この記事では介護老人保健施設に親が入所した場合には扶養控除を受けることができるのかということについて解説しています。
現在日本は「超」が付くほどの高齢化社会となっており、介護が必要な高齢者が年々増加しています。
このため、皆さんの中にも親の身体状態の悪化によって介護保険施設への入所を検討されている方もいるのではないのでしょうか。
入所する介護保険施設を検討する際には、入所する際にかかる費用・施設を利用する際にかかる月額料金・受けることができるサービスの内容などについてはしっかりと調べられると思いますが、入所した際の所得税に関することまで深く考えられる方は少ないのではないのでしょうか。
この記事では介護老人保健施設に親が入所した場合には扶養控除を受けることができるのかということについて解説していきますので、親が介護老人保健施設に入所するという方は是非この記事をご覧になって参考にしてみてください。
そもそも扶養控除とは何か
そもそも扶養控除とはどのようなものか皆さんはご存知でしょうか?
扶養控除とは、納税者(世帯主)に扶養親族がいる場合に、その納税者の所得から一定の金額を控除することができるという制度のことをいいます。
控除される金額は扶養している同居の有無や親族の年齢によって異なってきます。
その① 扶養控除の対象となる人
扶養控除の対象となる方は扶養親族と呼ばれ、その年の12月31日の時点で以下の要件全てを満たしている方となります。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族をいいます。)又は都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が38万円以下であること。
(給与のみの場合は給与収入が103万円以下) - 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
6親等内の血族及び3親等内の姻族とは何のことかと思われる方もいるかもしれませんが、6親等内の血族の範囲は以下の通りです。
1親等:父母や子供
2親等:祖父母、兄弟姉妹、孫
3親等:曾祖父母、曾孫、叔父叔母、甥姪
4親等:高祖父母、玄孫、祖父母の兄弟姉妹、いとこ、など
5親等:高祖父母の父母、来孫、いとこの子供、など
6親等:高祖父母の祖父母など
また、姻族とは配偶者の血族のことであり、夫から三田配偶者の血族は姻族となります。
その② 扶養控除の対象の年齢
この扶養控除の対象となる扶養家族ですが、扶養親族の中でその年の12月31日の時点で16歳以上の方となります。
昔は0歳から扶養控除の対象となっていたのですが、16歳未満の子供が子ども手当の対象となったため2011年をもって扶養控除の対象から外れることになりました。
このため、16歳未満の子供は扶養控除の対象の扶養親族ではないということです。
その③ 重複しての控除はできない
扶養控除を受ける上で押さえておかなければならないのが、重複しての控除は不可能であるということです。
誰かの扶養に入っている方というのは原則として他の人間の扶養に入ることはできないと定められています。
わかりやすい例を挙げるとするならば、父親の扶養に入っている子供は母親の扶養に入ることはできないという感じです。
ただ、いずれかが単身赴任などによって別居状態にある場合に、双方の勘違いなどによって共に子供を扶養に入れてしまうケースもありますので注意しなければなりません。
その④ 節税できる料金について
扶養控除において節税することができる金額については年齢によって変わることになっており、扶養控除の金額は以下の通りです。
- 一般の控除対象扶養親族:扶養親族の中で、その年の12月31日の時点で16歳以上である方のことをいいます。
- 特定扶養親族:扶養親族の中で、その年の12月31日の時点で19歳以上23歳未満である方のことをいいます。
- 老人扶養親族:扶養親族の中で、その年の12月31日の時点で70歳以上である方のことをいいます。
- 同居老人以外の者:老人ホーム等へ入所している場合には、入所している施設が住居となるため納税者と同居しているとはみなされません。
- 同居老人:老人扶養親族の中で、納税者若しくはその配偶者の父・母といった直系の尊属であり、普段納税者若しくはその配偶者と同居している方のことをいいます。
介護老人保健施設に親が入所しても扶養控除は受けられるか
ここまで扶養控除に関して対象となる条件や控除される金額などについて解説してきましたが、同居しており扶養に入れていた親が介護老人保健施設等に入所した場合には同居が解消されて別居となるわけですが扶養控除を受け続けることができ流のでしょうか?
その① 扶養控除が受けられる条件
扶養に入れていた親が介護老人保健施設に入所して別居状態となったとしても一定の条件を満たしているのであれば施設に入所している親でも扶養し続けることが可能となっています。
扶養親族の条件として「納税者と生計を一にしていること」というものがありますが、これを満たしているのであれば、これまでと同じように扶養控除を受け続けることができます。
どのような状態が生計を一にしている状態なのかといいますと、介護老人保健施設へ入所することによってかかってくる利用料や生活費を子供が負担しているのかということです。
つまり、利用料や生活費を親が受給している年金等によって全額まかなうことができる場合には生計を一にしているとは言えず、扶養親族であるとはみなされませんので扶養から外れることになります。
その② 受けられる控除の金額
先程の項目で解説したように扶養控除によって控除を受けることができる金額は扶養親族の年齢によって異なってきます。
介護老人保健施設に入所した被扶養者の親が70歳未満の場合であれば控除を受けることができる金額は38万円となります。
一方で介護老人保健施設に入所した被扶養者の親が70歳以上の場合であれば控除を受けることができる金額は48万円となります。
被扶養者の親の年齢が70歳以上で同居している場合であれば控除される金額は58万円となるのですが、介護老人保健施設に入所することによって同居老人ではなくなりますので控除を受けることができる金額が10万円低くなります。
10万円低くなることによって所得税などに影響が出てきますので注意が必要です。
まとめ
ここまで介護老人保健施設に親が入所した場合には扶養控除を受けることができるのかということについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか?
解説してきたように扶養に入れている親が介護保険施設に入所した場合であっても、生計を一にしているという条件を満たしている場合には引き続き扶養親族として扶養控除を受けることができます。
年末調査英において適用される控除の中で配偶者控除と扶養控除は混同されがちなものとなっており、配偶者控除や同居している親の扶養控除に関する意識はあるものの、同居していない親の扶養控除に関しては失念されている場合も多いとされているため、年末調整を行われる際には注意して確認するようにしてください。