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介護老人保健施設でも住民票は移せる?メリットとデメリットは?

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生活保護受給者の介護保険料は
介護を必要としている方が施設に入所する際、住所を移すことがあります。

終身で入居できる特別養護老人ホームや、終の棲家の選択肢のひとつともなる有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などは住所変更することが多いでしょう。

それに対し、一定期間のみ在宅復帰を目的としたリハビリのために入居するのが基本となる介護老人保健施設(通称 老健)の場合はどうなのでしょうか。

そもそも住所を移す必要性があるのでしょうか?住所を移したときのメリットやデメリットはどうなっているのでしょうか?

今回は、そんな素朴な疑問について解説していきます。

介護老人保健施設でも住民票は移せるのか

まとめ
住所について定めている、住民基本台帳法によると、下記の二つの条件に当てはまる場合は老健に住民票を置くことができるとされています。

  • 入所が1年以上見込まれる場合
  • 入所したことで帰るところが無くなる場合

老健は基本的に3~6カ月間の入居ですので、始めはそのまま様子を見て、延長せざるを得なくなった場合に住所変更することが考えられます。

また、元々施設に入所していて病気や怪我により入院したとすると、通常は3カ月間退院して戻って来れる目途が立たない場合は退去扱いとなります。

そうすると元々住んでいた施設には戻れなくなりますので、住所を入院先の病院や老健に住所を移すこととなります。

このように、周囲に頼ることのできる身内が居なかったり、生活保護の申請をしたりする場合にソーシャルワーカーの助言で行ったりするなど、特殊な事情を抱えている方が実施する場合が殆どです。

老健は、元々在宅復帰を目指すための一時的な入居が前提の施設です。

生活の場というよりは、次の生活の場へ移るための準備をする所という意味合いが強い施設になります。

そのため、入居している人の中でも住所を老健に移している方は殆どいません。

住所を移さなかったとしても、特に支障は無いと言っても問題ないでしょう。むしろ住所を移したいと相談しても必要ないと返答されることが殆どです。

介護老人保健施設に住民票を移した場合のメリット

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このように、実際には住民票を移さなくても支障は無いのですが、状況によっては稀なケースですがメリットがある場合もあります。

世帯分離で安くなることも・・・

今まで自宅に住所があった方が施設に移すことを、「世帯分離」といい、一人で当該住所に住んでいるという取扱いになります。

これによって、税金等の計算方法が変わってくるものがあります。

例えば、介護保険料や後期高齢者医療保険料などです。

この保険料の算定には、世帯収入が計算根拠となっていますので、世帯分離によって単身世帯の取り扱いとなればその分世帯収入は少ないと判定され、安くなる場合があります。

ただし、施設サービスや短期入所の利用者がその収入によって居住費や食費の減免を受けられる負担限度額認定制度の場合、法律の改正によって世帯分離をしていたとしても配偶者がいれば資産額が合算されるということになっています。

行政側からすれば、これは制度の隙間をついた裏ワザ的手法であり税金逃れとも捉えられかねないという考えもあるのかもしれません。

確かに総合的にみれば住所を移すことによって出費が抑えられる可能性があるとも言えますが、これについて実は賛否両論あるのもまた事実です。

郵便物の手間がいらない

認知症がなく自身で郵便物等の文書管理ができる方であれば、住所を施設に移すことによって自身当ての郵便物が施設に届くことになるので、家族から持って来てもらう手間がなくなり、勝手に開けられるといったプライバシーの侵害を防いだりすることもできるでしょう。

ただし、施設によっては、事務所にまとめて届いてから本人の手に渡すまでの手間や紛失するリスクがあるなどの理由により、郵便物の自己管理を目的とした住所変更に応じない場合もあります。

思いがけないトラブルに遭わないためにも、この場合は事前に施設の職員に相談して確認しておく必要がありそうです。

介護老人保健施設に住民票を移した場合のデメリット

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次に、住民票を移した場合のデメリットについても合わせて確認しておきましょう。

家族の結束感がなくなる

住民票と言うのは、公的に「家族」であると証明する一つの書類です。

住所を施設に移すことによって世帯分離を敢行すれば、それは「別の家の人」ということになってしまいます。

これが心理的に家族の信頼関係や結束感に多少なりとも悪影響を及ぼすことがあるかもしれません。

よほどお金に困るような事態にでもなっていない限りは、あまりお勧めできません。

家族が郵便物の把握ができない

住所を自宅等から施設に移すと、自動的に郵便物は当該施設に届くようになります。

そうなると、本来本人に代わって各種手続きを行うことが多い家族が郵便物を確認できないということになってしまいます。

中には介護保険に関する書類や、その他の生活に関わる重要な書類もあるでしょう。

入居者当ての郵便物があっても、配達員さんは施設の中に入って利用者個人に直接手渡すわけではありません。

大抵は施設宛の郵便物と一緒に事務所に届くことになろうかと思います。そこから仕分けして職員が利用者に手渡すことになりますが、その手順の中で何らかの手違いが起き、紛失してしまったり他者の手に渡ってしまったりするということも無きにしも非ずです。

止むを得ない事情により老健に住所を移すということになったさいは、郵便物の送付先について確認を忘れないようにして下さい。

ちなみに、郵便局や役場に届け出を行えば住民票の住所と違うところに郵送先を設定することも可能です。

高額介護サービス費の恩恵を受けられなくなる場合も

高額介護サービス費制度とは、介護サービスを利用する場合に支払う一か月間の利用者負担額の世帯合計が上限を超えると、超えた分が払い戻されるという制度です。

例えば高齢者夫婦がいる世帯でどちらも要介護状態により介護サービスを受けていたとすると、それまでは夫婦の利用料の合計が上限を超えれば対象となり一部返金されていたものが、世帯分離を行うことによって合算できなくなってしまいます。

そうなると、どちらも高額介護サービス費の対象外となり実質的な減免を受けられないということにもなりかねません。

世帯分離をするとしないのとでどちらが総額的に安くなるのか試算するのは非常に困難です。

これ以外にも税金などには世帯分離を問わず夫婦合計となっているものや、世帯の合計となるものが混在しており、とても複雑だからです。

世帯分離を目的とした住所変更は、より慎重に検討する必要があります。

まとめ

介護保険|医療費控除計算方法を理解してしっかり控除してもらおう!

このように、老健に入所した際に住所を移すかどうかについては、殆どの場合必要ありません。

必要性が生じた際は、施設側や行政から連絡が必ず来ますので、ない場合はそのままで大丈夫です。

本人宛の郵便物の取り扱いをどうするかについて検討しておけば、問題ありません。

老健は入居期間が限られ、基本的には死亡以外での退所を前提としている施設です。

そのため住所を移す方はかなりのレアケースと言えるでしょう。

仮に何らかの事情により住所を老健に移した場合は、多少なりともメリットやデメリットが生じ、税金や介護関係費用総額で見た時に多少の増減が生じる場合があります。

心配な場合は市町村の介護保険担当課や施設の生活相談員などに相談してみて下さい。

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