この記事では薬局の薬剤師による訪問サービス(在宅医療)は介護保険の支給限度額に含まれるのかということについて解説しています。
介護保険には様々な介護保険サービスがあり、介護保険の被保険者は要介護認定を受けることによってそれらのサービスを利用することができるようになっています。
ただ、無制限に介護保険を利用することができるわけではなく、「要支援1・2」と「要介護1~5」の7段階の要介護度にはそれぞれ支給限度額というものが設けられており、その範囲内であれば介護保険が適用され1割(所得に応じて2~3割)の自己負担でサービスを利用することができます。
現在は自宅で暮らしながら介護保険サービスを利用する方は多くなっていますが、中には通院が困難な利用者もおり、そのような方を対象とした薬剤師が薬を届ける訪問サービスもあるのですが、この訪問サービスは支給限度額の中に含まれるのでしょうか?
ここでは薬局の薬剤師による訪問サービス(在宅医療)は介護保険の支給限度額に含まれるのかということについて解説していきますので、薬剤師による訪問サービスの利用を検討されている方は是非この記事を参考にしてみてください。
薬剤師の訪問サービスとはなに?
現在、在宅での療養を行っている要介護者は多くなってきていますが、その中でも通院が困難な状態である方に対して提供されているのが薬剤師による訪問サービスです。
ここでは薬剤師の訪問サービスについて詳しく解説していきます。
その① 薬剤師が薬を届ける
薬剤師の訪問サービスとは、薬局の薬剤師が医師の出した処方箋に基づいて調剤を行い、その薬を要介護者の自宅へ届けるというサービスです。
このサービスを利用することができるのは、以下のような方となります。
- 歩行困難や認知機能の低下といった理由で病院や薬局に通うことが困難である方
- 自宅で薬の管理や使用に関して不安があるといった理由によって薬剤師による訪問サービスが必要である方
- 医師によって薬剤師による訪問サービスが必要であると認められており、薬剤師に対して方も指示がある場合
- 薬剤師による訪問サービスについて利用者又は家族の同意がある場合
サービスを利用するためには処方箋を出してもらわなければなりませんので、医師による往診を受けます。
処方箋がでたら薬局に連絡し、薬の利用方法や薬の届け方、届ける日にち、訪問サービスを利用するための費用などについての相談を行った上で薬の調剤を行ってもらいます。
その② 薬剤師の訪問
事前に指定しておいた日にちに薬剤師が薬を届けに来てくれます。
この際には利用者の薬の使用状況、効果及び副作用の確認、体調や生活状況の確認などを行い、利用者の家族に対するヒアリングも同時に行います。
これは利用者の症状や生活状況に応じた薬を使用することによって治癒効果を高めるために行うものであり、場合によっては医師に対して薬の用法・用量や薬の種類などの変更を提案するということもあります。
問題がなければ処方された薬を渡し、薬に関する説明を行います。
また、このときに次回の訪問日時の確認を行います。
その③ 薬剤師の訪問後の対応
薬剤師は利用者の自宅への訪問後、訪問時の利用者の容態について薬学的な観点から医師への報告を行います。
これは利用者が安心して介護サービスや在宅医療を受けることができるようにすることを目的としており、医師との相談を行った上で今後の療養に反映させるために行われます。
また、医師だけではなく利用者の担当ケアマネージャーに対しても情報提供を行い、利用者の関係者全てで利用者に関する情報の共有を行います。
薬剤師の訪問サービスも支給限度額に含まれる?
介護保険サービスを利用するためには要介護認定を受ける必要がありますが、判定された要介護度によって以下のような区分支給限度額というものが設けられており、この範囲内であれば1割(所得に応じて2~3割)の自己負担で介護保険サービスを利用することができますが、限度額の範囲を超えてサービスを利用した場合には超過分全てが自己負担となります。
[区分支給限度額]
要支援1: 5,003単位
要支援2:10,473単位
要介護1:16,692単位
要介護2:19,616単位
要介護3:26,931単位
要介護4:30,806単位
要介護5:36,065単位
介護保険を利用している場合、薬剤師による訪問サービスは介護保険内のサービスとなりますが、区分支給限度額には含まれないことになっていますので、限度額を気にすることなく利用することが可能となっています。
ちなみに、区分支給限度額に含まれる介護保険サービスは以下の通りです。
- 訪問介護
- 訪問入浴介護
- 訪問看護
- 訪問リハビリテーション
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 福祉用具貸与
- 短期入所生活介護
- 短期入所療養介護
- 特定施設入所者生活介護(短期利用に限る)
- 定期巡回・随時対応サービス
- 夜間対応型訪問介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護(短期利用に限る)
- 地域密着型特定施設入所者生活介護(短期利用に限る)
- 看護小規模多機能型居宅介護
※通所介護・通所リハビリテーションといった通所サービス、短期入所生活介護・短期入所療養介護といった短期入所サービスなどを利用した場合には介護保険における自己負担分の他に食費・住居費・日常生活費がかかってくることになり、これらには介護保険が適用されませんので全額自己負担となります。
薬剤師の訪問サービス以外で支給限度額に含まれないもの
先程の項目では薬剤師による訪問サービスは区分支給限度額に含まれないと解説しましたが、他にも区分支給限度額に含まれない介護保険サービスがありますので解説していきます。
区分支給限度額に含まれない介護保険サービスは以下の通りです。
- 居宅療養管理指導
- 特定施設入所者生活介護(外部サービス利用型及び短期利用を除く)
- 認知症対応型共同生活介護(短期利用型を除く)
- 地域密着型特定施設入居者生活介護(短期利用を除く)
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
※介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設といった施設サービスを利用した場合には介護保険における自己負担分の他に食費・住居費・日常生活費がかかってくることになり、これらには介護保険が適用されませんので全額自己負担となります。
まとめ
ここまで薬局の薬剤師による訪問サービス(在宅医療)は介護保険の支給限度額に含まれるのかということについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
解説してきたように、薬剤師による訪問サービスとは一定の事情によって病院や薬局に通うことができない方を対象とし、薬剤師が薬を届けてくれるというものです。
介護保険には要介護度において定められている区分支給限度額というものがあり、この範囲内であれば1割(所得に応じて2~3割)の自己負担で介護保険サービスを利用することができますが、限度額の範囲を超えてサービスを利用した場合には超過分全てが自己負担となります。
ただ、薬剤師による訪問サービスはこの区分支給限度額には含まれませんので、限度額オーバーを気にすることなく安心して利用することができます。
引用・参考
区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額) 目黒区
http://www.city.meguro.tokyo.jp/kurashi/kaigo/kaigoriyoannai/kyufu/service/kubunsikyugendogaku.html