ける。
このような差があります。
冒頭で例示した誤解は、この違いから生まれるものといえます。
デイケアを利用できる人
デイケアについて介護保険法では、「居宅要介護者について、介護老人保健施設、病院、診療所その他厚生労働省令で定める施設に通わせ、当該施設において、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行う」と定めています。
リハビリテーションは医療行為です。
そのため、デイケアを利用するためには主治医からの指示書が必要になります。
また、医療行為ではありますが介護保険法上の介護サービスのひとつとして位置づけられていますので、要介護認定(要支援1・2、要介護1~5)を受けている必要もあります。
デイケアを利用する方法
主治医から通所リハビリテーションを利用するように指導を受けた、というところを起点として説明します。
まずは最寄りの地域包括支援センターに相談し、要介護認定を受けましょう。地域の中学校区毎に設置されています。
要支援の判定が出たら原則地域包括支援センターの方、要介護の方は地域にある居宅介護支援事業所の中から選定し契約を結び、ケアプランを作成します。
この段階で医師の指示がでている旨を説明しておきましょう。
次に、サービス担当者会議を開催しデイケアや他の併用するサービスの関係者が自宅に集まって、サービスの必要性や利用者をチームで支えるための役割分担を話し合います。
最後に、デイケアの事業所と利用契約を結び、サービス利用計画に同意が得られれば晴れてサービス利用開始となります。
デイケアのスタッフ
法律で義務付けられている人員配置基準は、下記の通りです。
- 医師(専任の常勤医師が1以上 病院、診療所併設の介護老人保健施設では、当該病院、診療所の常勤医との兼務可)
- 従事者(理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士又は看護師、准看護師若しくは介護職員が利用者10人に対し1以上)
- 理学療法士、作業療法士、 言語聴覚士(上記の内数として、利用者100人に1人以上)
デイサービスと比較して違う点は、医師の配置が必要な点です。
これはデイケアで提供されるリハビリテーションが医療行為であるというところから来ています。
併設されている老健や医院との兼務は可能とのことですので、実質的には常にデイケアに付きっきりという訳ではありませんが、心強いですよね。
あとは生活相談員の配置義務がなく、代わりにリハビリの専門職である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの配置が義務付けられているという点です。
デイサービスでも機能訓練加算はありますが、看護師でもできますので、やはりデイケアは専門的にリハビリテーションを受けることができる介護サービスと言えそうです。
デイケアの料金
デイケアの施設には定員や前年度の利用者数実績に合わせて通常規模型、大規模型(Ⅰ・Ⅱ)があり、それぞれにサービス利用時間(1~2時間、2~3時間、3~4時間、4~6時間、6~8時間)毎に単位数が定められています。
要介護度によっても料金は変わります。この基本単位数に各種加算や別途食費などの施設が独自に定める費用がかかります。
詳細は、実際に利用する施設に確認しましょう。
※6~8時間利用の場合の基本単価(1割負担時の1回あたりの料金)
※各種加算一覧(事業所によっては算定できない加算もあります)
デイケアのメリット
このように、専門的な医療行為としてのリハビリテーションが受けられるデイケアですが、利用することによってどのような効果が期待できるのでしょうか?
個々に合わせたリハビリができる
利用者それぞれの心身の状態やADL、目標に合わせた個別で専門的なリハビリテーションを受けることができます。
また、リハビリ専門の施設ですので訓練のための設備も比較的整っています。
お話や入浴もできてリフレッシュ
デイサービスとは違い、デイケアには認知症状がない方が多く、あっても比較的軽度の方たちがよく利用しています。
そのため、利用者同士の人間関係を築きやすく友人関係が出来上がりやすいため、会話がはずみます。
それだけでも通う動機となる方もいるでしょう。
また、自宅ではなかなか難しい方でも設備の整った浴室で安全に入浴できます。
また、自宅で入浴できるようになりたい方のために入浴介助もリハビリ的視点をもって行われます。
家族の負担が軽減できる
定期的に外出することで生活のリズムが整います。
また外出の機会となるため、引きこもりを予防することができます。
これらに伴って普段介護している家族も自分の時間に余裕ができるでしょう。
また、デイケアに通って心身機能が向上することにより、さらに家族の介護の手間が減って負担軽減となります。
デイケアのデメリット
その一方で、人によってはデメリットを感じることもあります。
行き来が億劫になることも・・・
事業所の一日当たりの利用定員が多いため、人と関わることが苦手な方にとっては通所することが負担に感じることもあるでしょう。
また、せっかく通ってもリハビリの効果を実感できないと、付随して通所がだんだん億劫になってしまうこともあるかもしれません。
利用者同士がトラブルになることも・・・
法定上の職員一人当たりに対する利用者数が多いため、利用者一人一人に目を配られる時間が少なくなってしまいます。
また、利用者同士の会話や交流が活発なため、その分利用者同士の人間関係がこじれてトラブルに巻き込まれてしまうこともあるかもしれません。
認知症状を抱えている利用者が少ないため、職員も対応に慣れていない場合があります。
そういった方とのトラブルを上手に回避できないこともあるでしょう。
まとめ
通所リハビリには、「リハビリによって生活の質を上げたい」という明確な目的があるため、単に身体機能の維持向上だけではなく、生活全般に総合的に目を向けた専門的なリハビリを受けることができます。
医師の診断が必要なため、誰でも使えるサービスではありませんが、その満足度は非常に高いです。同じ目的をもった方が通っているため、お互い励まし合いながら機能訓練を受けられるという点も魅力です。
介護給付費の増大が懸念されている現在、介護依存度の増悪を防ぐために国もリハビリや介護予防に力を入れています。
今後ますます注目され、ニーズが高まっていく施設と言えますね。