介護老人保健施設は他の介護保険施設よりもリハビリに力を入れている施設です。
法律上の規定や基準、設備などはどのように違うのでしょうか?この記事では、介護老人保健施設の規定や基準、設備について詳しく解説します。
介護老人保健施設の特徴
介護老人保健施設とは、病気などで入院したあとに、自宅での生活が難しくなった要介護高齢者に対して、看護や介護、医療ケア、リハビリ、日常生活上のサポート等を提供する介護保険施設です。
以下に介護老人保健施設の利用目的、対象者、利用料金についてまとめました。
その① 介護老人保健施設の利用目的
介護老人保健施設は、要介護高齢者にリハビリ等を提供し、在宅支援・在宅復帰を目的とする介護保険施設です。
在宅復帰することが目的であるため、長期入所はできず、利用期間は原則的に3~6ヶ月程度です。
病院と自宅の中間的な意味合いを持っており、在宅復帰に向けてリハビリをしっかりと行いたい方向けの施設と言えます。
その② 介護老人保健施設の対象者
介護老人保健施設の対象者は、65歳以上で要介護1以上の高齢者と定められています。
ただし、40歳以上64歳以下の場合でも、特定疾病により介護認定がおりている方は対象となります。
その③ 介護老人保健施設の利用料金
介護老人保健施設は、入居一時金などの初期費用は不要です。入所後に月額費用として、「介護サービス費」と「生活費(居住費・食費・その他日常生活費)」などの利用料金が発声します。
介護サービス費は、要介護度が高くなるほど負担額が増えます。また、職員の配置や体制、対応する処置やサービスなどに応じて、加算が発生します。
自己負担額は、収入に応じて加算を含む介護サービス費の1割〜3割のいずれかになります。
生活費のうちの居住費は、施設や居室のタイプによって異なり、多床室、従来型固執、ユニット型個室の順に料金が高くなります。
食費は3食で日額1380円(月額41400円)という基準額があります。その他日常生活費は、施設ごとに、電話代や理美容代、日用品代などの料金が設定されており、入所者は利用した分だけ実費を負担します。
利用料金は要介護度や居室のタイプなどによって変わりますが、要介護度3、自己負担割合1割の方が、多床室に30日入居した場合、総額は10万円ほどになります。
世帯全員が住民税非課税で預貯金等が1000万円以下(夫婦であれば2000万円以下)の方を対象に、居住費と食費の負担額が減免される負担限度額認定という費用軽減制度があります。
負担限度額は所得段階、施設の種類、居室のタイプによって異なります。
介護老人保健施設の法律上の位置づけ
介護保険制度は介護保険法により、平成9年12月に制定、平成12年4月1日より施行されました。
介護保健制度は、要介護状態になった方が、できるだけ住み慣れた家庭・地域で生活を営むことが出来るよう、社会的に支援していく制度のことです。
介護老人保健施設は、この介護保険法という法律の介護保険制度による施設です。
その① 介護老人保健施設と介護保険制度
介護老人保健施設は、介護保険で被保険者である利用者にサービスを提供できる施設である介護保険施設の一つです。
介護保険施設には、介護老人保健施設のほかに、特別養護老人ホーム、介護医療院、介護療養型医療施設があります。
これらの介護保険施設を利用するには、介護保険の被保険者で、市町村が行う要介護認定を受け、要介護状態であると認定されることが必要です。
介護老人保健施設の規定や基準について
介護老人保健施設には様々な職種のスタッフが在籍しており、設備も様々なものがあります。
これらには、規定や基準によって義務付けられています。介護老人保健施設の人員配置、設備についてご説明します。
その① 介護老人保健施設の人員配置
介護老人保健施設では、在宅復帰を目指して、様々な職種のスタッフが連携し、入居者の生活支援、健康管理、機能訓練等に取り組んでいます。
常勤医師がおり看護師の配置が厚く、リハビリ専門職の配置が義務付けられているなど、医療従事者が多いのが特徴です。
介護老人保健施設の人員配置について以下の表にまとめました。
職種 | 人員配置 | 役割 |
---|---|---|
医師 | 常勤で入所者100人に対して1人以上 | 入所者の医学的管理を行う施設の管理者を兼ねていることもある |
看護師(准看護師、正看護師)、介護職員 | 看護・介護職員合わせて「入所者3人に対して1人以上」 看護職員人数は、看護・介護職員総数の7分の2程度を、介護職員人数は7分の5程度を標準とする。 | 看護職員は医療行為などを担当。身体介護、生活援助などは状況に応じて看護・介護職員が担当 |
理学療法士、作業療法士、または言語聴覚士 | 入所者100人に対して1人以上 | 入所者の状況に合わせたリハビリテーション計画を作成、実行 |
介護支援専門員 | 1人以上 | 入所者の介護、看護、機能訓練、栄養管理、投薬管理など総合的な施設サービス計画を作成 |
栄養士 | 入所者100人以上の場合は1人以上 | 献立の作成、入所者の栄養管理、食事量のチェックなど |
支援相談員 | 1人以上 | 入退所における相談、日頃の入所生活における相談援助 |
薬剤師 | 施設の実情に応じた適当数 | 入所者の投薬管理 |
その② 介護老人保健施設の設備
居室について、居室の広さは、定員4人以下の多床室では1人当たり8㎡以上、ユニット型個室など個室の場合は10.65㎡以上と定められています。
居室内にはベッド、タンスなどの入居者の身の回り品を保管することができるもの、ナースコールやエアコンを設けることが義務付けられています。
また、居室の他に、診察室、機能訓練室、リビング、食堂、浴室、レクリエーションルーム、洗面所、トイレ、サービス・ステーション、調理室、洗濯室又は洗濯場、汚物処理室を設けることが義務付けられています。
機能訓練室は入所定員数により最低面積が決められ、マッサージのためのベッド、歩行訓練のための平行棒や階段、筋力強化や関節可動域改善を目的とした運動療法機器などが設置されています。
まとめ
この記事では、介護老人保健施設の規定や基準について詳しく解説しました。以下にこの記事の内容についてまとめます。
- 介護老人保健施設は、在宅復帰を目的とした介護保険施設で、対象者は要介護1以上の方です。要介護度3、自己負担割合1割の方でが、利用料金は1ヶ月10万円ほどです。
- 介護保険法により介護保険制度が施行されました。介護老人保健施設は介護保険で被保険者である利用者にサービスを提供できる施設である介護保険施設の一つです。
- 介護老人保健施設では、医師や看護師、リハビリ専門職など、様々な職種のスタッフが連携し、入居者の生活支援、健康管理、機能訓練等に取り組んでいます。設備に関しては、居室の他に、診察室、機能訓練室、レクリエーションルームなど、様々な設備が充実しています。
介護老人保健施設は、人員配置も厚く、一人の入居者に対して多くの職種のスタッフが連携して在宅復帰に向けて支援してくれる施設です。
在宅復帰を目的とする施設のため、設備も整っており、特にリハビリの設備に関しては、充実しています。
在宅復帰を目指す際には、介護老人保健施設を選択肢として考えてみるのも良いでしょう。